第43話:ホワイトデー当日、氷川さんがまさかの反応!? 俺のお返し……?
3月14日――ホワイトデー当日。
朝から教室は、どこか浮ついた空気に包まれていた。
「お前、お返し渡した?」
「いや、これから……緊張する……」
「おい、昨日チョコくれた女子に、今日無視されたんだけど……俺、詰んだ?」
男子たちは、それぞれのホワイトデー事情で盛り上がっていた。
(まあ、そりゃそうなるよな……)
俺も、昨日の昼休みからずっと考えていた。
氷川さんは明らかにお返しを気にしていた。
(……ってことは、ちゃんと渡さないとな)
俺はカバンの中にある小さな紙袋を確認する。
(……よし、準備は完璧だ)
そう決意した瞬間――
「……相沢」
クールな声が聞こえた。
振り向くと、そこには氷川さん。
(おっと、さっそく来たか……)
俺は自然を装いながら、ゆっくりと声をかける。
「お、おはよう」
「……うん」
しかし――
(あれ? なんか様子が違う……?)
氷川さんは、いつもより少し視線を合わせにくそうにしている。
(昨日はあんなにお返しのことを気にしていたのに……まさか、今になって緊張してる!?)
俺は心の中でニヤリとしながら、軽く咳払いをした。
「氷川さん」
「っ!!?」
俺が呼ぶと、氷川さんの肩がピクリと震える。
(いやいや、動揺しすぎだろ!!)
俺は笑いそうになるのをこらえながら、カバンから小さな紙袋を取り出す。
「これ……昨日言ってたやつ」
「っ……」
氷川さんは、じっと袋を見つめる。
(えっ、なんかすごい真剣な表情……)
俺が少し不安になっていると――
「……受け取る」
と、小さな声で呟いた。
(…………)
(…………あれ!? なんか想像以上に緊張してないか!?)
俺が袋を差し出すと、氷川さんは両手でそっと受け取る。
「……ありがと」
その声は、普段のクールなものとは違い、ほんの少しだけ嬉しそうに聞こえた。
(……いや、もう確定でしょ)
俺は少し照れながら、「どういたしまして」とだけ返した。
昼休み――。
俺は机に座りながら、氷川さんの様子をチラチラと見ていた。
(……ちゃんと開けたかな)
お返しには、少し高めのチョコと、小さなキーホルダーを入れておいた。
俺なりに考えた「ちょっと特別感のあるお返し」だったんだけど……氷川さん、どう思ったんだろう。
そんなことを考えていると――
「おーい、陽向!!」
元気な声が聞こえた。
振り向くと、ひまりがこちらへ駆け寄ってくる。
「お前、もうお返し渡した?」
「お、おう、まあな」
「へぇ~、なんか特別なやつ?」
「べ、別に普通の……」
「あれ? なんか焦ってる?」
「……そんなことはない」
ひまりはニヤニヤしながら、俺の肩をぽんっと叩いた。
「まあまあ、私には何をくれるのかな~?」
「……ちゃんと用意してるよ」
「やったー! 楽しみにしてるね♪」
ひまりが笑っていると――
「……」
氷川さんの空気が、一気に変わった。
(おっと、また嫉妬モード突入!?)
ひまりと俺のやり取りを、じっと見つめる氷川さん。
(いやいやいや、そんなガン見しなくても……)
俺がどうしようか迷っていると、氷川さんがすっと俺の袖を掴んだ。
「っ!?」
「……相沢」
「な、なんだ?」
「……あとで」
「え?」
「……話したいこと、ある」
(…………)
(…………えええええええええ!!!!???)
俺は、一瞬で固まる。
(えっ、話したいこと!? なんの話!?)
昨日までなら、お返しを渡すかどうかって話だった。
でも、もう渡した。
(つまり……俺の渡したものについて、何か言いたいってこと……!?)
俺は、ゴクリと喉を鳴らす。
そして、気づく。
氷川さんの耳が、ほんのりと赤くなっていることに。
(……あっ、これやばいやつだ)
俺は、昼休みの終わりが妙に遅く感じながら、静かにため息をついた。
こうして、俺はまた一つ、氷川さんの新しい一面を知ることになった。
クールな氷の女王は――
ホワイトデーのお返しを受け取った後、俺と「話したいことがある」と言い出す、最高に可愛いツンデレになっていた。




