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ブロンド  作者: 東堂 アカリ
2/13

 私がこの屋敷を相続したのは、つい半年ほど前でしょうか。小さな頃から何かと気にかけてくれていた叔母が、遺産としてこの屋敷を私に残してくれました。そうはいっても、私はこの屋敷のことを今まで知ることなく過ごしてきましたので、遺言書を見て途方にくれました。私はこの土地にもあまり縁がないものですから、どんな場所か想像もつかなかったのです。

 知り合いたちが口々に、ピレネーの麓は夏の別荘地としては最高だと勧めてくれたものですから、一度行ってみようかと思いまして来てみたのです。5月くらいならちょうど良い季節だろうと思いまして、屋敷の掃除がてら覗いてみました。

 叔母のもとで働いていたメイドにも話を聞きましたが、この屋敷は夏のあいだに叔母夫婦が過ごすお気に入りの屋敷だったそうです。人を招くことも暫しあったのだとか・・・。晩年、叔母の体調が悪くなるまではよく泊まりに来ていたと聞いています。私が屋敷に入った時も、少し掃除をすればすぐに泊まることのできるくらいには手入れが行き届いていました。

 私はすぐにこの屋敷が気に入って、何日か泊まることにしました。幸い、叔母が生きていた時に屋敷で働いていた庭師や料理人も見つかり、すぐに働いてもらうことが出来ました。周りの景色も美しいですし、食事も気にいりました。

 こちらに来てから、屋敷の周りを散歩したり、ゆっくりと読書をしたりしていましたが、ふと庭を見てみたくなり、外へ出ることにしました。庭師が丁寧に仕事をしてくれていることもあり、雑草もなく新しい花の苗が植えられていました。

 私は庭師の仕事ぶりに満足しながら庭を歩いていると、ふと屋敷が目に入りました。正面の玄関から見た屋敷は見慣れていますが、後ろ側から見たことが無かったのです。それに初めて来たときに屋敷のすべての部屋を確認したつもりでいましたが、少し違和感と言うか・・・不思議な感じがしたのです。

 それは2階の角部屋でした。私の思い違いでなければ、そこに窓はなかったはずです。でも、今見える場所には確かに窓がある。私は不思議に思って、執事を呼んで聞いてみました。彼もそこに窓があるとは思っていなかったようで、驚いていました。執事が言うには、メイドたちの暮らしていた部屋なのではないかということでした。

 私は屋敷に戻ると、すぐにその部屋へ向かいました。その部屋は、一階の一部分と屋敷の廊下とでうまくつながっていて、その奥に何かあるとはわからないように造られていました。私は、何とか奥の部屋に行こうとしましたが、鍵がかかっているのか全く動きません。執事にもやらせましたが、まったく駄目でした。この屋敷の持ち主の叔母も、かつて管理していた人たちもすでに亡くなっています。メイドやコックは、何も知らないと言っています。私は、部屋のことが気になりはしたものの、屋敷で過ごしているうちにすっかり忘れてしまいました。


 そうこうしているうちに、休暇が終わるときが近づきました。私は屋敷が気に入ったこともあり、また次の休暇にはこちらに来ようといろいろな手配をしていました。残された荷物の整理もあらかた終わったこともあり、最後に屋敷の周りを散策しようと思いました。

 庭の植物を見たり、木に止まった小鳥を眺めていると、ふと視線を感じました。不思議に思って辺りを見回すと、何気なくあの部屋が目に入りました。2階の窓から、12,3歳でしょうか・・・もう少し幼いかもしれません、こちらを驚いたような顔をして見ているブロンドの少女と確かに目が合ったのです。 

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