表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺とアイツは友達じゃない。  作者: 斎藤ニコ
Chapter Ⅳ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

78/98

第78話 また会えるかな(Chapter Ⅳエンド?)

 朝。漆原との話し合いの翌日。

 少しばかり重い頭にひきずられないようにして、なんとか顔を洗い、口を動かし栄養を取り、日常に戻れるように努力をする。


『わたし……、黒木くんのストーカーしてるんだ』


 漆原はそれがまるで、誇りある仕事であるかのように、言い方を悪くすれば、完全に自己陶酔しているような表情で言った。言い切った。


 ホラーを見ていたらコメディになったかのような。

 ラブストーリーを見ていたら、ガンアクションになったかのような。

 そんな違和感を覚えつつも、しかし、けれど、確実に――そんなセリフが出てくるようなストーリーでもあったと俺の頭は、理解しようとしていた。


 たしかに流れ的にはおかしくない。

 途中、シリアスっぽくなってはいたが、俺だってそういった危機感は感じていた。


 ……いや、何も流れだけがおかしいといっているわけではないのだ。


 他にもおかしいところはたくさんあるだろ?

 俺にストーカー?

 なんども考えるが、おかしい。

 俺ごとき存在にストーカーができるわけがない。

 リタルタイムアタックをしているギャルゲーではないのだ。いきなりショートカットしてエンディングをみるような、そんなおかしさを俺は俺自身の人生に感じている。


 漆原、お前は、……なんていうか、すこし、見る目がないぞ……。


 最後にそう伝えると、漆原は恥ずかしそうに――まるで褒めちぎられたように、嬉しそうにこう言ったのだ。


『……そう言われると、嬉しいな。特別、みたいで。それにライバルいないってことだから……ううん、でも居たけど、ラスボスみたいな人が……でもいいの、わたしは』


 ぶつぶつと陶酔しながら何かを言い始めた。ふっかつの呪文でないことは確かだ。


 ――刺激してはならない。

 ――俺は何か、壮大なフラグを立ててしまったようだ。

 ――いや、それは今さらの話。フラグなんて、中学時代にすでに立てていた。これは完全に不可避な強制イベントだ。

 それが死に確定の戦闘イベントでないことを祈るばかりである。


『それでね、黒木くん、土曜日に学校にいくときに、おかしを大量に買い込むのはだめだよ?』


 なんか言っているが、俺には何もわからない。あーあーあー。心の耳をふさぐ。


 さて。

 予定通りにはいかなかったが、予定通りに話は終わりそうだった。

 同時に、さまざまなゲームイベントが蓄積された俺の脳が、『このキャラのイベントを今起こしてはならない』と警鐘をならしている。

 まだ早い。今起こすとバッドエンド直行だ――俺は曖昧に頷いて、退散することにした。

 これ以上は、今は、ダメだ。


 でも。

 どうしてか。

 俺が漆原の気持ちを理解できないのは確実でも。

 別れのときに漆原が、ふっと寂しそうな顔を見せて、こんなことを言うものだから。


『……黒木くん、お礼が言えてよかった。じゃあ、ね』


 俺の心が少しざわついてしまったのも事実なのだった。

 だから。


『また、会えるかな』


 なんて聞かれたときも、俺は何かを期待しいるわけでもなく、むしろ恐怖を感じてさえもいたはずなのに、俺は迷うことなく『ああ』と言い切った。してしまった。


 漆原の話はまだ救われていない。

 まだまだ先がある。

 だから、俺が逃げるのはまだ先の話なのだ。

 ストーカーなんていうめちゃくちゃ怖い話から物理的には逃げるにしても、だ。


 それに、俺という人間は安心して良い状況になんて居なかった。

 漆原がどうとか、ストーカーがどうとか、俺の境遇がどうとか――そんなこととは全く別の道で、全く関係ないとはいえないようなイベントが発生していたのだ。


 あとはそれを受注するだけ。

 そうすれば勝手に話は進み――いや、違う。

 受注しなくても、もう受注しているようなものだった。


 なにせそのクエストの主人公は、金髪で、碧眼で、美少女で、13歳から芸能界入りしながらも、まるで仕事にやる気を出さなかったヒエラルキートップの陽キャギャル。


 藤堂真白、その人だったからだ。


   ◇


 勉強だけをしていれば、ストーリーは進む?

 俺と藤堂のゲームライフは、自由度の高い牧歌系MMORPGのように、大したアップデートもなく、のんべんだらりと進んでいく?


 そんなことはなかった。


 当たり前だ。

 俺がパーティを組んでいるのは、牧歌系シミュレーションのヒロインではない。

 

 超難易度設定のRPGの勇者である。

 俺は今さらながら、そんなことを再確認することになった。







 ●

 ChapterⅣ


 end……?

 ●


というわけで、ChapterⅣおわりです。

……と言いたいところなんですが、ChapterⅣはⅤとセットとも言えるので、クエスチョンマークをつけておきました。


次は真白の話です。

勉強するばかりのシーンになると思っていた読者様がいましたら申し訳ありません。

相手は藤堂です。

勉強とゲームだけで陽キャは構成されておりません……。


黒木には勉強の他にも、やってもらわないといけないことがたくさんあります。


無事にストーカーというファンもできましたし、ハーレム系主人公ぽくなりましたね!(震声)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 読みやすさ 独特な世界観のテンポのいいセリフ廻し 魅力的な登場人物達 どれも大好きです [一言] 更新されているとちょっと良い日に感じます これからも応援しています
[良い点] 漆原さんというスパイス いい()
[良い点] ガチガチのストーカーで草
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ