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ウルキューレ降臨 六章

ウルキューレ降臨 六章

 舞い降りた蒼銀の騎士は、立ち上がり、剣に纏わり付いた黒い瘴気を振り払う。

 その動きと同時に背中に広がるエーテルの翼が粒子となって……パァンと霧散した。

 その清廉な動きに、目を奪われる……


「ボーッとしないで、まだ敵は残ってるのよ?」

「あ、はい」


 この声、リシェルさんだじゃあ、この機体が神装機、ウルキューレ……騎士の様な風格に清廉な所作……カッコいい


 『ユーディン君!聞こえますか!?未確認の機体が……え?僚機の反応?』

「聞こえています。リシェルさんウルキューレが来てくれたみたいです」

 『ウルキューレ……この状況での救援は助かりますがリシェルさん、聞こえますか?』


 オープンチャンネルでウルキューレに呼びかける。


「聞こえているわ」

 『現在、こちらの戦力はオーディーンとリシェルさん、今から合流する支援機の計三機での作戦となります』

「そう、この程度のヨトゥンなら問題ないわ」

 『頼りにさせていただきます……G.O.D-03、ジル機の出現準備、整いました!これより前線に合流します!』


 その言葉と同時に、ヴァルハラから機体が打ち出される。


「G.O.D-03、ジル機……遅くなりました」


 その機体は白と赤と基調としたカラーリング、背部から両肩に連なるパイプオルガンを模した連装砲台が荘厳な雰囲気を纏っていた。


 『ジルさん、ユーディン君は今回が初めての実戦です。神装機ウルキューレの戦闘データも未知数なので、連携は難しいですが、何とか乗り切ってください!』


「簡単に言ってくれる索敵、開始……」


 ジルは言葉少なに、機体の索敵モジュールを操作し敵影を探る。


「前方にゴーレムが二、ガルム、一、射程内に確認……エーテル・カノン、チャージ……」


 ジルの機体の両肩にある連装砲に、エーテルが凝縮されていく……機体の脚を地面に固定し、反動に備える。


 ……ィィイイン……フゥゥヴァァアアン


 まるで、音を奏でるように連装砲台からエネルギー弾が撃ち放たれた。

 エネルギー弾は前方のゴーレム型ヨトゥン目掛けて高速で飛んでいき、砂塵を巻き起こしながら爆発した。


「凄い」

「神装機の人たちゴーレムはこちらで牽制する。ガルムをお願い」

「私に指図しないで……ガルムは私が仕留める、あなたはゴーレムをやって」

「え、うん……わかった」


 とは言え、ここからゴーレムのところまで距離が結構ある……オーディーンのスラスターやバーニアを使えば、すぐに辿り着けるのか?

 そんなことを考えてる間に、ウルキューレはエーテルの翼を広げ、高速で空を駆けて行く。


「よし、僕だって……」


 行くぞ!そう意気込んで一歩を踏み出すと同時に、背中のスラスターが噴射し、初速からかなりの速度で地を駆ける。


「……っ!はやい!」


 機体のスピードに驚きながらも、視線は前方のゴーレムへ向ける。


「ユーディン、やつはスタインゴーレムその名の通り、岩壁を纏っているゴーレムじゃ」

「岩壁、ね」

「それに加えて、瘴気の膜を纏っておるゆえ、並大抵の火力では仕留められんぞ」

「そんな、この機体に高火力の武器なん?」


 ユーディンの意識の中に機体の武装情報が流れ込む。


「プリズミックカノン」

「うむ、オーディーンが目覚めた時に使った武装じゃが、拡散照射と集中照射の使い分けが出来るんじゃ。至近距離で集中照射すれば倒せるじゃろう」

「なるほど……やってみるよ!」


 ユーディンは再びゴーレムの動きを注視し、グングニルに力を込めながら走る。その間にも、ジルの砲撃がニ体のゴーレム目掛けて撃ち込まれる。

 砲撃を防ぐためにゴーレムの動きは止まり、隙が生まれる。

 ……よし、ここだ!


「うぉおお!」


 渾身の力でグングニルを振り抜く……ガィン!!

 と鈍い音が響き、ゴーレムが一歩後ろによろけた。

 エーテルを纏ったグングニルの一撃で、体の一部が裂け、黒い霧が噴き出す。


「そこだっ……プリズミックカノン、発射!」


 肩部から幾重にも光が収束し、エーテル粒子が唸りを上げる。


 キュィィン……バシュゥウン!


 虹彩色の光が、螺旋を描きながら風を裂き、空気を焼き焦がしながら一直線に飛ぶ。

 着弾と同時に、ゴーレムの胸部が弾け飛び、残された体も黒い霧となって霧散した。

 もう一体のゴーレムも、片腕と胴体の一部が吹き飛ばされていたが、そのままオーディーンに殴りかかろうと迫ってくる。

 ユーディンはその攻撃を難無く躱し、グングニルを横へ一閃した。


「とどめ!」


 ゴーレムの体は両断され、霧散して消えた。


「……ふぅ、やった。リシェルさんは?」


 レーダーの反応を確認しながらウルキューレを探す。ユーディンがウルキューレを視認した時には、ちょうどガルムの首と体を両断する瞬間だった……その動きは軽やかで、ガルムを翻弄する様に宙を舞い、死角から剣を構えて、一閃……援護に向かうまでもなく、ガルムは消失した。


「G.O.D-03より報告。敵影の殲滅を確認」

 『管制塔より各機へ、周辺のヨトゥンの殲滅が完了しました。ヴァルハラへ帰投してください』

「りょ、了解しました」

「ふむ、初陣にしては上出来ではないか?」

「そうかな……でも、まだまだ……ねぇ、ミーミル?このインターフェースシステムのこととか、オーディーンのこととか、もっと教えてくれる?」

「もちろんじゃ、じゃが、今は少しでも休むんじゃぞ」

「うん、ありがとう」


 ジル機とオーディーンがヴァルハラに戻って行く中、ウルキューレはその場でじっと、ヴァルハラの方を見つめていた。


「リシェル……答えは出たの?」

「いいえ、答えは出てない、けど……神族を滅ぼしたヨトゥンをこのままにはしておけないわ」

「それは、かつての使命のために戦う、ということかしら?」

「そう、いうことに、なるのかな」

(仕えるべき主のいないこの世界で、使命に生きる必要はないのよ、リシェル……)


 ブリュンヒルドは自分の思いを伝えず、妹の気持ちに寄り添うように口を詰むいだ。


 ――同刻、北の氷原、地下にある冥界の門

 

 神装機ヘイムダルは禍々しい瘴気に包まれていた。

 そして、その心臓部とも言えるユグドラシル・ドライブを前に、ヘルが両手をかざす。


「我が父の命を奪ったヘイムダル……そして、我が父によって肉体を失ったバルドルの神核……かように因果が巡ることがあろうとはな」


 ヘルの力により、冥界の瘴気に飲まれたヘイムダルの姿は、徐々に変質していく。

 その全身は漆黒に染まり、機体の表面には、まるで脈を打つかのように赤いラインが浮かび上がる。


「くくく……お前はこれより『冥王機ヘルヘイム』と名付けよう」


 その漆黒の機体、ヘルヘイムの胸部装甲がベリベリと音をたてながらゆっくりと開き、その奥から光り輝く魂が浮かび上がる……その光は、心臓の鼓動のように脈動し、宙を揺めきながら漂い、やがて機体の背後に開いた冥界の門へと導かれていく。

 魂は光の軌跡を残しながら、門へと吸い込まれていき……その光を失った。


 光が消えた瞬間、冥界の門の奥から黒炎を纏った別の魂が現れた。混沌とした気配を滲ませるその魂は、迷うことなくヘルヘイムの胸部へと飛び込んだ。


 ――ロキ

 

欺瞞と混沌のヨトゥン、その魂が機体のコアに触れた瞬間、機体は眩いまでの黒炎と稲光を放ち、ヘルヘイムの全身を激しく脈動させる。

 ヘルはその操縦席に乗り込み、まるで愛しい者を愛でるかのように撫で、口を開く……


「ああ父上、お会いしたかった……」


 その言葉に答える様にモニターは光り始め、画面にはノイズが走るような明滅を繰り返した後……『ロキ』と表示された。


「ヘル……我が愛しき娘よ、我も会いたかったぞ」

「父上、このような形での再開になってしまい、申し訳ありません」

「何を謝ることがある?お前の力がなければ、こうしてこの世界に戻ることは出来なかったのだぞ?」

「あぁ……なんと慈悲深きお言葉……」


 ロキは新たな自分の身体となった『冥王機ヘルヘイム』の手を動かし、その拳を握り締める。


「これが我の新しい身体……よもや仇敵の機体に宿ることになるとは、実に面白い」

「父上、その身体に魂が馴染むまで、今しばらく時が必要です」

「うむ、分かっている……とは言え、慣らすためにも動かねばな?」


 ヘルヘイムは両腕を前にかざし、漆黒の霧を辺りに放つ……


「我が眷属よ、今一度、我の呼びかけに応えよ」


 その言葉に反応するように霧は集まり、2体の狼が姿を現す。


「「我らが主よここに」」

「お前達、よく来てくれた……しぶとく蔓延る偽神どもに挨拶に行くとしよう」

「「御意」」

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