第一節:禁忌のギフト
久しぶりに新作を作成しました。完結まで大まかな流れは作成しているのでエタらないように頑張ります。
――この世界のどこかにいるあなたへ――
選ばれし者、赤き暗黒に蝕まれ、欲望に囚われた心に禁断の炎を灯せ。沸き上がる血の滾りの魂に封じられた心の力、時の螺旋に巻かれし禁忌の賜物を賜りし、国の行く末を背負え。闇と光、絶えぬ戦いに魂の器を投じんこと、未来が告げる。選択せよ、復讐か、再生か
「あぁ畜生!! 何でこんなことになったんだ!」
森の中を駆けながら、悪態をつく。普段であればきれいに保つようにしていた服も所々破れて汚れが目立ってしまっている。
追手から逃げるためにがむしゃらで走り続けていた。ふと、目の前に人影が見えて近くの草陰に身をひそめる。
「エイド王子は見つかったか?」
「いや、こっちでは見つかってねぇ」
「そうか……。しかし王子がまさか禁忌指定されてしまうとは……」
「だとしても王族だろ? なんであの人が禁忌とやらで死刑なんだよ!!」
どうやら追手の衛兵らしい。片方は俺が死刑になったことが納得いっていないようだ。
もう片方のむりやり納得したような衛兵がため息をつきながら話し始める。
「お前はこの国出身じゃないから仕方ないが、禁忌てのはこの国にとって使い方次第では滅亡するようなものなんだよ。まさかそれを現王のご子息、エイドリアン・クリムゾンハート王子が得てしまうとは誰も予測していなかったんだ!」
「だからって殺すか?? 使い方次第でよくも悪くもなるならあの人は良く使う方の人間だ!」
「俺だってそう思うさ! でも俺たちは国の兵。命令に背くことはできないんだよ!」
衛兵たちが言い争っているところに出くわすとは思わなかったが、良く思われていたことは素直にうれしかった。
「すまないな、殺しはしないから少し眠ってくれ」
剣を鞘に入れた状態で衛兵たちの意識を刈り取る。自分の服や髪の色が黒色だったことに感謝をしつつも今の状態が危機的であることが変わりない。
自分の国を追われるというこの状況がつらく感じつつも俺は隣国への亡命を目指していた。
――――
――
「エイド、今日は其方の祝福の儀じゃな」
シルヴァナリア皇国の王城で玉座に座る王が自分に向って言う。俺は膝をつき礼をしたまま答えた。
「はい、父王よ。今日で成人にございます」
「うむ。この後のギフトにも期待をしたいところだ」
「どのようなギフトでも、国のためにある。それが王族としての責務です」
王である父は、それもそうだと肯定し小さく笑っている。
王子とは呼ばれているものの、王と王子の間には大きな差がある為、俺には父の顔をうかがうことはできなかった。
そもそも、シルヴァナリア皇国は王の選定を光と希望の神『アウローラ』神の信託によって行う。その時の国の状態や人柄を見てアウローラが王の血族を変えることもあるようだ。
つまり、王は神によって据えられているが、王子は今の王族の子供。明確に大きな差がある。
父は変にかしこまられるのが嫌なようでしきたりに縛られる必要がないと言っていたが、俺を含めてそれを聞き入れる人はいなかった。
「それでは、これより祝福の儀を始める。信託者よ、頼んでもよいか?」
「はっ、賢王よ。それではこれよりエイドリアン・クリムゾンハートの祝福の儀を執り行う。神に祈り求め、其方の行くべき道を示したまえ!」
父の号令の下、祝福の儀が始まる。神に祈りながら俺は、国をより良くできるギフトを求めた。
祈っていると不意に、体が浮いた感覚になり思わず目を開けるとそこは白と黒の世界になっていた。
「ここは、王の間じゃないな」
「「そうです。ここは神が住まう世界」」
ダブって聞こえた声の方を向いてみると二人の女性がいた。俺はその姿に見覚えがある。
「もしかして、アウローラとノクターン?」
「「ご名答。さすがは王子です」」
「ギフトを貰うときはみんなここにくるのか?」
「「いいえ、あなたが三人目です」」
つまりギフトを貰うのに神に会うのは条件ではないということか。
でも過去に二人ここにきているのであれば父が知っていると思うのだが……。
「「あなたは運命の子。国の危機に対して選ばれた子」」
「選ばれた?」
「「世界の均衡が崩れ去り国が滅びの危機にあります。あなたはそれを救うことも、滅ぼしつくすこともできる」」
「国が滅ぶって、いきなりすぎだろ! あんたらは助けてくれないのか!」
「「残念ながら我々神は手を出すことはできません。代わりに運命を持った人に託すのです。今回はエイド王子、我々の選択によってあまたの運命をその身に宿した稀代の祝福保持者であるあなたです」」
「国を守る為ということなら仕方ない。何をすればいい」
「「あなたの望みのままに。それ故に世界が再生をするか、滅び新たな文明の礎となるか。私たちから言えるのは、この後に授けるギフトによってあなたは国を追われます。まずは逃げて力をつけてください。あなたが望むのであればギフトが導きます」」
「国を追われる?」
「「あなたの運命とギフトは強力です。決して飲み込まれぬよう。過去の二人は選ばなかった道を選ぶことが私たち二神の願いです」」
神々の言葉を最後に世界がゆがみ始める。肝心のギフトのことも何をすればいいのかも聞けてない。
「まて! 神が道を示さないままってどうすんだよ!」
「「祈りなさい。そうすれば与えられます。願いなさい。そうすれば導かれます」」
それを最後に俺の意識は一瞬暗転し意識が戻った時には王の間に戻っていた。
しかし王の間では叫び声が上がっている。
周りを見てみると俺を見てみんなが叫び、恐怖しているのだけはわかった。
「王よ……。王子のギフトですが……。禁忌でございます……。」
「なん、だと!? それは本当か!?」
「はい、王子のギフトは、禁忌『影紡ぎの力』でございます」
「なんということだ……。まさか息子が禁忌だとは……」
たしか神が言ってたのは国から追われる。つまり、追放ではなく幽閉されると考えて間違いない。この混乱に乗じて逃げるしかない……。
「父王よ、この場での非礼をお許しください。私は王族の権威を返上しこの場から逃げさせてもらいます。国の不利益となるならば俺はこの国を脱する!!」
俺はそう言い放ち近くの窓をけり破って外に出た。そこまで高さがないから今のうちに逃げなければ!!
――――
――
「父さん。きっと悲しんでるだろうな。アイツも……いや、あいつは強いから悲しむほどでもないか」
雑な別れになった父ともう一人を思い浮かべながら俺は国境を越えた。
続
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