第39話:帰り道、氷川さんがまさかの発言!? 俺のこと……?
本屋での買い物を終え、俺たちは駅へ向かって歩いていた。
「……」
氷川さんは、さっきからずっと無言だった。
(ん? なんか様子が変だな……)
普段の氷川さんなら、無言でも「いつものクールな雰囲気」って感じなのに、今日はどこかそわそわしているように見える。
(まさか、本屋でひまりと会ったのをまだ気にしてるのか……?)
俺は少し考えた後、何気なく話しかけてみた。
「……今日は楽しかったな」
「っ!?」
氷川さんが、一瞬肩を震わせる。
(えっ、なんでそんなに驚くの!?)
俺は内心動揺しつつも、なるべく普通のテンションを保ったまま続ける。
「久しぶりにゆっくり本屋巡りできたし、たまにはこういうのもいいよな」
「……うん」
氷川さんは、小さく頷く。
その顔はほんのり赤く、やっぱりいつもと違う。
(なんだろう……もしかして、まだ言いたいことがある?)
俺が探るように彼女を見ていると――
「……相沢」
不意に、氷川さんが口を開いた。
「ん?」
「……さっき」
「さっき?」
「……夏川が、言ってたこと」
「えっ?」
氷川さんはチラッと俺を見て、すぐに目を逸らす。
そして――
「……相沢は、誰といるのが楽しい?」
(…………)
(…………えっ!?)
俺は、一瞬で固まった。
(えっ、今のって、もしかして……!?)
つまり、「私といるのが楽しいのか、それともひまりといるのが楽しいのか」ってこと!?
俺は、心臓の鼓動が跳ね上がるのを感じながら、なんとか平静を装う。
「……それって、どういう意味?」
「っ!!」
氷川さんは、俺の問いかけに驚いたように目を見開いた。
(おっと、意識してるの確定……!?)
氷川さんは、少しの間もじもじと指をいじりながら、ぎこちなく口を開いた。
「……その……」
「……」
「……べ、別に……意味はない……」
(いやいやいや、絶対意味あるやつ!!)
俺は確信しながらも、あえて何も突っ込まずに笑う。
「そっか。でも、俺は――」
「っ!?」
俺が何かを言おうとすると、氷川さんはピクッと反応し、期待と不安が入り混じったような表情でこちらを見てきた。
(……めっちゃ気にしてるじゃん!!)
俺はその姿が可愛すぎて、ついニヤけそうになりながら、わざとじらしてみる。
「まあ、どっちも楽しいけどな」
「っ!!!」
氷川さんの表情が、一瞬で固まる。
(あっ、これダメなやつだった!?)
氷川さんは、口をわずかに開きかけた後、すぐにギュッと結ぶ。
そして――
「……相沢の、バカ」
(うわっ、めっちゃ不機嫌になった!!)
俺は、氷川さんがぷいっと顔を背けるのを見ながら、可愛すぎて笑いをこらえるのに必死だった。
そして、駅に到着。
俺たちは改札の前で立ち止まった。
(なんか、今日はあっという間だったな……)
俺は、ちょっと名残惜しくなりながら、氷川さんの方を向く。
「じゃあ、また月曜日な」
「……うん」
氷川さんは、小さく頷いた。
しかし――
なぜか、その場を動こうとしない。
(……ん? なんか言いたそう?)
俺が気になって彼女をじっと見ると、氷川さんは少し迷った後――
「……また」
「ん?」
「……また、こういうの……してもいい?」
(…………)
(…………えっ!?)
俺は、心臓が一気に跳ね上がるのを感じた。
(それってつまり……また二人で出かけてもいいってこと!?)
氷川さんは、俺の反応をチラッと見ながら、ほんのり顔を赤くしている。
(お前、それもうデレじゃん……!!)
俺は、笑いそうになるのを必死にこらえながら、ゆっくり頷いた。
「……もちろん」
すると――
「っ!!」
氷川さんは、一瞬息をのんだあと、すぐに顔を伏せる。
「……そ、それじゃ」
慌てたように改札を通り、足早にホームへ向かっていった。
(……ああ、もうめっちゃ可愛い)
俺は彼女の背中を見送りながら、思わず口元を緩めた。
こうして、俺はまた一つ、氷川さんの新しい一面を知ることになった。
クールな氷の女王は――
「また二人で出かけたい」と思ってしまう、最高に可愛いツンデレになっていた。




