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7 薄情非情な悪役令嬢



 そこそこダメージを食らったが、ユーフラテスは気を取り直した。

 しぶといところが彼のチャームポイントなので。


「……俺の妃になった方が、孤児院に援助する名目ができるぞ? 費用も増えるぞ? 泊まり込むことは許さんが、慰問だっていくらでも行かせてやるぞ?」


 持ち直したユーフラテスがネモフィラを懐柔しようと「王子妃になる利点」を挙げると、これまで黙って様子を眺めていたヒロインが、ネモフィラの手を取った。


「ネモフィラさん! 是非! お願いします!」

「ええ~」


 ネモフィラはとても嫌そうだ。

 貴族令嬢のくせに思いきり顔を歪めている。ユーフラテスだって結構傷つく。


 対象的にヒロインは黒い目を生き生きと輝かせている。


「だってお話を伺っていると、王子様、ネモフィラさんのこと大事みたいですし。院長先生と一緒になっても老い先短そうですし、王子様の方がきっとネモフィラさんのこと大切にしてくださいますよ」


 よし、ヒロイン。その意気だ。

 そのままネモフィラを説得してくれ。


「でもわたくし、孤児院には興味がないんですの。子供も好きじゃありませんし」


 知ってる。知ってるよ、ネモフィラ。


 でもそこはもうちょっとオブラートに包もうか! ヒロインも唖然と……おや、していないな。


 一体ネモフィラは孤児院で何をしていたんだ? 孤児院の子供が、「子供は好きじゃない」などと言われて傷つかないなどと……。


 ユーフラテスはハラハラした。


 薄情非情なネモフィラがこれまで、息を吸うようにナチュラルに無意識に、孤児院の子供たちを傷つけてこなかったかと。


 何より、このヒロイン、痩せこけていないか?

 ちゃんと食事はとれているのか?


 乙女ゲームによるとユーフラテスはコレと恋に落ちるということだが、ヒロインは一体いくつなんだ?

 多少かさ増ししても十歳ちょっとじゃないか?

 いやホント、乙女ゲーム、身分差に年齢差に色々おかしくないか?


 それにしてもネモフィラは相変わらずフクフクぷくぷくしてるな。

 いいもの食べてたんだろうな。


「子供がお好きじゃないなら、王子様と一緒にいる方がストレスもないですし、いい暮らしもできるんじゃないですか?」


 ――その通りだ! よく言った、ヒロイン!


 ユーフラテスは右手をぐっと握りしめ、無言でヒロイン(リナ)の応援をした。

 心の中で。


「孤児院に住み込んだ方が院長と一緒にいられますもの。慰問なんてしましたら、差し入れでしたり絵本を読んであげたり子供達と遊んだり、何かしらお世話しなければいけないのでしょう? 面倒ですわ」


 口を尖らせるネモフィラに、ヒロインは眉を顰めた。


 うん、わかる。わかるよ、ヒロイン。


 孤児院で孤児を世話する修道女が口にする台詞ではないが、ネモフィラなので仕方がない。

 そしてヒロインの立場では、ネモフィラに反論したくとも身分故に不可能だ。


 ということで、ユーフラテスは孤児院院長を眼光鋭く睨んだ。砂浜に転がっていたハロルドが、いつの間にか呼びに行ってくれたようだった。


 ――おいてめえわかってんだろうな? 院長?


 院長は縮み上がった!


 援助もっと欲しい、子供にもっとよい食事と教育を施してやりたいなどと今更偽善的なことを言う。よしでかした。


 しかし今更だな、院長。

 今まで何やってたんだ、院長。


 これまではネモフィラがいるからと監査も入らなかったようだが、キャンベル辺境伯に一言入れておこう、とユーフラテスは心に刻む。


 こういうところはユーフラテスの王子らしいところである。

 ネモフィラが絡むと最悪だけど。

 八つ当たりが回り回って突然平民一家に襲撃かましちゃうけど。


 クソ王子め。



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