第40話:放課後、氷川さんが妙に近い!? 俺に何か言いたそうだけど……?
月曜日の放課後。
俺はいつものように教室で荷物を片付けていた。
(……なんか、今日は妙に意識しちまうな)
それもそのはず。
昨日の休日、氷川さんと二人で本屋に行き――
最後に、「またこういうの、してもいい?」と言われたのだ。
(あれ、普通にデートの誘いみたいだったよな……)
それを思い出すたび、俺の心臓は微妙に跳ねてしまう。
そんなことを考えていると――
「……相沢」
突然、俺の横に氷川さんが立っていた。
「っ!?」
驚いて振り向くと、氷川さんは無表情のまま、じっと俺を見つめている。
(いや、いきなり近すぎないか!?)
普段の氷川さんなら、俺と適度な距離を保つのに、今日は明らかに妙に近い。
「え、な、なんか用か?」
俺が戸惑いながら聞くと、氷川さんは少しだけ視線をそらした後――
「……帰る?」
「お、おう」
(……えっ、それだけ!?)
なんか、すごく言いたそうな雰囲気だったのに、思いのほか普通の質問だった。
「一緒に?」
「……うん」
(いや、めっちゃ自然に誘ってくるじゃん!!)
俺は心臓を落ち着かせながら、頷く。
「じゃあ、行くか」
そうして、俺たちは教室を出ようとした――そのとき。
「おーい、陽向!!」
またしても、ひまりの声が聞こえた。
「お、おう、ひまり」
「ねえねえ、帰りにちょっと寄り道しない? 近くに新しいカフェができたんだって!」
(……あっ、これまた面倒な展開の予感)
俺が返事をする前に――
「……」
氷川さんの空気が、一気に変わる。
(おっと、また嫉妬モード突入!?)
氷川さんはじっとひまりを見つめた後――
「……相沢は、私と帰る」
と、静かに言った。
(…………)
(…………えええええええええ!!!!???)
またしても、教室が静まり返る。
(お前、それもう「私と二人きりがいい」って言ってるのと同じじゃないか!?)
ひまりはニヤニヤしながら、俺と氷川さんを交互に見る。
「へぇ~? なんか二人とも最近仲いいよね?」
「っ!! ち、違う!!」
氷川さんは全力で否定するが、顔はもう真っ赤だった。
そこへ、佐藤と田中がやってきた。
「おいおい、またバチバチしてるのか?」
「これは……相沢の奪い合い?」
「いやいや、やめろって!!」
俺は頭を抱えたくなった。
(どうすりゃいいんだよ、この状況!!)
ひまりは相変わらず楽しそうに笑いながら、俺の腕をぽんっと叩く。
「まあまあ、陽向が決めていいよ♪」
(お前、それが一番きつい選択だってわかって言ってるだろ!!)
すると――
「……」
氷川さんが、小さく俺の袖を掴んだ。
(っ!?)
「……相沢」
「な、なんだ?」
「……昨日、私と約束した」
(…………)
(…………えっ!?)
確かに、「またこういうのしてもいい?」とは言われた。
でも、それって今日のことじゃなくね!?
「……だから、今日は一緒にいる」
(お前、それもうデートの宣言じゃん!!)
俺は完全に思考が停止した。
しかし、ひまりは「ふふっ♪」と笑って、一歩引いた。
「そっか、じゃあ今日は氷川さんに譲るね!」
「……べ、別に……」
氷川さんはもごもごと口を動かしながら、俺の袖を離そうとしない。
(もう、認めてるようなもんじゃん……!!)
俺はため息をつきながら、ひまりに手を振る。
「また今度な」
「うん、楽しみにしてる♪」
ひまりは軽くウインクして、去っていった。
帰り道。
俺たちは並んで歩いていたが――
やっぱり氷川さんの距離が妙に近い。
(……いや、これなんなの!?)
さっきもそうだったけど、最近の氷川さんは俺に無意識に寄ってきている気がする。
俺が気になってチラッと横を見ると――
「……」
氷川さんは少し視線を下げて、静かに歩いていた。
だけど、明らかに耳が赤い。
(……これはもう確定だな)
俺は、少しだけ試してみたくなり、わざと半歩ほど横にずれてみた。
すると――
氷川さんも、同じように寄ってきた。
(…………)
(…………やっぱり!!!)
俺はニヤけそうになるのを必死でこらえながら、ふと軽くからかってみる。
「氷川さん、なんか今日、距離近くない?」
「っ!!!」
氷川さんの体がビクッと震えた。
「ち、違う!!」
「いやいや、明らかに近づいてきてたけど?」
「……気のせい」
氷川さんはそっぽを向いてしまったが、耳が真っ赤なままだ。
(はい、完全に自覚なしのデレモードですね)
俺は心の中でガッツポーズをしながら、なるべく平静を装って言った。
「まあ、俺は嫌じゃないけどな」
「っ!!!」
氷川さんは、一瞬顔を上げ――
「~~~~っ!!」
マフラーで顔を隠しながら、足早に歩き始めた。
(ああ、めっちゃ可愛い)
こうして、俺はまた一つ、氷川さんの新しい一面を知ることになった。
クールな氷の女王は――
俺のそばに無意識に寄ってきてしまう、最高に可愛いツンデレになっていた。




