第45話:週末、氷川さんと偶然の遭遇!? まさかの買い物デート……?
ホワイトデーから数日後の週末。
今日は特に予定もなく、適当に街へ出かけることにした。
(そろそろ春物の服とかも見ておきたいしな)
そんなことを考えながら、ショッピングモールを歩いていた時――
ふと、見覚えのある後ろ姿を見つけた。
(……あれ?)
黒髪のストレートに、シンプルな白いニット。
そして、小さなショルダーバッグ。
その姿を見た瞬間、俺の頭に浮かんだ名前は――
「……氷川さん?」
俺が無意識に呟いた瞬間、その人が振り向いた。
「……相沢?」
(やっぱり氷川さんだ!!)
こんな偶然あるのか、と驚きながら、俺は近づいていった。
「お前も買い物?」
「……うん」
氷川さんは、少し視線を逸らしながら、小さく頷く。
(なんか、いつもと雰囲気違うな……)
学校ではいつも制服姿だから、私服の氷川さんは新鮮だった。
いつものクールな雰囲気はそのままだけど、どこか柔らかい印象がある。
「一人で?」
「……そう」
「へぇ、珍しいな」
「……たまには、こういうのも」
(……なんか、ちょっと恥ずかしそう?)
普段なら「別に」とか「関係ないでしょ」とか言いそうなのに、微妙に素直な反応が返ってきた。
(これは……もしかして、ホワイトデーのお返しの影響か!?)
そんなことを考えていると――
「……相沢は?」
「ん?」
「一人?」
「ああ、そうだけど」
氷川さんは、少し考えるように視線を落とし、数秒の間を置いてから――小さな声で呟いた。
「……なら、一緒に回る?」
(…………)
(…………えっ!?)
俺は、一瞬で固まった。
「い、一緒に?」
「……ダメ?」
氷川さんが、俺を見上げるように問いかける。
(いやいやいや、そんなのダメなわけないじゃん!!)
俺は、慌てて首を振る。
「いや、全然! むしろ、いいの?」
「……別に」
「でも、俺と一緒に回るメリットなくない?」
「……そう?」
氷川さんは、ちらりと俺のカバンについたキーホルダーを見た。
(あ……もしかして、あれと関係ある?)
考えてみれば、氷川さんは俺に「お揃い」を認めたばかりだ。
それなら、少しくらい一緒にいてもいい――そう思ってくれたのかもしれない。
(……うん、それなら素直に喜ぶべきだな)
俺は軽く笑って、氷川さんに言った。
「じゃあ、せっかくだし付き合うよ」
「……うん」
こうして、俺と氷川さんの「偶然の買い物デート」が始まった。
まずは雑貨屋を回り、そのあと服を見てまわる。
「こういうの、どう?」
「……シンプルでいい」
「こっちは?」
「……ちょっと派手」
氷川さんは、基本的にシンプルなデザインが好きらしい。
(まあ、確かに氷川さんの雰囲気にはそういうのが合うよな)
そんなことを考えながら、一緒に服を選んでいると――
「……相沢」
「ん?」
「……この服」
氷川さんが手に取ったのは、薄いブルーのワンピース。
(おおっ!? なんか、いつもより可愛らしい感じの服だな)
「似合うと思う?」
「えっ?」
(い、今、俺に聞いた!?)
俺は驚きながらも、じっくりと氷川さんとワンピースを見比べる。
「……うん、めっちゃ似合いそう」
「っ……そ、そう」
氷川さんは、少しだけ耳を赤くしながら、その服を手に取った。
(……やばい、可愛い)
俺は、さりげなく視線を逸らしながら、なんとか平静を保とうとする。
(これ、完全にデートみたいじゃん……!)
そんなことを考えていると――
「お?」
突然、後ろから聞き覚えのある声がした。
振り向くと、そこには――
佐藤と田中。
(あ、終わった)
俺は、瞬時に察した。
「よう、相沢。……って、お前氷川さんと?」
「え、えっと……その、偶然会って……」
「へぇ~~、偶然ねぇ~~?」
田中がニヤニヤしながら言う。
(やばい、この流れは絶対からかわれる!!)
案の定、佐藤も興味津々な顔で言った。
「へぇ~、デート?」
「ち、違う!!」
「……別に、デートでも」
「えっ!?」
俺の声が裏返る。
氷川さんは、視線を逸らしながら、小さく呟いた。
「……買い物に付き合ってもらってるだけ」
(それ、ほぼデートじゃん!!!!)
佐藤と田中は、ニヤリとしながら俺を見た。
「相沢、よかったなぁ?」
「うっさい!!!」
俺は、必死に赤くなる顔を隠しながら、二人を睨んだ。
(……でも、まあ)
ちらりと横を見ると、氷川さんが小さく微笑んでいた。
(これは……デート、なのかもな)
俺は、心の中で静かにガッツポーズを決めた。




