第41話:体育の授業、氷川さんとペアに!? でも、様子が……?
この日の体育は、ペアワークのある授業だった。
「お前、今日の種目知ってるか?」
「えーっと、確かストレッチと軽い筋トレだっけ?」
「マジか、地味にキツそう……」
そんな会話があちこちで交わされる中、俺たちは体育館に集まっていた。
(まあ、バスケとかじゃないだけマシか……)
そう思っていると、先生がペア分けの説明を始めた。
「今日は二人一組でストレッチをやるからな。適当に近くのやつと組め」
(……えっ!? 自由に組んでいいのか!?)
途端に、周囲の男子たちがざわつき始める。
「やべっ、これって女子と組めるチャンスじゃね?」
「誰と組むかで運命変わるやつ……!」
俺も、一瞬周囲を見渡したが――
「……相沢」
クールな声が、俺の耳に届いた。
振り向くと、そこには氷川さん。
「っ!?」
「……ペア」
(…………)
(…………えっ!?)
い、今、ペアの申し込みをされた……!?
普段なら、こういうときは適当に男子同士で組んで終わりなのに、なぜか今日は氷川さんが自分から俺を指名してきた。
(いやいやいや、これってつまり……!)
俺が戸惑っていると――
「おおっ!? 氷川さんが相沢を誘ったぞ!!」
周囲の男子たちがザワザワし始める。
「えっ、あの氷川さんが!? いつもクールで誰ともペアにならないあの氷川さんが!?」
「しかも相手は相沢!? どういうこと!?!?」
クラスメイトたちの視線が、一気に俺と氷川さんに集中する。
(や、やばい、めちゃくちゃ注目されてる……!!)
そんな中――
「おーい! 陽向!!」
またしても、ひまりの声が響いた。
「お、おう、ひまり」
「ねえねえ、私とペア組まない?」
「えっ!?」
(ちょっ、お前も来るのか!?)
ひまりはニコニコと俺の隣に立ち、腕をぽんっと叩いてくる。
「だって、陽向と一緒のほうが楽しそうだし♪」
(…………おいおいおい、これはまたヤバい流れでは……!?)
そして、案の定――
「……」
氷川さんの空気が、一気に変わった。
(うわっ、また嫉妬モード突入!?)
氷川さんは、じっとひまりを見つめた後――
「……相沢は、もう決まってる」
と、静かに言い放った。
(…………)
(…………えええええええええ!!!!???)
またしても、周囲の空気が一瞬止まる。
(お前、それもう「相沢は私のもの」って言ってるようなもんじゃん!!)
ひまりはそれを聞いて、「へぇ~?」とニヤリと笑う。
「そっかぁ~、氷川さんってば陽向を取られたくないんだ?」
「っ!! ち、違う!!!」
氷川さんは全力で否定するが、耳は完全に真っ赤だった。
そこへ、佐藤と田中がやってきた。
「また修羅場か?」
「陽向、お前モテモテだな?」
「いやいや、やめろって!!」
俺は頭を抱えたくなった。
(どうすりゃいいんだよ、この状況!!)
ひまりは相変わらず楽しそうに笑いながら、俺の肩を軽く叩いた。
「まあまあ、陽向が決めていいよ♪」
(だから、それが一番きついんだってば!!)
すると――
「……」
氷川さんが、俺の袖をぎゅっと掴んだ。
(っ!?)
「……相沢は、私と」
「えっ」
「……昨日、約束した」
(…………)
(…………えっ!?)
いやいやいや、昨日の帰り際に言われた「またこういうのしてもいい?」って、今日のペアワークの話じゃないよな!?
「……だから、今日は一緒」
(……いや、もうそれほぼデートの宣言じゃん!!!)
俺は完全に思考が停止した。
しかし、ひまりは「ふふっ♪」と笑って、一歩引いた。
「そっか、じゃあ今日は氷川さんに譲るね!」
「……べ、別に……」
氷川さんはもごもごと口を動かしながら、俺の袖を離そうとしない。
(もう、認めてるようなもんじゃん……!!)
俺はため息をつきながら、ひまりに手を振る。
「また今度な」
「うん、楽しみにしてる♪」
ひまりは軽くウインクして、去っていった。
ストレッチの時間。
俺たちは向かい合って座り、氷川さんが手を伸ばしてくる。
(……こういうの、なんか照れるな)
お互いの手が触れそうになる距離で、じっと向かい合う。
「……」
氷川さんは真剣な表情をしていたが、耳はやっぱり赤い。
(……めっちゃ意識してるじゃん!!)
俺が気になっていると、氷川さんがボソッと呟いた。
「……相沢」
「ん?」
「……たまには、こういうのも悪くない」
(…………)
(…………えっ!?)
それってつまり……!?
俺は思わず言葉を失った。
氷川さんはそっぽを向きながら、小さく続ける。
「……でも、相沢のペアは、私」
(……はい、独占欲確定しました)
俺は思わずニヤけそうになるのをこらえながら、頷く。
「……じゃあ、これからもペアよろしくな」
すると――
「~~~~っ!!」
氷川さんは、顔を真っ赤にしてうつむいた。
(ああ、めっちゃ可愛い)
こうして、俺はまた一つ、氷川さんの新しい一面を知ることになった。
クールな氷の女王は――
俺のペアは自分じゃないと嫌な、最高に可愛いツンデレになっていた。




