パーティーメンバー
「さすが、ご主人様ですっ」
カタカタと骨を鳴らせて、駆け寄ってくるクリスティーナ。
倒れていたパーティーメンバーの回復は、無事に終わったようだ。
地面に倒れていたのは、すでに過去のこと。
彼らも今は、元気に立ち上がっている。
回復魔法って、すげーな。
「クリスティーナもご苦労様、回復魔法なんて使えたんだな」
スケルトンであるが、よくよく考えてみれば、元聖女様だ。
回復魔法の一つ、使えたところで不思議じゃない。
「いえ、スケルトンになってからは、魔法が一切使えなかったのですが……。あの白い部屋であらわれた輝く球体に触れてからは。少しだけですが、魔法が使えるようになりました」
「それって、呪いが少し解けたってことか?」
「私にも、わかりませんが。もし、そうなら嬉しいですっ」
スケルトンには、相変わらず表情なんてないが。
今はきっと、笑顔を浮かべてるはず。
少しづつだけど、感情の機微がわかってきた気がする。
「あの……助けて頂き、本当にありがとうございました」
そう言ったのは、金髪のイケメン。
悔しそうに、地面に倒れていた彼だ。
俺のいた世界であれば、モデルとかしているタイプ。
それもちょっと、チャラ目のやつ。
聞いてみれば、このイケメン、ローズの婚約者らしい。
「べつに、婚約者っていっても親同士が決めたことよっ」
などと、ローズは言っていたが。
それとなくローズを気遣うイケメンの感じが、ラブだよラブ。
許婚なんて、空想上の生き物か何か、かと思っていたけど。
その幻獣を目のあたりにして、なんかこう色々と眩しい。
俺も、許婚がほしかった。
思春期を経てからの、お互いを意識し始める感じが最高だよな。
「助けて頂いて、ありがとうございます。……この恩は決して忘れません」
ペコリと頭を下げたのは、クレアと呼ばれていた少女。
短く揃えた、青い髪が印象的だ。
暴行未遂とはいえ、まだ時間がそう経っていないせいか。
表情は暗いが、それでも美しい顔立ちが見てとれた。
気になっていた顔の痣も、クリスティーナの回復魔法によって消えている。
傷が残らなくて、一安心といったところか。
他のメンバーに比べて、特に華奢な感じがする。
雰囲気的に見て、彼女は後衛か魔法職だろうな。
そして、パーティーメンバー最後の一人は、栗色の髪を後ろでまとめた剣士風の少女。
これまた、お礼の言葉を頂戴した。
しかし、前衛三人に後衛の魔法職一人という、何ともバランスの悪いパーティーだ。
こちらの世界には、パーティーロールという概念がないのだろうか。
それとも単に俺が、ゲーム脳になっているのかもしれないけど。
「あんたが、こんなに強いなんて意外だったわ」
降下したと思われた、好感度が回復した予感。
「ローズ、助けて頂いたのにそんな言い方してはダメだよ」
さりげなく入れるイケメンのフォローが、経験値の高さを伺える。
チャいとか言って、ごめんなさい。
ダメだ、これ以上このパーティーを見ていると、何かが削れていく気がする。
キリの良いここいらで、早々に離脱せねば。
手遅れになってしまう前に。
「それじゃあ、俺達はここで」
この場を後にするべく、立ち去ろうとした時だ。
ローズにガッチリと、袖を掴まれてしまった。
その目つきは、獲物を狙うような目。
「な、なんでしょう……」
何かマズイことでも、してしまったのだろうか。
なにせ、異世界のマナーなどこれっぽちも知らない自分である。
些細なすれ違いが、大きなトラブルに、なんてこともあり得るからな。
「まだ、お礼が出来ていないわっ」
ああ、お礼ね。
お礼か……。
完全に忘れてしまっていたわ。




