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一人、ゲームな魔術学園  作者: 結城 睦月
序章 : 異世界新生活編
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第六話 ドジな妹ほど可愛いものはない

 七歳の誕生日からはまただいぶ月日は流れ、二人とも今年で十五歳になろうとしていた。


 二人ともだいぶ成長して……。いや、妹のノアは同年代の子と比べても、背が低く胸もないに等しい。ルイはそれを毎日見ていたせいなのか、いつしか貧乳好きなっていた。


 そんな事はどうでもいい。

 十五歳といったらこの世界では、魔術学園に入学試験が受けれる年齢だ。そして、既にルイとノアはその試験に魔術課程の方で合格している。それは一週間前のことだ。

 ルイはその年のトップクラスの成績を収め楽々合格した。ノアは可も無く不可も無くといったところで合格した。別に合格できるだけで凄いことなのだ。二人が受験した学校は“エクシード魔術学園”という限られた人数だけが入学できるエリート校で毎年定員が六十四名だけと、非常に少ない狭過ぎる門である。そこはユーリとアリアが八年前に言っていた通わせたいという学校だ。ちなみに母アリアの出身校でもある。


 そして、今日エクシード魔術学園の入学式がある。その学校は全寮制であるため、今ルイとノアは荷物をまとめている。


「二人ともー?そろそろ準備出来たかしらー?」

「「まだー」」


 と下の階から飛んでくるアリアの声に、新しい制服に身を包んだ二人が息ぴったりで応えた。制服は黒を基調としたブレザーで縁に白いラインが入っている。男子のズボンは黒だが、女子のスカートは白に黒の翁格子(チェック)柄である。そして右肩の部分に青い長方形のバッチが付いている。


「まだ」と応えたもののルイはほぼ荷物はまとめ終わっていて部屋の入り口の扉にもたれ掛かっている。それに対してまだノアの方が準備出来ていなかった。ノアの苦手なことの一つが整理整頓なので、ルイが代わりに部屋を整頓すると何処にあるのか分からなくなるという。とは言っても誰でも分かりやすいように収納しているはずなのだ。


「もう出発する時間になるんだけど」

「待って〜!重要な物がないの、お兄ちゃんも手伝って?」

「いいけど……今回はなんだ?ハンカチか?水色の髪留めか?」

「ハンカチは要らない。髪留め(ヘアピン)は左のこめかみところに付けているでしょ?」


 「ほら」と、言うようにノアは顔だけをルイの方向へ向けて髪留め(ヘアピン)を指さした。ルイにはずっと背中ばかり向けて探しているから分からないのも当然だ。


「じゃあ、何がないんだ?」

「学生証」


 学生証。それはこれから通う魔術学園の生徒であることを証明する大事なものである。今日から在学するエクシード魔術学園は学園都市であり、都市内の店で現役学生は学生証を見せれば割安にしてくれる、などと色々便利なのだ。

 凄く重要な物をなくしたのならば大変なことだ。事件に使われるかもしれない。もし、そうなったらノアも罰金を払わないといけなくなってしまう。


「最後に見たのはいつだ?」

「昨日の夜。机の上に置いておいたはずなのに」


 その後も部屋中探し回るがなかなか見つからなかった。ルイは念のため手の届かないようなところも見ておくことにした。椅子を使って高いところを見ている時それは起こった。


「うわっ!」

「……えっ、わ!」


 あろう事か足を滑らせて机の中まで探していたノアの方に倒れてしまった。


「イタタタ……」


 このパターンは何度も起こることだろうか。ルイの手はノアの左胸にすっぽりと収まっていた。このラッキースケベを思わせるような現象にルイは自然に揉んでしまった。


 しかし、それで気付いたことがある。それは左胸のポケットの中に何かカードのような薄い長方形があるのを感じたのだ。


「もしかして……」


 すぐさま妹の胸ポケットからそのカードのような物を取り出すと、そこには異世界の文字で【エクシード魔術学園 学生証 第一学年】と書かれたカードが出てきた。


「おい、ノア」

「は、はい!」

「ここに学生証が入ってるんだが」

「ワー、コンナ所ニアッタンダー」


 と明らかにお兄ちゃんから目を逸らし棒読みで話すノア。

ルイは呆れた感じで立ち上がって、まだ横になっている状態のノアに手を差し伸べた。ノアは少し反省しつつその手を掴み、引き寄せられ立たしてもらった。


「まったく……、入学式まで時間がないんだぞ?」

「そこはお兄ちゃんの力で」


 ノアの言っている“お兄ちゃんの力で”というのはルイが得意とする魔術、【重力魔法】のことだ。



 この世界には大きく分けて十の属性が存在する。それぞれ、炎、氷、風、土、雷、水、重力、無属性、光、闇がある。炎は氷に強く、氷は風に強く、風は土に強く、土は雷に強く、雷は水に強い。光と闇は相互に強く、重力と無属性は独立している。そして、光は伝説級で使える者が数少ないが、闇は絶対に人が使えるものではない。


「りょーかい。で、もう行けるか?」

「うん、大丈夫だよお兄ちゃん」


 そういうと部屋を出る前に七歳の時に誕生日プレゼントとして買ってもらったクマのぬいぐるみを大事そうに抱いて親指を立てて、グッジョブと合図した。


 結構時間が掛かったなと思うだろうが、これでも早い方である。いつもだとあれが無い、これが無いと三十分以上掛かる上に女の子としての準備もある。

 ちなみに今日は、女の子としての準備を先に済ませていたからもう完全に出発できる体制である。

 既に玄関にはユーリとアリアが待っていた。


「もう行くのね」

「三年間、家が寂しくなるな〜」

「止めてよパパ、行きにくいじゃん」


 三年間会えなくなるというような事をユーリが言っているが、ほとんどその通りである。エクシード魔術学園は全寮制になっている。しかし、ユーリが言っていることには少し間違いがある。


「年に二回は家に帰って来れるんだから、そんな顔するなよ、父さん」

「そうよあなた、忘れたの?」

「な、んな訳あるか!……お、そのクマのぬいぐるみ。それを俺と思って向こうでも頑張ってな」

「違う、これはパパじゃないの、お兄ちゃんなの!」

「……“みーたん”だろうに」


 その発言に一瞬、家族全員(勿論ノア以外)が固まった。

 ぬいぐるみを買ったユーリよりもそれを選んだルイの方を言われて、必死にルイが落ち込まないようにフォローしたのだが、ユーリはまた一段と肩を落としてしまった。


「ノ、ノアは凄くお兄ちゃんが好きなのね〜」

「うんっ!大好き」

「時間も迫っていることだし、そろそろ行くよ。行ってきます」

「行ってらっしゃい」


 両親に背を向けると、ルイはノアを脇腹に抱えこんで魔法を発動した。


「重力魔法、浮遊(フライ)

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