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ユーディンの神格 二十四章

ユーディンの神格 二十四章

 ――オーディーンの操縦席

 

「……オーディーン」


 ユーディンは、胸が締め付けられる感覚に思わず、胸元の服をギュッと握りしめる。


「大丈夫、怖がるな……」


 暴走への恐怖が頭をよぎる。

 それを振り払うように、何度も自分に言い聞かせながら機体を起動させた。

 

 視界が広がる――その瞬間、違和感に気づく。


「あれ?パーツが増えてる?」


 機体と同期したことで、新たに取り付けられた追加装甲と、背部ユニットの感覚が鮮明に伝わってきた。


「左様、黄昏の時分に使っていた装備でな。前に少し話したじゃろ?この船で拾われておったんじゃ」

「これ……なんだか翼みたいだ」


 背部に並ぶ、八本のブースター。

 それを動かそうと意識してみたが、これがなかなかに難しい。


「ぐ、身体のどこに力を入れたらいいのか……」

「動かそうとするから難しいのよ」


 リシェルの声に視線を動かすと、ウルキューレが近づいてきていた。


「大事なのは"どう動きたいか"よ。機体の方が応えてくれるわ」

「どう動きたいか……」

「ほほ、この追加装甲スレイプニルはその見た目通り、飛行機能が備わっておるんじゃ」

「それじゃ、空を飛ぶイメージをすれば?」


 ユーディンは深呼吸し、頭の中で空を飛ぶイメージを浮かべる。

 その瞬間、背部ユニットのブースターにエーテル粒子が集まり、機体が浮き始める。


「うわっ!」


 その初めての感覚に股間がキュッとなり、ドックの床に膝を突いて倒れそうになった。


「おい!何やってんだ!危ねぇだろ!」


 怒鳴り声が響き、目を向けると、厳ついおじさんが大きなレンチで肩を叩きながら近づいて来ていた。


「おぉ、ダナン殿……すまぬの、新しい装備の感覚に慣れておらんでな」

「御老人、その躯体でドッグを壊さないように頼むよ」

「わかっておる、少し外に出て感覚に慣れたいんじゃが、構わぬか?」

「慣らし運転か?構わんよ、ただ……この船も次の目的地まで移動してるんでな、逸れないように頼む」


 ミーミルがダナンと呼んだ男と話している様子を、オーディーン越しに見つめるユーディン。


「ミーミル、この人は?」

「このグレイブウォーカーの船員じゃよ、スレイプニルの修理や装着を手伝ってもらったんじゃ」

「お?もしかして、操縦士のにいちゃんも乗ってるのか?」


 急に話かけられ、少しビクっとなってしまったが、冷静に返事を返す。


「はい、ユーディンと言います……その、助けていただいてありがとうございました」


 ユーディンの言葉に、ニカッと笑いながらダナンは答える。


「血だらけでそっから出て来た時は、もうダメかと思ったが、元気そうで安心したよ」


 血だらけ……そういえば、壊れた装甲の破片が刺さって、輸血が必要って……

 そう思い、自分の身体の傷を確認すると、傷口はほとんど塞がっていることに今更気づいた。


「え?傷が……それに、オーディーンの装甲も元に……?」

「おぬしの傷は、リシェルの血を分けたことで治りが早くなっておる。そして、神装機の装甲は自然に治るんじゃ」


 リシェルさんの血で?早く治る?機体の装甲まで?


「ええ……」


 自分の理解を超えた事象に、ユーディンは言葉が出なかった。


「ほら、さっさと行くわよ」


 そんな彼を気に留めることなく、リシェルが発進口に向かっていく。


「……はい、行きましょう」


 その後を、オーディーンはゆっくりと歩いている。

 ダナンがその後ろ姿に声をかける。


「病み上がりなんだ、無理するなよ!」


 顔は怖いけど、いい人のようだ。

 そんなことを考えていると、前の方から強い風が吹き込んできた。

 発射口が開かれ、ウルキューレが空へと身を投げる。ユーディンもそれに続くように発射口の前に立つ。


「ふぅ……空を飛ぶイメージだ、大丈夫、行ける!」


 意を決して、空へと飛び降りる。


 ぶわっ……と全身に強い風圧が襲いかかってきたが、その風の流れに乗るように身体の力抜く。そして、ウルキューレが空を舞っている時のイメージを思い浮かべる。


「あ、浮いてる……風が気持ちいい」


 背部のユニットからエーテル粒子が吹き出し、全身に吹き付ける風が止んだ。

 躯体を撫ぜる風が心地良かった。


「ほぉ、もう感覚を掴んだか」


 ミーミルが関心したように呟いた。


「うん……リシェルさんはどこだろう?」


 視界の端に映るレーダーと肉眼を頼りにウルキューレを探す。

 下の方へと視線を落とすと、一面に広がる荒野の上空に滞空し、エーテルの翼を広げていた。


「こっちよ、そのまま空を飛ぶイメージで降りてきなさい」


 空を飛ぶイメージ、自分がどう動きたいかを考えれば機体が動いてくれるって言ってた。


「よし、こういう感じか?」


 オーディーンは翼を広げ、ウルキューレのところまで猛スピードで下降していく。


「っうわ、はや!」


 そしてウルキューレの前方100mほどの位置で静止した。

 

 凄い速さだ……だけど、動き方は掴めた。


「良い感じよ、それじゃ実戦でどこまで動けるか試しましょうか」

「え?試すって……」


 ユーディンが喋る間もなく、ウルキューレは剣を構えて迫ってくる。

 初めて会った時は、リシェルの攻撃を捉えることも出来なかったユーディンだったが……


「っ!そこだ!」


 ブンッ……ウルキューレの上段からの一閃を、躯体を逸らして躱す。

 間髪入れずに、オーディーンの左腕で裏拳を放つもウルキューレは急降下してその攻撃を避けた。


「なかなか良い動きね」

「……リシェルの初手を躱すなんて」


 躱せた、と言うよりも……動きの軌道が先に見えたような感覚だったけど。


「予知の力……」

「ふむ、どうやら無意識に神格の力を扱えるようになっているようじゃな」

「だったら、私も少し本気を出そうかしら?」


 ウルキューレは上空へと舞い上がり、弓を構えた。


「ロタ・アルケイン……このエーテルの雨を躱してみなさい」


 ウルキューレが弦を引くと、エーテルの矢が形成される。

 その鏃に翠色の眩い光を集めると、それを一気に撃ち放った。


 遥か上空から無数に煌めく翠の雨が降り注ぐ。


「いやいや、流石に避けきれないって!」


 ユーディンが、その光の雨を見つめると……周囲の時間がスローモーションのようにゆっくり動き始める。

 そして、一本一本の矢の軌道が脳裏に映ったが、どうやっても避けきれない。

 時間にして3秒ほどだろうか、スローモーションが解けて時間が動き出す……


「くっ……そ!」


 オーディーンに迫る、最初の数十本の矢は何とか躱す事が出来たが、避けた先に追尾してくる無数の矢をこれ以上躱すことは出来なかった。


「ぐぅ!避けきれないっ!」


 そう思い、ユーディンは防御姿勢をとる。

 全方位からの攻撃を防ぐなんて……バリアでもないと無理だって。


 次の瞬間、全ての矢がオーディーン目掛けて襲いかかる。

 ズドドドドドド……雨のような光が降り注ぎ、轟音と閃光が空を覆う。


「ちょっと、リシェル……」

「大丈夫よ。出力はおさえ……て、え?」


 リシェルは目の前の光景に驚愕した。


 エーテル粒子と爆煙が晴れた先、姿を見せたオーディーンは……無傷。

 その機体の周囲には強固な光の障壁が展開されていた。


「あれ?なんともない」

「ユーディン、おぬし……」


 ミーミルまで驚きを隠せずにいた。


「まさか、創造の力?」

「うむ、オーディーンにこのような防御機構は存在しておらん」


 煌々と光障壁に包まれ、ユーディンは2人の言葉に聞き返す。


「創造の力って、オーディンの?」


 前にミーミルから聞いた話を思い出す。

 かつて、オーディンは創造の力で神装機やヴァルキリーを創り出したと。


「そうじゃ、おぬしは自分の意思をエーテルで具現化させたのじゃ……これは紛れもなく神格の力」

「どうして、今までこんな力……使えなかったのに」



 ――


 『ああ、聞こえるか?派手な爆発があったが、大丈夫なのか?』


 ダナンの声だ、あの爆発じゃ心配されるのも当然だろう……


「はい、聞こえてます。僕たちは大丈夫です、驚かせてすみません」


 『そうか、無事ならいいんだ。それから、無理を承知で頼みがあるんだが……いいか?』


 ダナンは申し訳なさそうに尋ねる。

 

「頼み、ですか?なんでしょう?」

 『いま、俺たちが向かってる東の集落から救援要請があってな……俺たちの足じゃ、すぐに駆けつけられんのだ』


 なるほど、神装機の機動性なら船隊よりも早く動けると……


「わかりました。周辺の地図を送ってください、すぐに向かいます」

『すまん、助かる!集落の名は"イーステッド"だ』


 すぐに周辺の地理状況が送られ、目的地がマークされる。

 全速で飛ばせば、数分で着く距離だ。


「よし、リシェルさんも来てくれますか?」

「断る理由はないわ……行きましょう」


 ――ユーディンとリシェルは、東の集落を目指して空を駆ける。

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