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氷川さんはツンデレすぎる。  作者: 恋する豚共の紙
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第48話:ひまり、もっと話したいのに……

ひまりが足早に去っていった後、俺はしばらくその場に立ち尽くしていた。


 (なんだったんだ、今の……)


 「……」


 ふと視線を感じて横を見ると、氷川さんがじっとこちらを見つめていた。


 「……行っちゃったね」


 「え? あ、うん……」


 何気ない一言だけど、なんとなく微妙な空気を感じる。

 ひまりが俺を引っ張っていったとき、氷川さんは何を思っていたんだろう……?


 「……別に、何も聞かないけど」


 氷川さんは、俺の疑問を見透かしたように言った。


 「え?」


 「……ただ」


 氷川さんは、ウサギのクッションを抱え直して、少しだけ目を伏せる。


 「相沢が、誰とどういう関係でも、私には関係ないから」


 (……え?)


 「……」


 そう言ったあと、氷川さんは静かに踵を返した。


 (えっ、えっ!? なんか、めっちゃそっけなくないか!?)


 「ちょ、氷川さん?」


 俺が慌てて声をかけると、彼女は一瞬立ち止まったが――


 「じゃあね」


 それだけ言って、スタスタと歩いて行ってしまった。


 (え、なにこれ!?)


 さっきまで普通に話してたのに、急にクールになったというか……なんか、少し機嫌悪そうじゃないか!?


 「……えーっと」


 取り残された俺は、ただただ困惑するしかなかった。



 翌日――


 学校に行くと、ひまりがすぐに話しかけてきた。


 「おはよう、相沢くん!」


 「お、おう」


 なんだかやたらと元気そうだ。

 昨日のモヤモヤした雰囲気はどこへやら、ひまりはいつもの調子に戻っていた。


 (……いや、ちょっと違うな)


 いつもより、俺に対する距離感が近い。


 「昨日はごめんね、急に引っ張ったりして!」


 「いや、別にいいけど……」


 「でも、久しぶりに相沢くんと二人で話せて、なんか嬉しかった!」


 (えっ……)


 そんなことをストレートに言われると、こっちが意識してしまう。


 (なんだろう、昨日の件があってから、ひまりが俺に対して積極的になってる気がする……)


 俺が戸惑っていると、ひまりは少しだけ言いづらそうにしながら、ボソッと呟いた。


 「……ね、また、二人で話せる?」


 (!!)


 「ほら、最近、氷川さんとばっかりいるし……私、相沢くんと全然話せてないし……」


 ひまりの表情は、少しだけ不安げだった。


 (これ、絶対俺と氷川さんのことを意識してるよな……)


 正直、俺もひまりと普通に話せなくなったのはちょっと寂しいと思ってた。

 でも――


 「……」


 ちらっと教室の奥を見ると、氷川さんが本を読んでいた。


 俺とひまりのやり取りを気にしている様子は……多分ない。


 (……いや、でも昨日の感じ、やっぱ気にしてるよな……)


 ひまりとの距離が近くなればなるほど、氷川さんとの関係が微妙になる気がする。


 (どうすりゃいいんだよ……)


 頭を抱えそうになったそのとき――


 「相沢、田中、佐藤、席つけー!」


 担任の先生の声が響き、俺たちは急いで席についた。


 ひまりの方を見ると、彼女は小さく微笑んで、「またあとでね!」と手を振ってきた。


 (……ひまり、なんか本気っぽいな……)


 俺は胸の奥がザワつくのを感じながら、授業が始まるのを待った。



 放課後。


 教室で帰る準備をしていると、氷川さんが静かに立ち上がった。


 「あ、氷川さん」


 俺が声をかけると、彼女は一瞬だけ立ち止まり――


 「……じゃあね」


 それだけ言って、サッと教室を出て行ってしまった。


 (……えっ!? なんか冷たくない!?)


 ひまりとのやり取りを気にしてる……?

 それとも、本当にどうでもいいと思ってるのか?


 (……わかんねぇ……)


 俺はモヤモヤした気持ちのまま、鞄を肩にかけた。


 そして――


 「ねえ、相沢くん!」


 教室の入り口で、ひまりが待っていた。


 「今日さ、ちょっと寄り道しない?」


 (うおお、また誘われた……!)


 「ちょ、ちょっと待て、急すぎないか?」


 「えへへ、昨日の続き、したいんだもん!」


 (この「昨日の続き」って……絶対昨日の『相沢くんって氷川さんのこと好き?』の話だよな!?)


 俺の動揺をよそに、ひまりは無邪気に笑っている。


 (……いや、これは無邪気っていうか、むしろ確信犯じゃね……?)


 俺が何か答えようとした、そのとき――


 「……あ」


 後ろの廊下を歩いていた氷川さんが、チラッとこっちを見た。


 (や、やばい……!)


 氷川さんは、特に何も言わず、そのまま静かに歩き去っていった。


 でも、ほんの一瞬――


 彼女の表情が、少しだけ曇った気がした。

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