2050年、ガソリンスタンド経営してます
1994年には店舗数が6万店を超えていただとか、車1台の平均リッター数が30以上だったとか、そんな過去の栄光に縋る年寄りは皆店を畳んでいきました。
どうもこんにちは、2050年、今から約30年後のガソリンスタンドで働いています、俺です。
2011年の東日本大震災、あとそちらではまだ発生してない南海トラフ地震での関東大震災、そんな時だけですよ、ガソリンスタンドが最後のエネルギーの砦だーとかつってどっと押し寄せるの。
頼むから普段から給油してるとこ行ってね、そこ閉まってるからって普段から給油してないとこ行かないでね、いや行ってもいいけど燃料半分以上入ってんのに給油しに行くのやめてね、震災時それで本当に必要な人に行き渡らなかったもんでね。
さて、今現在のガソリンスタンドはどうなっているかというと、まあ驚く事でもないんだけど数は減ってます。2020年には確か3万店を割り込んでピーク時の半分だーつって騒いでたけども、それよりも減ってます。
今どんくらいかというと、7952店です。
ピーク時の7分の1以下、7店中6店は閉店したって感じかな。実際は減ってる間にも新規出店あったから8分の7が閉店、のが近いかもしれないな。
そんで平均燃費は伸びるし、電気自動車は増えるし、ガソリン需要落ちるのなんのって。
安売りしてたトコは軒並み辞めてったね。
ガソリンだけじゃなく灯油もさ、オール電化増えて需要減ったから。
安売りするとこってなんで安売り出来るかっていうと、どこも同じだけど薄利多売が出来るから。
量を売れば多少利益落としても元が取れるし、ガソリンスタンドの場合は売れるトコには事後調整つってバックマージン的なアレを寄越すもんで、とにかく量売れば何とでもなるから安く安く、が横行してた。
あとはまあ、大きな声では言えないけどもハイオクにレギュラー混ぜたり、レギュラーや軽油に灯油混ぜたり、なんてすれば安く売っても充分利益出るけどね。
実際バレてないだけで結構あったみたいだし、激安店で給油した事ある人は被害に遭ってるかもね。
気付かなきゃお互いにWin-Winだし、いいんでないの?
割食うのは車だけよ、たまにならいいけど毎回そんなん入れてたらエンジンの寿命縮むぞー。
そんな安売り店、悪評で消えてった訳ではなく、原因は安売りしても販売量が増えなくなったからだ。
普通に考えれば分かる事なんだけど、君らのいる2020年頃にはもう燃料油需要の減少は始まってた訳よ。
大体年2〜3%かなあ。毎年その位ずつ燃料油需要が減ってって、俺の居る2050年にはもう当時の半分以下の需要しか存在しなくなった。
だのに、だのに、だ。
どこもあれよ、燃料油数量の目標が前年比100%、いや101%とか普通に設定してたからね。
それを元に価格を出して売るけども、需要減でそんな量は出ない。
んじゃどうするか、普通は「目標数量落として価格上げて利益増やそう、でないとやばい」ってなるじゃん?
違うのよ、「このペースじゃ目標数量に届かん。よっしゃ値下げしよ。数量届かせたら事後調整あるし、それで補填すりゃええわ」なのよ。
冗談に聞こえるかもしれないけども、本当です。
ちなみに、その事後調整のお金はどこから出すかというと、元売り(うちはENE○S)がブランド料って形で全店舗から持っていきます。
それは仕入れ燃料油に加算されるので、最終的にそれを購入する我々販売店、そしてお客様が負担する訳です。
安売り店の尻拭いを我々と我々の顧客がさせられる訳ですね、マジでクソでした☆
で、そうやって安売りしまくった訳ですが、年数が経つに連れ、赤字ギリギリむしろ赤字価格で販売しても目標数量達成出来ない、って状態になりました。
そうするとENE○Sも冷たいもんで、「んじゃ補填打ち切りね」つって見放した訳です。
当たり前っちゃ当たり前ですが、それを当てにして価格設定してたのにいきなり突き放されたもんですから店はにっちもさっちもいかなくなりました。
補填なしで乗り切れる様計算したら次の日からなんとリッター20円も値上がりして顧客から大ブーイング、しまいには暴力沙汰にまで発展してその店はそのまま閉店に追い込まれましたとさ。
ちっともめでたくはないけども、そんな事例もあったりした。
安売り店でしっかり残ってんのはCOSTC○だねC○STCO。
あそこは年会費でしっかり儲けてるから燃料油はほぼ仕入れ値で売ってるけど閉店したとこほぼないもんね。ゼロではないけど。
うちがまだ何とか生き残ってんのは完全に運。
あと、俺と嫁さん二人でやってて人件費が他に比べて安いから。経費をこれでもかって抑えてるからギリギリなんとかやっていけてる。
子供もガソリンスタンドで働きたいって言ってくれてるけど、頼むからそれだけはやめてくれと土下座した。
この先も需要は先細り、最終的にはゼロになるだろう。ゼロにならずとも、それに近い状態になるのは間違いない。
そんな先のない仕事を、子供に継がせたい親がどこに居るだろうか。
以前、農家をやっている人が「子供に継がせたいと思わない」って言ってたけども、ガソリンスタンドもそれに近い。というより一緒だ。
きついし汚れる、給料も安くおまけに危険。
需要は更に減るし店を維持するだけでもギリギリで、拘束時間も長い。
ブラックの中のブラック企業、うちに勤めるならほとんどのブラック企業はホワイト企業に見えるだろう。
てな訳で、2020年に残ってるガソリンスタンド3万店のうち、30年後の2050年にまだ生き延びているガソリンスタンドは8000店以下です。
3分の2は無くなっています。
30年後も生きているであろう皆様、ここのガソリンスタンド無くなったらどこ行こう、って考えといて下さいね。
願わくば、一時の安さにつられず、残ってて欲しいと思うガソリンスタンドで給油してあげてください。
ウチも、そんなお客様のおかげで今日も生き延びられていますから。