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冒険者の少女

「アンタ、誰よっ!」



 艶やかな金髪を、ポニーテルに結んだ少女が、その蒼い目で睨む。


 ダンジョンの入り口から、飛び出てきたのは向こうであって。

俺ではない。そのうえ、誰だと聞かれて何と答えれば良いのだろうか。



「ヤマダタケシです」



 とりあえず、本名などを答えてみる。



「クリスティーナです」



 リュックの隙間から、クリスティーナも続く。


 それを聞いて、ポニテ少女は少し思案顔だ。



「あまり見ない格好だけれど、もしかして冒険者かしら?」



  その辺、どうなんだろうな。


 まだ、経験は圧倒的に少ないが。

ダンジョンに潜ってるわけだから、冒険者と名乗っちゃってもいい気がする。


 まぁ、そう言ったほうが無難だろう。

フリーターですと、正直に言ったところで不信がられるだろうし。


 それに違う意味で、俺のHPも削られてしまう。



「まぁ、そんなところだ」



「その、従者ですっ」



 クリスティーナが、リュックの中から元気に答える。


 しかし、良く見ればポニテ少女も冒険者のそれだ。

シルバーで飾られた軽鎧に厚めのブーツ。腰には、細めの剣を携えている。



「わたしはローズよ。怒鳴ったりして、わるかったわ……しかし、ここはどこなのかしら。ダンジョンの中とは到底、思えないけど」



「ここは、ダンジョンではありませんよ」



 クリスティーナが、リュックからひょっこり顔をだして答えた。


 それを見た、ポニテ少女が腰の剣に手をおく、



「ス、スケルトンッ!」



 これは、ちょっとまずい雰囲気。



「待って、待ってっ」



 すかさず、間に入って説明をさせていただく。

かくかくシカジカ、まるまるウマウマ。


 とくに隠す必要性を感じなかったので、まるっと正直に。

その際に、「ぬおっ」と声をあげて一番驚いていたのは、クリスティーナだった。


 

「にわかには信じれない話ね……」



 当然だろ。俺が逆の立場だったら、異世界うんぬん言われたら。


 こいつ、ちょっとヤバイって思っちゃうもん。



「この際、そんな事はどうでもいいわ。あなた達、冒険者なら手を貸してもらえないかしら。お礼は、十分な額を用意するわ」



 ローズが話した内容によると、


 パーティーメンバーと共に、このダンジョンを探索途中、突如あらわれた冒険者崩れの無法者(アウトロー)に襲われて、パーティーは半壊。


 それでも何とか、仲間達の手によって逃げだしたローズは、助けを呼ぶ為に必死に走っていると、


 気がつけば、ダンジョンの外に。


 つまり、ここ行き着いたというワケだ。


 そして、その手助けを俺たちに求めているらしい。


 さて、どうしたものか。


 相手は冒険者崩れの無法者(アウトロー)

一角豚やゴブリンなどと、比べても危険そうだ。


 しかし、助けを求める美少女に、まさか断るなんて出来るわけがない。

やっぱり、男なら女の子の前では、カッコつけたいよな。


 決めた、助けに行こう。



「クリスティーナ。助けに行こうと思うけど……」



「もちろんです、行きましょうっ!」



 言い終える前に、快諾を得られた。


 さすがは、元聖女様。

人助けと聞いて、迷いはないようだ。





「なにも見えないのだけれど、本当にダンジョンの入り口があるのかしら?」



 ダンジョンの入り口を前にして、ローズがつぶやく。



 あれ、そうなのか? 


 俺とクリスティーナには見えてるのに、ローズにはコレが見えていないようだ。

この違いって、なんだろう。


 だけど、今はそんなことを考えている場合ではないな。

アイテムパックから、『始まりの剣』という名のバッドを取りだして、


 準備はオーケーだ。



「よし、いこう!」



 ダンジョンの中へと、足を踏み入れる。




 ピッ。



『【境界の回廊】の攻略が開始されました。』



 ピッ。



『攻略終了までの残り時間: 120:00:00』



 先ほどまでいた公園から一転して、景色がぐにゃりと変る。


 そこに広がっていたのは、神殿を思わせる遺跡群。

それは、白い石材で造られおり、所々朽ち落ちた跡が見られる。


 俺達が立つ、石畳が中央の一際大きい建物へと続く。

石畳の両脇に等間隔で並ぶ、モンスターを象った石像が印象的だった。


 時間があれば、じっくり鑑賞したい逸品だ。



「本当にダンジョンに繋がっていたのね……」



 その変化に、驚きを隠せないローズ。


 しかし、今は時間が惜しい。

せっかく助けると決めたのだから、間に合わせたい。


 着いたら全滅してましたとか、最高に目覚めがわるいだろ。



「パーティーメンバーのところまで、案内を頼む」



 そう言うと、ローズは頷き、



「あの中央の神殿から中に入るわ。ついてきて」



「ああ、わかった」



 それを合図に、俺達はダンジョンに向けて走りだす――

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― 新着の感想 ―
[一言] 異世界人がダンジョンからほいほいこっちの世界に来られるのに、そういう感じに話が膨らまないので勿体ないですね。
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