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00/序
水の流れが耳から離れない。ゴウゴウ、ドウドウと、うるさくてかなわない。
体は熱いのか冷たいのかわからず、指の先をわずかに持ち上げることも、瞼すら上げることができない。ただ暗闇の中にいる感覚。おそらく、血を流しすぎたのだ。
このまま己は死ぬのだろう、とイスキュロスは静穏に自らの行き先を考える。
聡明たる父と、卓絶なる兄のいるだろう御空に向かうことはなく。罪人が落とされる地の底へと封じられる。
ああ、だが。
最期に見られたのが愛しい琥珀であるのだから、なんの未練もない。今にも泣き出しそうなほど、歪ませてしまったが。
あの小さな輝きを、己は守れただろうか。
泣かないでほしい。笑っていてほしい。
どうか、どうか。
深い地の底ででも、おまえの幸せを祈っているから。