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タワーマンション


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 暗色の戦闘服と抗弾ベストを身に着けたウェル、大坂、マッケンニーの三人は煙のようにタワマンに侵入した。地下の通用口から内部の非常階段を使って七階に上がる。小太りのウェルの息が荒いのに大坂はイライラする。どうしてこいつら白人連中は、筋肉ばっかつけて体力ないや。アホが。

「アルファ、準備はどうや?」

 ヘッドセットをタップして大坂が植田に指示を仰いだ。ファストメットはかぶってない。その代わりARモノクル付きのヘッドセットをかけている。

「侵入と同時に七階の防犯カメラにダミーを流すわ。でも、ハイド出来る時間は十分よ。いいわね」

「了解。エレベーターは?」

「急な故障よ。全部止めてある」

「さすがやで。ほな、いこか」

 大坂の合図でウェルがドアを開けた。ウェル、大坂、マッケンニーの順番で中腰で侵入していく。無論、武装済みだ。ポイントマンのウェルがコルトガバメントM45A1を手にし、サポートの大坂、スウィーパーのマッケンニーがFN P90だ。

 西川智海の部屋の前まで来るとウェルが屈んだ。二メートルほど後方の大坂を見る。マッケンニーは非常口と西川の部屋のドアの両方が見える位置に陣取っている。

「シエラ、準備完了や。そっちのタイミングで状況開始やで」

「I have a control. びびって遅れんなよ」

「そっちこそはずしたら、罰金でっせ」

 近くの雑居ビルの屋上に寝そべったザックが嬉々としてブレイザーR93の望遠照準器スコープを覗いた。レティクルの中央にタンゴのいる部屋を持ってくる。

「レギュレーション作らないと面白くないぜ」

 狙撃とも言えないイージーな距離にザックは下唇を突き出した。

「七秒だ」

 ザックは一瞬で呼吸を合わせるとトリガーを引いた。


 西川はデキャンタの赤ワインとステーキを食べ始めた。かなり旺盛な食欲だ。

「これは健啖だわ」

 三百グラムはあるステーキをあっという間に腹に収めていく西川がモニターの隅に映っていた。西川のスマホのカメラからの映像だ。

「以前はこういうタイプではなかったんですが。どちらかと言えば食の細い文科系女子で」

 口の周りをソースと肉油でてらてらと光らせて、切り分けた肉片を口に押し込む姿は食事というよりも、肉食動物の採餌だ。野菜は一切取らず、合間に赤ワインを流し込む。

「なかなかうまそうだな」

 菊池が横で喉を鳴らした。優貴のように美味そうと思っているわけではない。がつがつと肉を咀嚼する西川の姿に思うところがあるのだろう。自分が食われるような。

 西川は三十分ほどで店を出た。食後のドルチェもエスプレッソも要らないらしい。まさしく採餌だ。

「なぜ、来ない、薫め」

 西川の呪詛がスピーカーから流れる。菊池がぞっと頬をそそけ立たせる。

 光点がさらに駅方面に向かい巨大商業施設の渋谷ストリームに入るのを見て、優貴はマツダ2を路上パーキングに入れた。エンジンを切る。

「どうするんです?」

 菊池が不安気に優貴を見る。

「どうするんです?」

 菊池が不安気に優貴を見る。

「あの感じだと手当たり次第に暴れるってのもありそうなんでな。おれらはもうちょっとそばで監視するわ。あんたはここにいて待っていてくれ」

「え? ひ、ひとりでですか?」

 菊池は振り向くと縋るように莉愛を見た。いてくれというのだろう。

「あたしはいつも優貴と一緒なのだ」

 莉愛はにべもない。

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