表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/79

報酬

 ピッ。



『レベルアップ。スキルポイント20獲得しました。』



 ダンジョンマスターの撃破を知らせるログが流れ終わると、


 玉座の奥にある壁が、ズズッと音を立てて左右に開かれる。


 ちょうど、自動ドアが開くような要領だ。


 そこから地下へ続く、階段が見えた。


 もしかすると、前回と同様に、あの真っ白な空間。

ダンジョン最深部へと、繋がっているのかもしれない。



「さすが、ご主人様。無事にダンジョンマスターを倒してしまいましたね」



「ああ、クリスティーナがかけてくれたバフ……いや、祝福のおかげだよ」



「わたしは、アレくらいしかお役に立てれないので……」



「助かったよ、ありがとう。クリスティーナ」



 デュラハンが残した兜と、魔石をアイテムパックに回収して、


 あらわれた階段を降りる、俺とクリスティーナ。


 程なくして、白く柔らかい光が見えてきた。


 やはり、この先にあるのは、 あの真っ白な空間で間違いないようだ。



「クリスティーナ、ちょっと待ってくれ」



「は、はいっ」



「これを」



 アイテムパックに突っ込んでいた、ジャージを差し出す。


 あの空間では、クリスティーナにかけられていた呪いが、一時的にせよ解けていた。

そして、今のクリスティーナは、前にプレゼントしたリボン以外は装備していない。


 つまりアレだ、このまま入ってしまえば、またあの(・・)事故が起きてしまうというわけだ。


 さすがに、それは色々とまずいだろ。


 そう何度も、剥いてしまうわけにはいかない。



「ありがとうございますっ」



 と言うと、嬉しそうにお礼を言うクリスティーナ。


 手渡したジャージを、いそいそと着始める。



「お待たせしましたっ」



「じゃあ、行こう」



「はいっ」



 階段の先には、【始まりの洞窟(ダンジョン)RE】と同じ、


 石碑以外、何もない空間が広がっていた。



『境界の回廊、最深部へようこそ。』



  以前と同じ、優しげな女性の声が響く。


『境界の回廊 の、踏破者として、ヤマダタケシ、クリスティーナ・M・ブルーオーシャンを登録します。』



 ふと、クリスティーナを確認すれば、スケルトンの姿から聖女様へと戻っている。


 以前は、確信を持てなかったが、これでハッキリとした。

やはり、ここはバフ・デバフを打ち消してしまうような、セーフゾーンのようだ。


 事前に、ジャージを渡しておいて正解だったな。


 こんな美少女しているクリスティーナが、あられもない姿でいたら、とてもじゃないが平常心でいられる自信がない。



『クリア報酬をお選びください。』



 と、声が聞こえたかと思うと。


 目の前に、二つの光り輝く球体があらわれる。


 今度の報酬は、選択制らしい。


 洞窟(ダンジョン)のステータス情報のように、二つの球体にも情報がマスク表示されている。



【セリシアの息吹】


 大森林と呼ばれる場所の奥深く、セリシアの大樹が50年に一度、生みだす息吹。

使用者のレベルを10アップさせる効果を持つ。



【アブダラの霊泉】


 竜峰に湧くとされる霊泉。

使用者のあらゆる状態異常を消し去る効果を持つ。



 ……これは。


 ついに、きちゃったか。


 【アブダラの霊泉】を使えば、クリスティーナの呪いを解けるじゃないか。

レベルを10アップも確かに魅力的だけど、これを使わないと上がらないわけではない。


 しかし、【アブダラの霊泉】に関しては、これを逃がしたらいつ手に入るかわからないし。

もしかしたら、二度と手に入らない可能性だってある。


 もう、これは【アブダラの霊泉】一択しかないだろう。



「クリスティーナにも見えてるか?」



「はい、見えています。ご主人様、どうぞ、【セリシアの息吹】をお受けとりください。

使った者に大きな力を与えると、そう書いていますので、ご主人様に相応しいかと思います」



 あれ? 見えている説明文が違うのか。

まぁ、いい。今はそんな場合じゃない。



「これじゃなくても、力はつけられる。だけど、呪いは違うだろ?」



「しっ、しかし……私は後をついて行くばかりで。ほとんどがご主人様の成果ではありませんか」



「俺がそうしたいんだ、クリスティーナは何も気にしなくていい」



 と言うと、【アブダラの霊泉】の表示がされている球体に触れる。


 すると、眩い程に光を放ち、液体の入ったガラス瓶に姿を変えた。

手の平大のガラス瓶に、澄んだ青色の液体が並々と入っている。



「ご、ごしゅじんさまぁ……ぐすっ、あ、あ、ありがとう……うっく、ございます」



 振り向くと、真っ赤に目を腫らしたクリスティーナの姿が。


 その宝石のような瞳から、ポロポロと涙が零れ落ちる。



 「ごっ、ごめん。だ、大丈夫か……」



 何で謝っているのかわからないが。


 俺は、焦りながらも言葉を探す。



「ぐすっ、……い、いえ、うっく、……これは嬉し泣きですっ」



 そう言うと、クリスティーナは、首を小さく傾げて笑顔を見せた。



 そうやって見せた笑顔は、破壊力抜群だった。


 童貞の俺としては、オーバーキルもいいところ。


 最高にあたふたとしてしまうのが情けないわ。






 ピッ。



『規定レベルに達しました。彼の地への滞在制限を解除します。』



 ピッ――。





 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ