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オーディーン出撃 五章

オーディーン出撃 五章

 ギャラルホルンの警報が鳴り響き、慌ただしくなる管制塔。


「先ほどの戦闘からほとんど時間が経ってないって言うのに」

「接近中のヨトゥンの識別、確認できました!ゴーレム型が2体、ガルム型が2体の編成です!後続の反応はありません」


 管制官からの情報が飛び交う中、ヴィーダル司令がインカムを装着しながら管制塔に入ってきた。


「敵の数は多くない……動ける機体の確認を急げ、第2区画の様子はどうなっている?」


「はい、整備班からの報告では先ほどの侵入者の襲撃により、一部の機体搬入口が機能しなくなっているとのこと!また、先の戦闘での補給と整備も終わっていないため、出撃できる機体はほとんど無いようです!」


 一部の機体搬入口が機能してないって、オーディーンの攻撃のせいかな結構な爆発だったし……


「まずは補給を急がせろ!その間を凌げればいい!誰が出られる?」

「先ほどの戦闘で点検中だったG.O.D-03、ジル機がすぐに出られます!」

「よし、ジルに連絡を急げ」

「了解しました!……『ジル=フィルメイア隊員、出撃を要請します。繰り返します……』」

「ミーミル殿、この障壁の効果はどれぐらい期待できる?」


 ヴィーダルがユーディンの方へ顔を向けて尋ねる。


「ふむ、ギャラルホルンの障壁は空気中のエーテル波と音波の相互干渉により生じる、反物質的なバリアじゃ。理論的にはどんな攻撃も防ぐことは可能じゃが、局所的に火力の高い攻撃を続けられた場合、障壁の維持が出来なくなる」

「つまり、余程のことが無い限りは安全ということか」

「簡単に言うとそうじゃが、過信は禁物じゃぞ」

「降りかかる火の粉は払うさ……ユーディン、お前は出られるか?」

「おい!兄さん!」

「父さん心配しないで、大丈夫、僕も出ます!」

「そうか、実戦は初めてとなるが無理はするな……時間を稼ぐだけでいい」

「ユーディン」

「正直、怖いけどオーディーンを乗りこなさなきゃ……ミーミル、転送をお願い」

「わかった……では、いくぞい」


 ミーミルの言葉と同時に、ユーディンの全身が光に包まれ、一瞬にしてその場から消えた。


「どうか、無事で……」

 ユーミルは祈るように手を組み、ユーディンを包んでいた光が霧散していくのを見つめていた。


 ――ヴァルハラ、第2区画、格納庫


 目を開けると、オーディーンの操縦席に座っていた。


「よし、やるぞ」


 モニターが光だし、機内にミーミルの声が響く。


「神装機オーディーン、機動……ユグドラシル・ドライブ、正常に稼働」


 目の前の画面に『ミーミル』と表示される。

 

「オーディンの神格を確認……搭乗者、神峰=ユーディン、認証。インターフェースシステム……接続完了じゃ」


 ユーディンの目の前に格納庫の様子が映し出される。


「やっぱり、凄いな……」

「感心しとる場合ではないぞ?管制塔から通信じゃ、繋ぐぞ」

 『……あ、こちら管制塔、応答願います』

「は、はい、こちら神峰=ユーディンです」

 『よかった、問題なく繋がったようですね。私が今回、オーディーンの管制官を務めます。鳴視=フルーレと言います』

「えっと、どうも、よろしくお願いします」

 『現在、格納庫からカタパルトへ移動するためのリフトゲートが使えなくなっているため、他機の出撃が困難な状況です』

「そう、らしいですね……ごめんなさい」


 オーディーンの攻撃の影響だと思うと、思わず謝ってしまった。


 『どうして、ユーディン君が謝るんです?とにかく、出撃出来る機体が少ないので、無理はなさらないでください。時間稼ぎだけで良いので』

「はい、わかりました。でも、ここからどうやって出撃したらいいんでしょうか?」

 『それは心配ありません。神装機オーディーンの格納スペースからリフトゲートに繋がっていますので……まずは、オーディーンの整備ハンガーの前に行ってください』

「リフトゲートに繋がってたんだ」


 知らなかった事実に感心しながら、整備ハンガーの前に立つ……


「整備ハンガーの前に来ました」

 『では、ハンガーの床を持ち上げてください。本来はスイッチ操作で持ち上げられるんですが、配線がやられてしまってるので手動でお願いします』

「持ち上げる……これか!よいっしょ、と」


 言われるがままに、床を持ち上げると……下に通路のようなものが出てきた。


 『あとは、その通路を真っ直ぐ進んでいけばカタパルトの方に出られます』

「なるほど、行きます!ちょっと暗いな……」

「心配いらん、ライトを点けるぞ」


 機体の両肩からライトが照射され、周りを照らしてくれる。


「おお、便利だね」


 ――通路を進んでいき、カタパルトに到着すると整備班の人達が走り回っていた。


「オーディーンが来たぞ!おい!ユーディン!そこのカタパルトに背中を付けて、足を固定装置に乗せて待機してくれ!」

「は、はい!」


 指示通りにカタパルトに移動し、待機する。


「よし、スタンバイオーケー!いつでも出せるぞ!」

 『では、ユーディン君、出撃お願いします!』


 いよいよ、か……よし!


「はい!ユーディン、行きます!」


 手が震える……やっぱり怖い、けど……やるんだ!


 バキン!……ゴォオオオオン!

 射出機の安全装置が外れ、加速レールの上を凄い勢いで進んでいく。


「ぅ、わ!」


 全身が締め付けられるような圧迫感に、思わず声が漏れてしまう。そして、一呼吸する間もなく身体は空中に投げ出され、無重力感に包まれた。

 視界一面に荒野が見渡され、澄み渡る青い空が広がっていた……


「って、これ!落ちる!」

「慌てるでない、ゆっくりと降りていくイメージを持つんじゃ!」

「降りるって!?」


 急にそんなことを言われても、どうしたらいいか分からないんだけど!落ちてるし!ゆっくりってなに!?どんどん地面が近づいて……


「っ!うわ!!」


 もうダメだと、思って衝撃に備えようと力んだら……

 背中から強い力で押し上げられるような感覚と、地面を滑るような感覚を感じた。

 どうやら、背中のスラスターと脚部のバーニアが噴射して着地することが出来たようだ。


「ほう、初めてにしてはうまく着地できたのではないか?」

「何で着地できたのかわからないけど、良かったぁ」

「インターフェースシステムが接続しとる時は、オーディーンの躯体全てがおぬしの身体と一体化したと考えるのじゃ」

「一体化って」

「まぁ、人間の身体に無い機構を使うのにはコツがいるじゃろうが……それは身体で覚えるのじゃ」

「ええ……」

「わしもフォローするから心配するでない」

 『ユーディン君!接近中のヨトゥンの位置情報を送ります!ガルム型は足が早いから気をつけてください、そろそろジルさんも到着するので、頑張って!』

「頑張って……って、言われても!」


 ピコン……と音が頭に響く同時に、視界の左上に周辺のマップが浮かび上がり、赤い点が4つと、緑の点が1つ映し出される。


「これは?ヨトゥンの位置情報?……こうやって表示されるのか」

「気をつけるのじゃ、ガルム型が先行して迫って来ておるぞ!10秒後には接敵する距離じゃ、武器を構えい!」

「ぶ、武器?……って、あれ……槍?」


 武器のことを考えると、身体のどこに武器があるのかが手に取るようにわかる……左肩の装甲の裏にある、棒状の……これか!

 棒を一気に引き抜くと、ハルバートのような形状に刃が展開する。


「オーディーンの近距離での主兵装は、そのグングニルじゃ。エーテル粒子を刃に纏わせることで威力が増す仕組みになっておる」

「これが、グングニル……」


 そうこうしてる間に、目視できる程の距離までヨトゥンが迫っていた。

 姿は巨大な狼を彷彿とさせるが、体毛はなく、黒い靄が渦巻くように纏わりついている。


「……来た!」


 一体のガルムが横から後方へと回り込もうと駆け抜けていき、正面からもう一体のガルムが飛びかかってくる。


「そんな見え透いた攻撃はっ!」


 飛びかかってきたガルムの攻撃を躯体を斜めに逸らせて躱し、グングニルで切り払う……ガン!


 金属を硬いものに打ち付けるような鈍い音と、衝撃を感じた。


「そんな、効いてない!?」


 ガルムはその衝撃を利用して後方に飛び退く。

 

「刃にエーテルを纏わねば瘴壁を破れんぞ!やつの体を覆う黒いものが瘴壁じゃ!」

「そんなこと言われても!エーテルなんてどうやって纏わせるの!?」

「力を纏わせるイメージじゃ!」

「力を……」

「周りの警戒も忘れるでない!背後から来よるぞ!」


 ミーミルの声で振り返ると、目の前にもう一体のガルムが迫っていた……


「な、やば……っ!」


 避けられない、そう思った瞬間……ガルムの体は両断され、黒い霧となって霧散した。

 その霧の向こうには、遙か上空からエーテルの翼を纏い舞い降りた、蒼銀の騎士の姿があった。

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