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第1章 第4話 絡み合う感情

イェシカとの訓練の日々が続く中、カルは少しずつ彼女を「イェシいぇしねえ」と呼ぶようになった。


最初はただの冗談交じりの愛称だったが、訓練を通じて感じた彼女への信頼や、時には強く引かれる感情がこの呼び方に込められていった。


「イェシ姉、次の魔法はどうするんですか?」と、ふとした瞬間に聞いてみる。


イェシカは軽く笑いながら、「まだまだいけるけど、まずは少し休憩しよっか。

俺もタバコすいたいし」と答えてくれた。


その瞬間、心の中に小さな喜びが広がる。彼女と過ごす時間が、僕にとってどれほど大切になっているかを実感するのだ。


2ヶ月の訓練を経て、もう1月になっていた。


正式な入社試験をとのことで、上位魔導士数名によるランク測定が行われた。

その結果、訓練によりAランクへと成長していた事が判明した。

最初は、自分でも信じられなかった。


と言うかイェシ姉以外の誰もが「良くてCランクだろう」と予想していた。


イェシ姉だけが唯一、「ひょっとしたら俺と同じBランクまでいくかもしれんな」も言っていた。


そして、結果はイェシ姉の予想をも超えたAランクだった。

師匠であるイェシ姉のランクを抜いた事にもなる。


周囲の魔導士たちもその成長に驚き、噂が広がるにつれて、僕は日本魔導士連盟の主力格としての地位を確立していった。


「すごいな、カル。お前、ほんまに魔導士としての素質があるんやな」と、イェシカは時折、感心した様子で言ってくれた。


イェシ姉の言葉には、誇りを感じる一方で、少しの嫉妬が混じっているようにも思えた。


彼女が僕に抱く複雑な感情は、まるで彼女自身の内心を映し出す鏡のようだった。


訓練期間の最中、イェシカが無造作に髪をかき上げる瞬間があった。


赤毛の髪が彼女の肩を優雅に流れ、その横顔に見惚れてしまう。


魔法の腕前を競う仲間たちの中で、僕が一番彼女に近い位置にいることを意識する度、胸が高鳴る。


「イェシ姉、どうしてそんなに強いんですか?」と素朴な疑問を投げかけると、彼女は少し照れくさそうに、「私は3年間努力してきたからね。それに、お前も頑張ってるじゃん」と返してくれた。


その言葉は、心のどこかを温かく包み込んでくれる。


また、別のと僕はイェシカに聞いた。

「なんでイェシ姉は魔導士になったんですか?」と。


イェシ姉は優しく答えた。

「理由は2つあるかな。1つは魔法でこの世から悲しみを消したいこと。2つ目は魔法で可愛らしい見た目になりたいことかな。」


2つ目の理由は僕と同じだ。

最初はメイクでそうなろうとしたけど、今は魔法で。

イェシ姉は今でも充分整った見た目にみえるが、本人は満足してないらしい。


「私はBランクだから変身魔法自体は使えるけど、完全なものではないんだよね。

はやくAランク相当の力をつけて完璧な変身が出来るようになりたいね」とイェシ姉は呟くのだった。



たまに「私(俺)のこと、どう思ってる?」という問いが、イェシ姉の瞳に浮かんでいるように感じる。

愛情と嫉妬、誇りと不安が交錯する中で、イェシ姉の心の内を探るのは難しい。


イェシ姉は気分で口調がコロコロ変わる。一人称も私だったり俺だったり安定しない。

それぐらい複雑な内面、と言うことなのだろうか?


そんなある日の訓練後、ふとした拍子に彼女が呟いた言葉が心に残った。


「カルがここまで成長してしまうと、俺の立場が……」



その瞬間、僕はイェシ姉の強さだけでなく、彼女(彼?)自身の不安も理解する。


カルの成長を願いながら、同時にカルの成長を羨んでいるのだ。


「イェシ姉、僕はあなたの背中を追いかけるよ。だから、ずっと一緒にいてくれ」と言いたくなる。


だが、その言葉がどれほど彼女を苦しめるか、少し考えてしまう。


僕たちの関係は、ただの師弟以上のものに育っていた。

イェシカの優しさに触れるたび、そして彼女の複雑な感情に気づくたびに、

僕の中に芽生えた恋心はますます深くなる。


互いに手を伸ばしながらも、何か見えない壁が存在するように感じるのだ。


それでも、イェシカと共に魔導士としての道を歩む中で、彼女の笑顔や温もりが何よりも力になっていく。

新たな絆を育みつつ、イェシ姉との関係がどのように発展していくのか、

僕は期待と不安を抱えながら日々を過ごすのだった。

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