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04

 寝台に入ったルルディーアが興奮冷めやらぬ様子ではしゃぐ。


「王陛下に勝っちゃうなんてすごいわ、ディナト!」

「それほどでも。ルルディーアに褒められて鼻が高い」

「でもお酒くさーい」

「名誉の負臭(ふしゅう)だ」


 くすくす笑うルルディーアを撫でて、ディナトは立ち上がった。


「おやすみ、ルルディーア。良い夢を」

「おやすみなさい」


 ルルディーアの目蓋が閉じたのを確認して、ディナトもまた寝台の傍らに座り込み目蓋を下ろした。


***


 王との飲み比べの翌日も、ディナトは実にぴんしゃんとしていた。やっぱりディナトはすごいわ、と笑うルルディーアに機嫌よく笑って、いつものように彼女の髪を纏めてやるディナトだった。


「やあ色男。いい顔色だな」

「……ちょっと二日酔いでね……」


 今日のシンはいつもは伸びている背筋を曲げ、道端に座り込んでいた。顔色がひどく悪い。

 弱々しく返ってきた答えにルルディーアは慌てて飲み物屋の店主に声をかける。


「まあ、たいへん。おじさん、二日酔いの薬湯をお願い。……ありがとう。

 どうぞ、飲んでちょうだい、シン。この薬湯は二日酔いにきくから」

「ありがとう。ちょっとハメを外しすぎてね……」

「ふふ、気を付けないとだめよ」

「そうだね、はは。今後は気を付けるよ」

「自分の酒量くらい見極めておけ色男」


 力なく薬湯をすするシンは肩を落としてディナトを見やった。


「そこそこ自信はあったんだがな……。あんたはどれくらい飲めるんだ?」

「生まれてこのかた酔ったことはないな」

「……うらやましい限りだ」


 シンはちびちびと薬湯を飲み進め、時間をかけて器を空にすると、ようやく気付いたように居住まいを正した。頭痛で頭が回らなかったのだろう。


「すまない、ずいぶん楽になったよ。いくらだった?」

「いいの、気にしないで。そんなに高くないの。私とディナトは割引もきくし。

 ね、おじさん」


 大笑する薬草屋と飲み物やが肩を組んで親指を立てている。それなりに儲かっているようだ。


「いや、そういうわけには……」

「ふふ、律儀な方ね」


 ルルディーアが笑う。茶味がかった金の瞳を細め、花の蕾がほころぶような、微笑ましさとかわいらしさを合わせた笑みだった。


「それならまた美味しいお店を紹介してくださいな。でも一軒だけですよ? シンの連れていってくれるお店はどれも美味しすぎるんですもの、太ってしまうわ」

「承った」


 大仰な礼を取るシンにさらにルルディーアは笑みを深めた。

 それから市場に行くたび、次に会う約束をしてシンと落ち合うようになった。

 待ち合わせめいたそれにルルディーアは心躍らせているようで、ルルディーアの笑った顔を見るのが好きなディナトもシンと会うのが楽しみになっていた。

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