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一人、ゲームな魔術学園  作者: 結城 睦月
序章 : 異世界新生活編
9/40

第九話 学園案内ツアー

「そこまで!」


 突然その一言と同時に一人の金髪の女子生徒が睨み合う両者の間に瞬間移動で現れた。一瞬のことで周りの野次馬も含め全員驚いた。よく見てみればその女子生徒というのは生徒会長ステラ=ローレンスだった。この世界には時空間に関する魔術は存在しないから、今のは先天()()能力()だろう。


(流石は全校生徒のトップに立つ生徒会長と言うべきか)

「生徒会長が何の用だよ」

「何の用って、面白……じゃなくて、喧嘩を止めに来たんです。学園内での無断の戦闘は禁止されています。きっと話し合いで解決できるはずですよ。私に話してみて」

「チッ……」


 舌打ちしたガルフを尻目にオーギュストはステラに状況を説明し始めた。


「生徒会長、このガルフという生徒が言っているのは、『どうして魔術学科の教室が手前なんだ』ということです」

「どうしてって言われてもね〜」


 ステラは人差し指を頬に当てて小首をかしげた。そして、一つの可能性を見つけ出した。


「……あっ、もしかしてガルフ君、二つ上にお兄さんかお姉さんいない?」

「いるけど、それが何だって言うんだよ」

「やっぱりね」

「は?説明しろよ」

「今の三年生だけ剣術学科の教室が手前側なのよ。これの決めた方はね、その年の新入生代表の子が魔術学科か剣術学科、どちらに在籍しているかで決まるのよ」

「そんなこと何処にも書いてなかったじゃないか」

「だって、そんな小さな事で怒る人なんて今までいなかったんだもん」


 その一言でガルフを正気に戻らせた。やっと自分の器の小ささに気付いたのだ。そしてばつが悪そうに何も言わずβ(ベータ)組へと戻っていった。


「これで一件落着ね!さぁみんなも自分たちの教室に戻って」


 あれだけ怒っていたガルフをたった一言で正気に戻したことにみんな感心していた。これでまた生徒会長の伝説が一つ増えたものだ。


「君たちも早く教室に入りな〜」


 教室からルイたちを呼ぶ声がした。その声の主は巨乳の先生だった。先生はずっと教室の中にいたのだが、誰一人として気付いたものはいなかった。影が薄いということではなく、風魔法の応用技で、自分を姿を透明にする魔術と自分の気配を周りに分散させる魔術を使っていたからである。


(いたのなら、止めればよかったのに)


 とルイだけでなく、みんな思っていた。先生が止めに入ればすぐに終わっていた話だろうが、そうしなかった理由は、自分たちで解決できるかどうかを見ていたのだ。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「えー、改めまして入学おめでとう。まず最初は軽く自己紹介からしようかな」


 と先生は言うと一度軽く咳払いをした後、再び口を開いた。


「ご紹介に預かりましたのは私、セルティア=ヴァーバスといいます。今日からみなさんの担任ですよー!基本的に在学中の四年間はずっと一緒だからよろしくね。次はみんなのことを聞こうかな。じゃあ廊下側の一番前の子から」

「はいは〜い!」


 と元気よく手を挙げて立ち上がったのは桃色の長い髪をした女子生徒だった。


「私はエレミー!得意な魔術は水魔法で〜す。これから四年間よろしくね!」


「私の名前はアリス。アリス=ミュルヘンといいます。このクラス全員と仲良くしたいと考えてますので、皆さんよろしくお願いします!えっとえーっと……得意な魔術は雷魔法です。よろしくね」


 一人目が終わると二人目、三人目とすぐに次の人へとバトンが渡った。そして(ようや)くルイの番が回ってきた。


「俺の名はルイ=エルフォード。得意な魔術は……そうだな、一番は重力魔法かな。これからよろしく」

「重力魔法!?」「マジかよ……」


 ルイの自己紹介についてクラスのほぼ全員がざわついた。みんなが注目した点は重力魔法だ。


 十の属性うち光と闇を除く八つの属性の中で重力魔法が一番扱いが難しいのだ。そんな難しい魔術を入学する前から習得するのは並大抵なことではない。

 なぜなら、“重力”という目に見えない物のイメージを確立しないと話にならない。しかし、ルイの前世は高校生だ。当然、重力については物理の授業で勉強していたから理解することが出来た。ルイが初めて勉強していて良かったと思ったのもこの時である。



「じゃあ次は私ね。私の名前はノア=エルフォードです。“エルフォード”ってところから分かると思いますが、さっき自己紹介していたルイというのは()()お兄ちゃんです。私の宝物はこのクマのぬいぐるみの“みーたん”です!得意な魔術は水魔法です。よろしくね☆」


 その後も自己紹介の時間は続き、四十分くらいかけて全員分が終わった。


「全員終わったね。じゃあ今日は簡単な説明だけにしようか。この後は学園内の施設の案内をします。その後は二十二時まで自由時間です。寮に戻って休んでも構いませんし――」

「せんせー、寮の部屋って大部屋ですか〜?」

「いいえ、部屋は一人一室あります。今週は部屋は決められた場所ですが、来週行われる前期階級戦。通称【新年祭】で勝ち抜けば、S級一位のランクを取った人から順に好きな部屋を決めれますよ。だから仲のいい友達と近くの部屋になりたいんだったら、出来るだけ上のランクを目指した方が何かと得ですよ」

「ありがとうございます」

「他に質問はありますか?」


 セルティア先生は全体を見回し手を挙げている生徒がいない事を確認する。周りをよくみるとても良いの先生ようだ。


「無いようなので、話を進めますね。えーっと、明日の予定ですが、明日は体力テストがありますので、身体は休めた方がいいですよ。では学園の案内をしますので、先生の後を付いてきてくださいね」


 その号令とともにα(アルファ)組 三十二名は椅子から立ち上がり、廊下に整列した。

廊下に男女二列で並ぶと、ルイのすぐ後ろの赤い短髪の生徒が声をかけてきた。


「よっ、お前重力魔法が使えるんだってな!」

「誰?」

「おいおい、俺の自己紹介を聞いてなかったのかい?俺はフェデル=へンデュークだよ!」

「あ〜ぁ、そんなことを言ってたやつがいたな」

「俺だってば。それにしても銀眼とは珍しい色をしてるよな。妹ちゃんは普通なのに」

「そうか?まぁノアと比べるとそうだな」

「なにせ銀眼には、神様の祝福があるという逸話があるくらいなんだから」

「そうだったのか。……お前こそ、その右眼はどうしたんだ?」


 フェデルの右眼には縦に深い傷跡があり、右眼をずっと閉じている。そんなことを聞くのは野暮かもしれないが、ルイは口が滑ったかのように聞いてしまった。しかし、当の本人の反応は明るいものだった。


「これか?これは小さい頃()()()()にやられたんだよ。……どうだ?一周回って格好良いだろ?普通こんな特徴的なやつを忘れるかよ」

「確かに。すまなかったな、覚えたぞイデア」

「フェデルだよ!」


「そこのフェデル君静かにね。では、こちらで〜す!」


 とセルティア先生はバスの添乗員のように何処からか旗を取り出し案内を開始した。


(この世界、面白れぇな)

やっとこの物語のメインヒロインとなるアリスが(少しだけだけど)登場しました!

メインヒロインの立ち位置はノアみたいですけど、挽回できるかな…

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