【Chapter1】俺とあいつは友達じゃない。【ここまでのお話】
○チャプター1まとめ
・主人公の名前は、黒木陽。
パソコンゲーマー。コンシューマは家族に付き合う程度。
今流行りのサバイバルシューターゲームに、はまっている。
身長も顔も並。服のセンスは普通。性格のひねくれ度は痛々しいレベルだが、本人なりに頑張っている。
悩みしかない人生だが、大抵は自意識過剰な、典型的な男子高校生。
実は小学生のころは、熱血漢で、イジメを見逃せなかったりしたのだが、もはやその熱意は高校生活の中に埋もれてしまったようだ。
・ヒロインの名前は藤堂真白。
学内ヒエラルキーのトップ層。モデルもやっており、事務所にも所属している。ストレス発散のための動画視聴で、偶然、サバイバルシューターゲームの楽しさを知る。
パソコンでしかできないと思っていたが、黒木陽のスマホ画面を見て、アプリでもできることを知り、人生が変わる。
生まれつきの金髪碧眼。隔世遺伝。髪は隠さないが、目はカラーコンタクトを入れて黒く見せている。
どうやら色々と悩みがあるらしい。
※なお、藤堂はイチョウ色の髪色と表現されているが、これはめちゃくちゃ明るい黄色ではなく、ブロンドに近い色で、作者の造語? みたいな感覚です。
・プロローグ。
黒木の自室で、陽と真白は二人でゲームをしていた。ゲームはサバイバルシューター『エアポケットウォーカー』。なぜ二人でゲームをしているのだろうか。
黒木はゲーマーで、自称陰キャ。藤堂はモデルをしており陽キャのトップクラスなのに。この二人は交わる存在なのか?
真白はゲームをすることに癒やしを覚えているようだった。
・時は戻る。陽にぶつかった真白のせいで、スマホが割れてしまった。そのとき真白にゲーム画面を見られてしまう。今流行りのサバイバルシューターのレベルMAXの画面だった。
・真白はなぜか、それからというもの、陽に話しかけてくるようになった。
このままではボッチ生活がくずれてしまうーー陽は真白へ『話しかけないでください……』と情けない懇願をするため、放課後、彼女の姿を追った。
・しかし何かがおかしかった。真白は学校でボッチになれる場所を探しているらしい。
たどり着いた先は、陽が密かに管理しているボッチスペースーー部室棟、屋上手前の階段踊り場。
・真白の『たおしてやる!』的な声のあとに、なぜかサバイバルシューターのゲーム音がした。
実は真白は、サバイバルシューターの動画勢。自分ではやらずにプレイ動画を見るだけだったが、陽のスマホ画面を見て『スマホ版があるのか!』と知り、先日からサバイバルシューターゲームを始めていたのだった。
・だが、しかし。真白の家はゲーム禁止。なので放課後の学校で、ゲームができる場所を探していた。
・とっさの判断ミスから、陽は真白に捕まってしまう。色々と聞かれる。ゲーミングPCの有無など。
・陽の家は両親ふくめてゲーマーだった。真白は親が子供とテレビゲームをする事実が信じられずに質問を重ねるが、陽はついつい声を荒げてしまう。『大人だってゲームはするだろ』と。大人気ないが、ゲーマーの性でもあった。
・なんと真白から、『家に遊びに行っていい?』と聞かれるが、当然断る。ならばと、陽は藤堂にゲーム仲間としての誘いを受ける。陽も断りきれずに巻き込まれ、ゲーム友達になる。しかし友達の定義がわからない面倒くさい主人公であった。
・陽だけのたまり場だったはずの屋上手前の階段踊り場。その日から、一人だけの秘密基地だった場所が二人のものになった。
・陽には妹がいる。名前は茜。ストリーマーである。陽は妹の配信を手伝ってバイト料をもらっている。悲しい兄である。
・陽と真白はチャットアプリのIDを交換して、ゲーム仲間になったーーのだが、陽は釈然としていなかった。
そもそもIDを交換したから友達になれるわけではない! なんてひねくれているが、満更でもなくなっていた。ちょろすぎた。
・土曜日に学校の秘密基地『階段踊り場』で、真白と二人、ゲームをする約束をした。妹になにかを悟られるが、逃げるようにでかけた。
・まちあわせ場所で、真白は昼寝をしていた。すぐそばにメモ。ゲームのコツをまとめたものだった。
陽は『自分ごときとゲームをするためだけに勉強してくるなんて』と鼻で笑いそうになるがーーそこで思い出す。
『友達とゲームをする』ということの、特別さ。それは忘れかけていた感情だった。
陽キャとくくっていた真白の存在を少しだけ、思い改めた。
・真白とのゲーム体験は、陽にとって、特別なものとなった。現実世界が、難関ゲームに感じられるくらいには。
・ゲームによってわずかながら近づいたと思っていた真白との距離。
しかしそれは錯覚だった。階段踊り場だけの特殊設定だった。
教室内のパワーバランスの再認識によって、陽は真白との、立場の違いをわからされた。
相手に近づくのがうまいからこそ、リア充なのである。陽は、近づくのが下手だから非リアである。うまくやれていたのは、真白がすごいだけなのだ。陽は合わせてもらっていただけなのだ。
・いいように勘違いしていただけだったーー陽はどこか居たたまれなくなり、教室をあとにした。
・しかし逃げ出した陽は、これまでとは少しだけ違う行動を起こした。
『また放課後にゲームしようよ』
真白からのチャットアプリを見て、思う。
立場が違うと見せつけられようとも、それでもゲームを誘ってくる真白に、頑張って近づいてみよう。
俺ごときとゲームをするのに、勉強をしてくる彼女を追いかけてみようーーだからまずは教室へ戻らねばならない。
陽は一歩を踏み出した。嫌々歩くのではなく、浮き立つような心を抑えるような駆け足でーー。
○チャプター2へ続く




