第46話:氷川さん、まさかのアレに興味アリ!?
佐藤と田中に見つかり、散々からかわれた俺たちだったが――
「まあまあ、せっかく会ったんだし、一緒に回ろうぜ?」
という田中の勝手な提案により、結局四人で買い物する流れになった。
(……なんでこうなるんだよ)
氷川さんと二人きりで買い物、という貴重なイベントが、急に野郎共に邪魔される展開に!!
「……別に、いいけど」
しかし、氷川さん本人は特に気にしていない様子。
むしろ、俺が「どうしよう」と焦っていることに気づいているのか、ほんの少しだけ口元が緩んでいた。
(くっ……まさか、俺がからかわれる姿を楽しんでる……!?)
そんなことを考えていると――
「で、次どこ行くんだ?」
「……雑貨屋」
氷川さんが、少し考えてから答えた。
「へぇ、雑貨屋か。女子ってそういうの好きだよな~」
佐藤が適当に相槌を打つ。
「氷川さんって、どんなの買うの?」
俺が何気なく聞くと、氷川さんは少しだけ迷ったあと、ぽつりと答えた。
「……インテリアとか」
(へぇ、意外)
「へぇ~、可愛いのとか買うの?」
田中が興味津々で聞くと――
「……シンプルなやつ」
と、氷川さんは淡々と答えた。
(まあ、そうだよな)
氷川さんの家って、無駄なものがあんまりなさそうなイメージがある。
シンプルで、整ってて、清潔感があって――
(……いや、待てよ?)
俺は、ふとあることを思い出した。
前に、氷川さんがひまりの部屋に行ったとき、「意外と可愛いものが多かった」とか言ってたんだよな……?
(ってことは、もしかして――)
「……こっち」
そんなことを考えている間に、氷川さんは目的の雑貨屋に向かって歩き出した。
店内に入ると、色とりどりの雑貨が並んでいる。
(うわ、すごいな……)
シンプルなものから、可愛らしいものまで、いろんな小物が並んでいる。
そして――
「……」
氷川さんは、その中の一角でじっと立ち止まっていた。
(ん? どこ見てんだ?)
俺が近づいて、視線の先を確認すると――
そこには、可愛らしい動物のクッションが並んでいた。
(えっ……)
思わず、二度見する。
氷川さんが見つめていたのは、ふわふわしたウサギのクッション。
それも、ちょっと困ったような顔をした、絶妙に愛らしいデザインのやつだ。
(ま、まさか……)
「氷川さん、こういうの好きなの?」
俺が思い切って聞くと――
「……っ」
氷川さんの肩が、びくっと小さく揺れた。
(あ、これ図星の反応!!)
「……べ、別に」
「いやいや、めっちゃ見てたじゃん」
「……なんとなく」
(それ、絶対気になってるやつじゃん!!)
俺がニヤリとすると、氷川さんはバツが悪そうにそっぽを向く。
「……こういうの、持ってなさそうだよな」
「……うん」
「でも、買わないの?」
「……別に、必要じゃないし」
(うーん、この感じ……)
多分、「欲しいけど、自分で買うのはちょっと抵抗がある」ってやつだ。
普段はクールでカッコいい氷川さんが、可愛いものを買うのに戸惑ってる――
(……なんか、めちゃくちゃ可愛いな)
俺は、軽く笑って言った。
「でも、家にあったら癒されそうじゃね?」
「……」
氷川さんは、少しだけ考えて――
「……そうかも」
と、小さく呟いた。
(おっ、ちょっと前向きになった!?)
「じゃあ、買えば?」
「……でも」
氷川さんが、ちらっと佐藤と田中の方を見る。
(……ああ、なるほど)
多分、「からかわれるのが恥ずかしい」とか、そんなところか。
しかし――
「お、氷川さん、それ買うの?」
佐藤が気づいて、クッションを指差した。
(うわ、バレた!!)
しかし、氷川さんは――
「……別に」
そう言って、すっとクッションを手に取った。
(えっ、買うの!?)
てっきり誤魔化すかと思いきや、予想外の行動に俺は驚いた。
「おお、意外とこういうの好きなんだな」
田中が驚いたように言うと――
「……なんか、いいなって思っただけ」
氷川さんは、少しだけ頬を赤くしながら答えた。
(お、おおおお!! これは……デレの進行を感じる!!!)
俺は、内心ガッツポーズを決めながら、氷川さんがレジに向かうのを見送った。
店を出た後、氷川さんはクッションを大事そうに抱えていた。
(あ、絶対気に入ってるやつだ)
「いい買い物したな」
俺が冗談っぽく言うと――
「……うん」
氷川さんは、珍しく素直に頷いた。
(なんか、すごくいい雰囲気だな……)
そう思っていた矢先――
「……あれ?」
遠くから、聞き覚えのある声が聞こえた。
振り向くと――
そこには、驚いた表情の夏川ひまりの姿があった。
(あ、やばい)
こうして、偶然の買い物デートは、新たな波乱を迎えることになるのだった――!




