ざまあされた勇者のオレに追放した付与魔術師がお中元を毎年、送ってくるんだが、なんの意地悪?
「あ〜あ、なんでオレがこんなことしてんだ…ろっと!」
オレの名前は、ウォーロック・シーカー。昔、勇者としてS級のギルドを牽引するリーダーだった。
だが、今はギルドも解体し、勇者もやめて、こうしてただの村人として畑を耕して生活している。
当時、無能でまだ付与魔法もろくに使えなかった付与魔術師のチャールズを追放したが、その日を境に、ギルドの存続が危ぶまれる事態へと発展していった。
オレらギルドパーティーは全員、自分で勝ち取ったステータスだと勘違いしていて、実はあの無能なチャールズが隠し持っていた付与魔法で最強にさせられていたのだと、後で気づき、レベルは99から1に。これでは全く冒険にならず。必死で引き戻そうとしたが〝もう遅い〟と言われ…
挙げ句の果ては、付与魔術師のチャールズはオレらよりはるか上のSSS級ギルドにスカウトされ、のちに魔王をチートスキルで倒し、世界を平和にした英雄として華々しい人生を送っていった。
「オレもあいつのように華々しい生活を送れるはずだったんだけどな。 まあ、自業自得だけど」
そんな、今一番世界で輝いている最中のチャールズから毎年、夏になると謎の〝お中元〟が送られてくる。
本来なら、お中元とは、夏に仲の良い親戚かギルドにしか送らないものだが、追放されたチャールズはオレに対して、あの時の恨みや妬みはなかったのだろうか。
いや、絶対にあるに決まってる。これが〝ざまあ〟という意味、意地悪で送ってきてるのだとオレは思う。
しかし、内容はいたって普通のものだったのだが…
「拝啓。 今年になって本格的な夏が到来し、暑い日々が続いていますが、お健やかにお過ごしのことと存じます。
今年は、私の英雄祭をとり行い、その日では大変お世話になりました。 新生活におきましては、王宮の雑務に追われてますが、幸せに充実した日々を送っています。
今後とも、ご指導をお願いすることがあることと存じます。 つきましては、気持ちばかりのものですが、夏場には美味しいビールをささやかながら、お送りしました。
暑さもこれから厳しくなってきますが、ご健康のほどお祈り申し上げます。 敬具。」
「嫌味にしか聞こえねえよおおおおおおおおおおおおクソやろおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
オレは送られてきたビールを家の床に叩きつけながら、手のひらでその手紙を強く握りしめていた。
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2年目。
「拝啓。 連日厳しい暑さが続きますが、ご家族の皆様方には健やかにお過ごしのことと存じます。
平素は、何かとお気遣いいただきまして、誠にありがとうございます。 日頃の感謝をお伝えしたいのですが、王宮の雑務に追われた状況にありまして、また久しくご無沙汰ばかりしてしまい、申し訳ありません。
ほんの心ばかりのお中元の品ではございますが、別便にてビールをお送りします。 気兼ねなくお受け取りください。
炎天下の毎日ですが、夏負けなどなさらないようにお祈り申し上げます。
まずは書中にて、ご挨拶まで。 敬具。」
「なんでこいつ、そこまでしてオレにビールだけを送りつけたがるんだ? それに家族の心配までしてくるとか何様なん?」
一応、送られたら送り返すのがお中元のマナーなので、同じビールを送りつけてやった。
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3年目。
「拝啓。 暑さもようやく、ようやく厳しさを…増してまいりましたあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああいいいいいいいい!!!! 皆々様にはお変わりなくご健康のこととお喜び申し上げますううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!!! マジ王宮の雑務厳しすぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!! もう無理。 敬具。」
「えっ…なにこの怪文書。 なんか怖いんですけど。 そんなに王宮の仕事に追い詰められてたのか…」
2年目の手紙から察するに、この時からもう耐えられないぐらい王宮の雑務が大量にあったのだと思うと、心の中でぞくっとした。
でも、こっちからしてみたら、単純にざまあされた側なので相手のチャールズの心境なんて、正直〝ざまあ〟としか言いようがないのである。
なので、こっちも応戦するように、お返しにお中元の手紙でも送っておくことにした。
「拝啓。 連日厳しい暑さが続いておりますが、チャールズ様をはじめギルドの皆様のご活躍を遠くから拝見し、健やかにお過ごしのこととお慶び申し上げます。
平素は、何かと気遣いいただきまして、誠にありがとうございます。また久しくご無沙汰いたしまして、申し訳ございません。
日頃の感謝をお伝えしたくて、心ばかりではございますが、別便にてこの村特産のビールをお送りいたしました。
今夏はこれからも猛暑が続くと見聞きしております。 ご多忙とは存じますが、どうかお身体ご自愛くださいませ。 マジでざまあ。 敬具。」
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