冒険者の少女3
バットをクルリと回した後、男達に向ける――
「俺か……俺は、お前達をぶっ飛ばす男だ!」
言ってしまったぞ。
まさか俺の人生で、こんなセリフを言ってしまうとは。
ダンジョンの雰囲気、やばい。
完全に当てられてしまっているわ。
「てめぇ、正気か? 俺達に勝てるつもりでいやがるのかっ」
厭らしく口角をあげて、嘲笑のを浮かべる無法者A。
「そのつもりだ」
言ってしまったものは、仕方ない。
このノリを貫き通してしまおう。
変に恥ずかしがるから、いけないのだ。
今の俺は、ピンチに駆けつけた謎のヒーロー。
これだ、これでいこう。
「はっははは、俺達は元、『赤鉄』級の冒険者よぉ。お前みたいなヤツに負けるはずがねぇ」
それに釣られて、無法者Bも笑いだす。
さっそく、笑われてしまったぞ。
何だソレ、知らないよ。
冒険者に階級あるなんて、初めて知ったわ。
で、『赤鉄』級とやらのステータスは、どんなもんよ。
名前:ゲレレ
性別:男
種族:人間
ジョブ: 無法者
レベル:16
HP:155
MP:0
STR:31
VIT:33
INT:0
DEX:19
AGI:29
見てみれば、ダンジョン推奨レベルギリギリ。
ネトゲであれば、パーティに入った途端キックされても、文句言えないレベル。
曰く、「募集内容は、ちゃんと見てくれましたか? すみませんが、キックしますね」
基準を満たしていない者に対して、世間の風は冷たいのだ。
もう一人はどうだ?
名前:モッスル
性別:男
種族:人間
ジョブ: 無法者
レベル:14
HP:147
MP:0
STR:29
VIT:25
INT:0
DEX:33
AGI:35
こいつに到っては、レベルが下回ってるぞ。
逆に、心配になってしまうわ。
そして、これが俺のステータス。
名前:ヤマダ タケシ
種族:人間
性別:男
ジョブ:冒険者
レベル:37
HP:750
MP:590
STR:255
VIT:309
INT:248
DEX:225
AGI:370
ストックHP:10
スキルポイント:165
その差は、まるで大人と子ども。
我が戦力は、圧倒的じゃないか。
ふふっ、と笑いが漏れてしまったわ。
「何が可笑しい? 笑うんじゃねぇーよっ!」
不機嫌そうに、言葉を吐き捨てると向かってくるモブA。
自身は嘲笑したのに、理不尽な事を言うやつだ。
それを、向かい撃つべくバットを持つ手に力をこめる。
あれ、遅くないか。
モブAの動きが、まるでスローモーションのようだ。
いや、これはきっと上昇したステータスがそう見せているのかもしれない。
切り込むモブAの剣を、バットで打ちつける。
金属の甲高い音が響く、厚い刃が粉々に割れた。
それを見て驚愕するモブA。
俺も、ビックリだ。まさか、粉々になるとは思わなかった。
しかし、今は驚いている場合じゃない。
すかさず、腹にバットを打ちつける。
「ぐはあっ」
モブAは、その場に倒れて動かなくなった。
続けて、モブBに向けて駆ける。
まさか、モブAが倒されてしまうとは、思っていなかったのだろう。
剣すら抜いていない、隙だらけもいいとこ。
このまま、打ち込んでしまえ。
モブAと同じく腹部へ。
打ち込まれたモブBは、への字に体を折りながら、そのまま地面に倒れこむ。
ふう、終わったぞ。ミッションコンプリート。
これだったら、まだゴーレムさんのほうが強かったな。
「す、すごい……あなたは一体……」




