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境界の回廊

 一度目はローズのパーティーメンバー救出に、二度目はトレイン騒ぎからの送還。


 今日で三度目となる、【境界の回廊】へ踏み込む。


 三度目の正直とは言わないが、今回は攻略を目的としたアタックだ。


 遺跡群のような場所から、神殿内部に入り、

そして、地下祭壇のような階層を経て、トレイン騒ぎあった場所までやってきた。


 やはり、ニコライさんが言っていた通り、

ここまでの階層は、ほとんど魔物が出ないと言う話は本当のようだ。


 現に、俺達は魔物に会うこともなく、ここまでやって来ることができた。


 途中、一組のパーティーを見ただけで、以前のような賑わいがなかったのは、先日のトレイン騒ぎが影響しているからだろうか。



「クリスティーナ、そろそろ出てきてもいいよ」



 リュックを地面に降ろしながら、クリスティーナに話しかける。



「はいっ」



 と、返事が聞こえたかと思うと、中からクリスティーナが、もそもそと出てきた。



「ご主人様、今日はあまり、冒険者の方を見かけませんね」



「ああ、そうだな。先日のトレインを警戒しているのかな」



 しかし、これは好都合である。

周りを気にすることなく、攻略に専念できるというものだ。


 ニコライさんの話では、ダンジョン探索でも暗黙のルールやマナーがあるらしく。

その辺に疎い俺としては、気兼ねなく探索できるのは有難い。



「ここからは、魔物が出るらしいから。十分気をつけてくれ」



「わかりましたっ」



 渡した手斧を両手に持ち、少し腰のひけた感じで、周囲をキョロキョロと警戒するクリスティーナ。


  そうは言ったが、クリスティーナ自身は魔物にカテゴリーされているのか。

魔物が自発的に、クリスティーナを襲ったりしないようだ。


 だから、お前は大丈夫だ、などと言うつもりはない。

もう既に、クリスティーナは、大事なパーティーメンバーだからな。


 ちょっとした言動が、相手を傷つけてしまうなんてことも多いに有り得る。



 剥きだしの岩肌に、所々見かける白い石材で造れた人工物。

そのどれもが、柱だったり、崩れた祭壇ような何かだったりと。


 もしかすると、かつては此処も、入り口付近で見た遺跡群のような場所だったのかもしれない。

ダンジョンに歴史背景などがあるとすれば、これを調べてみるのも面白いかもしれないな。



 しばらく、進んだところで、獣のような荒い息づかいが聞こえてきた。


 手で、後ろにいるクリスティーナに合図をだす。

その意図を理解したのか、動きを止めて前方を警戒する。


 暗がりから、ノソノソと出てきた魔物は、豚を二足歩行させたらこうなるだろう姿。


 胸元から、背中にかけて体毛が覆い。


 ぶぅぶぅと荒い息づかい、口からは下から上に生えた牙が。


 そして何より、10数メートルは離れているのにも関わらず、ここまで臭ってくる生臭さが強烈だ。


 手早く、ステータスを表示させて確認。



種族:オーク

性別:男

レベル:16

HP:15

MP:0

STR:22

VIT:31

INT:0

DEX:7

AGI:11



 どうやら、今回の相手はオークさんのようだ。

このレベル差を考えれば、雑魚と呼べる相手ではなかろうか。


 ステータス表示のおかげで、心に余裕が生まれる。


 ここは一つ、オークさんの経験値を美味しく頂いてしまおう。



「クリスティーナ、こいつは俺一人でも大丈夫そうだ」



「わかりましたっ」



 今だ俺達に気が付いていないオークを仕留めるべく、バットを握り締めて、慎重に距離を詰めていく。


 慎重に進んだつもりだったのだが、足元の小石を蹴り飛ばしてしまった。


 飛んだ小石が、別の石にぶつかって音を立てる。



 カコンッ。



 その音に気づいたオークは、俺達を見つけ。


 突然、咆哮をあげる。



「ブオオオオオオオッオオオオオオオオッ」



 重低音が効いた鳴声が、洞窟内に響き渡った。


 それを、聞きつけてか。


 洞窟の奥から、幾つもの影がゾロゾロと。


 そのどれもが、オークさんだ。


 数は、ざっと見ただけでも、30体以上はいるのではないだろうか。



 おう、マジか。


 これは、ちょっとヤバイかもしれない。


 

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