第44話:放課後、氷川さんに呼び出された!? まさか、俺のプレゼント……?
ホワイトデー当日、放課後。
俺は、なんとも言えない気持ちで廊下を歩いていた。
(……氷川さんに「話したいことがある」って言われたけど……)
おそらく、昼に渡したホワイトデーのお返しのことだろう。
でも、何を話したいのかは分からない。
(まさか……気に入らなかったのか?)
俺が用意したのは、少し高めのチョコと、小さなキーホルダー。
ちょっと特別感のあるものを選んだつもりだったけど……もしかして、余計なことをしたのか?
(いやいや、そんなことないよな……たぶん……)
そんなことを考えながら、校舎裏へ向かう。
氷川さんが指定したのは、人目につきにくい場所だった。
(……やっぱり、何か言いにくいことなのか?)
不安と期待が入り混じった状態で、角を曲がると――
「……相沢」
そこには、俺を待っていた氷川さんの姿。
(……なんか、妙に神妙な顔をしてる)
俺は軽く咳払いをして、なるべく平静を装いながら声をかけた。
「お、おう。で、話って?」
「……」
氷川さんは、俺の顔をじっと見つめた後、カバンの中からホワイトデーのお返しの紙袋を取り出した。
(うわっ!! いきなり本題来た!!)
俺が身構えていると――
「……これ」
氷川さんは、袋の中からキーホルダーをそっと取り出した。
そして、静かに呟く。
「……どういう意味?」
(…………)
(…………えっ!?)
俺は、一瞬で固まる。
(どういう意味って……それは……)
単なるお返しにしては少し特別なものだった。
氷川さんが好きそうなシンプルなデザインを選んで、俺も同じものを買った。
(いや、別に深い意味は……いや、あるな!!)
俺はどう答えようか迷う。
そんな俺を見つめながら、氷川さんはわずかに頬を赤くしながら言葉を続ける。
「……チョコは、わかる」
「……うん」
「でも、これは……特別?」
(…………)
(…………えええええええええ!!!!???)
お前、それもう「本命かどうか」聞いてるのと同じじゃん!!
俺は心臓が跳ねるのを感じながら、なんとか平静を保とうとする。
「……特別、かもな」
「っ!!」
氷川さんの指が、キーホルダーをぎゅっと握る。
(えっ、なんか……めちゃくちゃ意識してる!?)
俺がどうしようか迷っていると――
「……相沢」
氷川さんが、俺をじっと見つめる。
「……お揃い、ってこと?」
(…………)
(…………はい、終了!!)
俺は完全に詰んだ。
(お、おおおお、落ち着け俺!! これはもう逃げられないやつだ!!)
氷川さんは、俺の反応を待っている。
期待と不安が入り混じった表情で、じっと俺を見つめている。
(ここで誤魔化したら、絶対ダメなやつ……!!)
俺は大きく息を吸い込み――
「……まあ、そういうこと」
と、正直に答えた。
「っ!!」
氷川さんの目が、わずかに揺れる。
そして――
「……バカ」
と、小さく呟いた。
(いやいや、バカって!!)
俺がツッコミそうになっていると――
「……でも、嫌じゃない」
(…………)
(…………えっ!?)
俺は、一瞬で固まる。
氷川さんは、俺の反応を見て恥ずかしくなったのか、顔を伏せながら続ける。
「……似合う、と思う」
(いや、それもう「嬉しい」ってことじゃん!!!)
俺は心臓の鼓動を必死に抑えながら、ゆっくりと口を開く。
「……じゃあ、大事に使ってくれよ」
「……うん」
氷川さんは、小さく頷いた。
その表情は、いつものクールなものとは違い――
どこか、照れくさそうで、でも、嬉しそうだった。
帰り道。
俺たちは並んで歩いていた。
しかし、いつもと違うことがある。
それは――
氷川さんが、俺とお揃いのキーホルダーをカバンにつけていること。
(……やばい、めっちゃ嬉しい)
そんな俺の心情を知ってか知らずか、氷川さんはいつもよりほんの少し、俺のそばに寄って歩いていた。
(……お前、それもうほぼデレじゃん!!)
俺は、心の中でガッツポーズをしながら、何も言わずに歩き続けた。
こうして、俺はまた一つ、氷川さんの新しい一面を知ることになった。
クールな氷の女王は――
俺とお揃いのキーホルダーをつけ、「嫌じゃない」と認める、最高に可愛いツンデレになっていた。




