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イーステッド村へ 二十五章

イーステッド村へ 二十五章

 ――大陸の東、集落周辺


「この辺りのはずなんだけど……集落なんて、どこに?」


 救援要請を受け、集落まで駆けつけたユーディンとリシェル、上空から辺りを見渡しても人の気配など何もなかった。


「おそらくじゃが、この地下に集落を築いておるのじゃろう。地表の下から生体反応を感じるでな」

「地下に……確かに、こんな大地の上に集落があればヨトゥンたちにすぐ見つかってしまうか」

「周辺にヨトゥンの反応よ、数は…… 八体」


 僕ら二機だけで対処するには多いか、いや……やれるだけのことをやるんだ。


「よし、ここに来る前に殲滅しよう」

「神装機が二機もいれば、問題ない……行くわよ」


 ウルキューレが上空へと舞い、弓を構えた。


「先に仕掛ける……ユーディンはさっきのエーテルフィールドを使って突撃」


 あの矢の嵐と一緒に突っ込めと?


「はは、了解です」


 バリアがあれば流れ弾の心配はないし、効率的でいい作戦だ。


 数秒後、上空から無数の輝く矢が撃ち放たれた。それを合図にオーディーンの周囲にエーテルフィールドを展開させ、背部のブースターを全開にして突っ込んだ。


 キィイン……空気を切り裂くような音とともに、オーディーンは猛スピードで空を駆ける。

 その速度は、ウルキューレの放った矢よりも早く、肉眼でヨトゥンが見える位置まで一瞬で詰めた。


「あれは、ワイバーン型が七体……奥に大きい、蛇?ティアマット型か!?」


 と言うか、突っ込んだは良いけど、武器を……と意識すると、スレイプニルの新武装の情報が頭に流れ込む。


「……“ディバイン・トレイル”」

 

 ユーディンがスレイプニルの新武装を展開させると、背部ユニットから白く輝く光の粒が散布され、オーディーンの飛んだ軌跡を描くように広がっていく。

 

 ユーディンは目の前に迫るワイバーン七体の周囲を、その光で囲むように空を旋回する。

 ワイバーンがオーディーンに襲いかかろうと迫った瞬間、空中に散布された光の粒に触れ……爆破した。


「逃げられないよ、この光の檻からはね」


 そして、ウルキューレの放った光の雨も一斉に降り注ぐ。

 エーテルの矢が光の粒に触れることで誘爆し、檻の中のワイバーンたちは爆炎の中に吸い込まれた。


「仕留めてみせる!」


 オーディーンはバリアを展開させたまま、グングニルを手に爆炎の中に飛び込む……刃にエーテルを纏わせ、竜巻のように回転した。


「これだけの攻撃、流石に耐えられないだろ!」


 回転に合わせて光の斬撃がワイバーンたちを襲う。

 視界が開けた時には、全てのワイバーンが消滅していた。


「ふぅ、やりましたね……リシェルさん」


 ユーディンは息をつき、後方から合流したリシェルに声をかける。

 だが、リシェルは油断することなく、目下に迫る巨影を見つめる。

 その影は、大地を抉りながら進み……ワイバーンを屠った二機の姿を睨んでいた。

 

「喜ぶのは早い、大物が残ってるわよ」


 ティアマット型のヨトゥンが、三つの首をもたげて口を開く……


「ブレスよ!気をつけて」


 リシェルが危険を察知して、声をかける。


「それなら、僕が!」


 ユーディンはエーテルフィールドを展開させたまま、リシェルの前へと出る。


「待つんじゃ、ユーディン!」


 次の瞬間、ティアマットの口からブレスが放たれる。

 炎と氷と雷……三つのブレスは螺旋を描きながらもつれ合い、一つの奔流となりオーディーンへと迫る。


「ぐ!すごい威力っ!」

「ユーディン!」


 凄まじい熱量の渦は瞬く間にエーテルフィールドを消し去り、オーディーンを飲み込む。


「まずい、ウルキューレ!神装展開!」


 リシェルがウルキューレの神装を展開させ、エインフェリアを召喚する。


「姉さん、(ラングリーズ)でユーディンをお願い!」

「世話の焼ける……任せなさい」


 ウルキューレの肩から分離した装甲が盾となり、オーディーンの前に飛翔していく。


「力を貸して……"ブレイズ・エクリプス"」


 三体のウルキューレが溶け合い、翠光を放つ大きな槍となる。

 その光槍が襲い来るブレスの中へと突き放たれた。

 猛烈な光とともにエーテル粒子が爆ぜながらブレスを突き破る。

 光の槍は、そのまま勢いを落とすことなく、ティアマットの頭と胴体を穿ち……消滅させた。


「ふぅ……ユーディンは!?」


 リシェルはウルキューレの神装を解除し、オーディーンを探す。


 オーディーンは、高火力のブレスをまともに喰らい、黒煙を纏いながら地面へと落ちていく。

 リシェルはオーディーンのもとへ飛び、機体を支えながらゆっくりと大地へと降り立った。


「ユーディン、無事?」

「ぅ……うん、なんとか、ありがとう、リシェルさん」

「まったく、無茶をしよる。覚えたての技であの火力を防げると思ったのか?」

「ミーミルの言う通りよ、世話を焼かせないでちょうだい」


 ミーミルとブリュンヒルドから厳しい声を浴びる。


「ぐ、ごめんなさい……」


 『……聞こえるか?ヨトゥンは掃討出来たみたいだな』


 ダナンから通信が入る。


「はい、なんとか殲滅することは出来ました」

 『助かった、俺たちももう少しで合流出来る。先に集落の連中に顔をみせてやっててくれ』


 その言葉の後に、集落の入り口の座標が送られてくる。


「先にって……」

「まぁ、ここで待っておってもなんじゃしの」

「そうね、この環境で生活している人類についても気になるし、行ってみましょう」


 ミーミルとブリュンヒルドは乗り気のようだが、ユーディンはどうしたものかとリシェルの方を伺う。


「オーディーンも損傷しているようだし、落ち着ける場所に行くのは賛成よ」


 オーディーンの溶けかけて黒ずんだ装甲を見つめながら、リシェルは集落へ向かう意を示した。


「それじゃ、行ってみましょう」


 送られてきた座標へと向かうと、ヒビ割れた峡谷の先に螺旋を描くように下へと続く道があった。

 神装機や搬送用の車両も通れる広さがあり、機体に乗ったままでも問題なく通ることが出来る。


「すごい、この先に小さな熱源や生体反応がいくつもある……」

「ここに人が住んでいるのは本当のようね」


 そのまま地表の地下へと進んでいくと、集落らしき入り口が見えてくる……

 そこには二人の村人が、こちらを警戒するように見つめていた。


 ユーディンとリシェルは入り口の前で膝をつき、機体から降りる。

 村人たちは光に包まれて目の前に現れた二人に驚きながらも、こちらへと近づく……


「あ、あんたらは……商船隊の仲間か?」

「その機体も見たことがないが」


 恐る恐るといった様子で声をかける二人に、ユーディンが穏やかな笑顔で応える。


「はい、ダナンさんの頼みで救援に駆けつけました。商船隊の皆さんも遅れて合流する予定です」


 ユーディンの言葉に安堵の表情を浮かべ、警戒態勢を解くと……村の奥から子供たちが駆け寄ってきた。


「すっげー、にいちゃんたちがあれに乗ってたの!?」

「カッコいい!」

「お姉ちゃんの服もキレイ!ねぇねぇ、なまえは?」


 七歳〜十歳ぐらいの子供だろうか、目をキラキラと輝かせて言い寄ってくる姿に思わず笑みが溢れる。


「はは、そうだよ。これに乗って悪いやつらと戦ったんだ」


「うん!見てたよ!キラキラーって、バァーンって凄かった!」

「火の中に飛び込んで、シュバババーンってカッコよかったー!」


 ユーディンの周りを二人の男の子が駆け回り、全身を使って戦いの様子を表現する。

 ふと、リシェルの方を見てみると……


「お姉ちゃんのその髪、すごくキレイ!」


 小さい女の子にスカートの裾を引かれながら、可愛い、綺麗と矢継ぎ早に言葉を浴びせられて困った顔をしていた。


「えっ……と、キレイって……その」


 いつもクールなイメージのリシェルさんが、どうしたらいいかわからず戸惑っている。


「お二人とも申し訳ない。こら、お前たち!村の中に戻りなさい!」

「そうだぞ、村を救ってくれた方を案内するから邪魔するんじゃない」

「え〜、それじゃぼくたちも案内する〜」

「うんうん!お姉ちゃんもいこー、こっちよ!」


 子供たちに手を引かれるユーディンとリシェル。


「ま、待ちなさい、そんなに引っ張らなくても大丈夫だから」

 

「……リシェルさん」

 

 女の子に手を引かれ、少し戸惑いながらも優しく微笑むリシェルの姿に、ユーディンは目を奪われる……今まで見たことがないその表情に、思わず胸が高鳴った。


「どうしたの、おにいちゃん?」

「え?あ、いや……なんでもないよ」


 慌ててリシェルから視線を逸らすユーディン。


 二人とも、初めての気持ちに戸惑いながらも、集落の中へと足を踏み入れる。

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