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一人、ゲームな魔術学園  作者: 結城 睦月
序章 : 異世界新生活編
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第七話 暖かな春の訪れに

「やっぱり、さっきのは父さんが可哀想だよ。ノアのブラコン度は俺もよく分かってるからさ、あの時くらいは優しくしてあげても良かったんじゃないか?」

「お兄ちゃんがそこまで言うのなら、あとで手紙でも送っておこうかな」


 移動中そんな会話をしていると、ふとルイは前世の両親を考えてしまった。俺が死んだ時に悲しんでくれたのだろうか。こんな親不孝者な俺でもちゃんと――。



 なんとか入学式の開始時間には間にあったようで、まだ中へと入っていく新入生の姿もチラホラと見える。


「間にあったみたいだね。さすがお兄ちゃん♪」

「だいぶ飛ばしたからな」

「お疲れ様」


 エクシード魔術学園の正門まで来ると使っていた重力魔法を解除してゆっくりと地に降り立った。入り口までの道のりで在校生の先輩達が祝っている。

 そんな祝いの言葉のトンネルを通り抜けると、入学式の会場でもある第一体育館へと着いた。


 体育館の中にはたくさんの椅子が綺麗に整列されていて、各々の合格通知に記載されていた番号と席の背もたれの部分に貼られた番号とを見比べて自分の座席に座る。


「そういえばお兄ちゃんは、何番だったの?」

「“003”。ノアは“013”だろ?ちょっと席が離れるな」

「えー、嫌だ〜」


 離れると聞いただけで本当に嫌な顔をするノアだが、本当に駄々を捏ねだしたら収拾をつけるまでがまた長くなる。


「同じ空間にいるわけだろ?いいじゃないか、ノアの座席の方が俺の後ろなんだから見ていれるぞ」

「……それもそうだね、じゃあまだ後でね」


 ルイは駄々を捏ねられずに済んでホッと胸を撫で下ろす気持ちになった。


 この座席順は入試時の結果で割り当てられている。入試試験は筆記試験と面接だけであるから、前世の高校入試とほぼ同じである。ルイとノアは専属の家庭教師と言っていい程の教えるのが凄く上手な母アリアがいた。ユーリは魔術学園を卒業していないため魔術に関してはからしきであるが、その変わりに剣術などの武術を教えてくれた。

 そんな優しく徹底した親の支援があったお陰で合格出来たと言っても過言ではない。

 もし、入試試験に魔術の実技試験があったらなら、間違いなくルイが一位になっていただろう。何しろ入学するまでに勉強し習得した魔術が多いのだから。



 暫く待つと入学式が始まった。会場の照明は落とされ、ステージの隅の司会者にスポットライトの明るい光が当てられる。


「これより第九十六期生入学式を始めます。まずは新入生代表の言葉。新入生代表、オーギュスト=アルフェン」

「はい!」


 大きな返事をし一人の男子生徒が落ち着いた様子でステージの上に登壇していった。彼が今年の入試の筆記試験で満点の成績を叩き出した新入生である。

 ルイは自分に関係ないと思ってしまった途端、ルイは眠気を感じていた。


「暖かな風に誘われ桜の蕾も開き始め、私達は無事にエクシード魔術学園の入学式を迎えることが出来ました――」


 立派な定例句だな、としかルイは思わなかった。新入生代表の挨拶でいうことは世界が変わっても同じことである。


「ありがとうございました。続きまして在校生代表の言葉、生徒会会長ステラ=ローレンス」

「はい!」

(早く終わんねぇかな)

「なぁ、あの生徒会長可愛くね?」「あぁ。まるで高嶺の花だな」


 心の中で『早く終われ』と願うルイの後ろの座席の男子達が何やら小声でひそひそと話していた。

 登壇したその生徒会長をよく見れば容姿端麗で金髪のウェーブを(なび)かせている。確かに可愛いと思うのも仕方ないかもしれない。それでいて、とても凛としている。


「――このエクシード魔術学園に入学して良かったと思ってもらえるよう私達も精一杯頑張りますので、新入生六十四名の皆さんも勉学に励んでください」

(六十四名?ちょっと少なくねぇか?田舎って訳でもないのに)

「改めて入学おめでとうございます。あと、毎年新入生の方には言うのですが、魔術学科と剣術学科に分かれる訳ですが、問題を起こさず仲良く生活してくださいね。以上をもって生徒会代表の言葉とさせて頂きます」


 ルイが驚くのも無理はない。前世の通っていた高校は一学年二一六名の全校生徒六五〇名くらいだったからとても少なく感じた のだ。決して別に田舎の学園という訳では無い。


「最後に学園長のお話です」

(まだあるのかよ……)


 学園長と思われる二十代後半の男性が舞台に上がった。一番前の列にいるというのに明らかに嫌そうな顔をしたルイだが、それに関係なく学園長の長い話が始まった。


「えー、ご紹介に預かりました私がこのエクシード魔術学園の学園長のアルフレッド=シーレンです。この学園は九十六年の伝統ある学園であり――」


 まだ始まったばかりだが、あまりにもつまらない話が始まりそうで、ルイは強烈な睡魔に襲われ寝てしまった。座ったまま(うつむ)いた状態だから他の先生にバレることはなくゆっくりと夢の世界へ入ることが出来た。先生にバレないように寝るのは前世の高校でも集会のあるたびにやっていて、最早ルイの特技の一つになっている。



 学園長の話は二十分にも及ぶ長過ぎるものだったが、それもようやく終わった。ルイは終わったことにも気付かずまだ夢の中にいる。

 入学式を終えた生徒達は続々と体育館を後にしていく。

 誰も居なくなったとは言え隣の椅子に身体を倒して寝ているルイを見兼ねたノアは起こしにいく。


「ちょっと、お兄ちゃん?起きて」

「……うぅん?朝か?」

「寝ぼけないでよ。入学式終わったよ」

「やっべ!ガチで寝てたのか!?」

「もうみんな行っちゃったから、私達も行こ?」

「手間かけさせたな」


 その言葉にノアは振り向いてニコリと笑顔を見せた。

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