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一人、ゲームな魔術学園  作者: 結城 睦月
序章 : 異世界新生活編
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第四話 心地よい朝のうちに出発

 あれから月日は流れ、ルイとノアが生まれてから今日でちょうど七年目を迎える。

 現世では小学校通っている頃だろうか。しかしこの世界には小学校というものはないようだ。


 ルイにはこの七年間はとても長く感じた。毎日毎日、早く魔法を使ってみたくてうずうずしていたのだ。しかしこの世界には七歳になるまでは魔術などの類を使ってはいけないという決まりがあると、アリアはよく言っていた。それについて疑問を抱いていたが、決まりには素直に従ってきた。


 しかし、それも去年までの話。何故なら今日、七歳の誕生日を迎える年に“ギフト”というものを調べるという一大イベントがあるのだ。

 これは現世でいう七五三並みの重要なイベントである。七歳になる子供を教会に連れていき、ギフトがあるかどうかなどを測定したりする行事だ。たとえギフトが無くとも、魔術を使用する権利は与えられる。


 そもそも“ギフト”とは、先天性能力のことである。 詳しくは読んで字の如く、この世界ではギフトは生まれた時に既に備わっている能力のことで、生後に覚えることは絶対に出来ないという特別な力のことである。また、その能力が使える人は数少ないため、ギフトを持っている人は“エリート”と呼ばれたりする。ちなみにギフトの名前の由来は、『神様からの贈り物』ということらしい。


 魔術の類は使ってはいけないが、聞くだけなら無料(ただ)だ。だから、このことについてもアリアやユーリからよく話を聞いていた。

 とは言ってもユーリの職業は剣士であるから、魔術についての知識はからっきしである。一方でアリアは一級魔術師という職業であり、魔術についてはとても詳しい。



 そして今、ルイとノアは教会に行く準備をしている。ルイは黒色の制服に、ノアは白色の制服と黒色のスカートに着替えている。


「ノア、準備出来た?」

「まだ〜、あとリボンだけなの。お兄ちゃん、リボン結んで?」


 ルイのすぐ後ろで着替えている妹のノアは甘えるようにお兄ちゃんに(すが)る。それぞれに全身を映すくらい大きなスタンドミラーがあるのに。しかしルイは妹の頼みを快く受け、ピンクのリボンを結ぶ。そして、肩をポンポンと軽く叩いて、


「似合ってるよ」


 と言う。すると、ノアはルイから目線を逸らし俯いて、少し顔を赤らめた。


「お兄ちゃんも……、格好良いよ」


 そんな付き合ったばかりのような恋人みたいな雰囲気の中にアリアの声が下の階から聞こえてきた。


「そろそろ行くわよー?」

「もう少しで行くから、待っててー!」


 と、ルイが言うとノアも我に返ったかのようにすぐに支度をした。ルイは部屋の入り口でそれを待っている。お兄ちゃんを、家族みんなを待たせる訳にはいかないと、ノアは急ぎ過ぎて床に落ちていた真っ白なハンカチで足を滑らせる。それを見て「何をしているんだ」とルイは手を額に当てて呆れ返った。


「イテテテ……。あっ、ハンカチあった!」


 と今見つけた、自分が転ぶことになった原因のハンカチを拾い上げて「にひー!」と満面の笑みでルイに向ける。


「早くしないと、置いてかれるよ?もうそれで準備出来たの?」

「うんっ♪待っててくれてありがとね、お兄ちゃん」

「それはママとパパに言うべきだよ」


 二人は急いで階段を駆け下り、玄関の木の扉を開ける。


「ママ、待っててくれてありがとっ」

「あら、突然どうしたの?今日はノアとお兄ちゃん、あなた達が主役なのだから同然よ。さぁ、馬車に乗って。もうパパは乗ってるから」

「うんっ♪」


 ユーリは今日の日のために白馬の馬車を借りていた。白馬の馬車はお祝い事などの特別な日にしか乗らないものだ。貴族とかなら話は別だが。

 ノアはそんな特別な存在である白馬の馬車に走って駆け寄る。


「そんなに急ぐと転けてしまうわよ?」


 駆け寄るノアの後ろ姿を見ながら、とても軟らかな声で注意をかけた。


「ママ、なかなか僕のネクタイが結べなかったんだ。どうかな?うまく結べてる?」


 ノアのフォローを軽くしながらも、フォローだと気付かれないように、ルイはさり気なく話を逸らす。前世の記憶を引き継いでいるルイにとってはネクタイを結ぶのは朝飯前だった。なにせ二年半毎朝同じように結んでいたのだから。しかし、この世界ではネクタイは初めてのことだ。母アリアにその話をしても何も可笑しくはなかった。

 そもそもアリアは別に怒ってもいないのだから、そんなフォローは必要なかった。


「うん、今日は一段と格好良いわよ。さぁ、ルイも馬車に乗りなさい?」

「分かったよ、ママ」


 そう優しく言われ、ホッと安心するルイ。アリアはとても優しい。もちろん父のユーリも優しいのだが。

 馬車に行くとノアが白馬に餌を与えていた。


「馬さん、今日はよろしくね〜」

「おっ、ルイ。お前も餌やりどうだ?白馬に餌をあげれるなんて滅多にないぞ?」

「僕はいいよ」

「えー、お兄ちゃんも一緒にあげようよ」

「ほら、可愛い妹ちゃんからも誘われてるぞー?」


 ユーリは微笑ましいような目でルイとノアの二人を見て言った。その目はどことなくにやけて見ているように感じる。


「……。じゃあ、あげようかな」


 そう言うとルイは馬の正面へと向かう。ノアから餌である野菜を少し分けてもらい、それを馬の口元に近づけてやる。すると、白馬は美味しそうに食べた。


「馬さんも、お兄ちゃんから貰えて喜んでるよ」

「意外と可愛いかも。今日はよろしくね」


 とルイは頭を撫でてやると、馬は前脚で足踏みをした。


「馬さんへはもう挨拶は済んだ?」


 と後ろからアリアの声が聞こえてきた。ルイたちが振り返ると、玄関の扉を閉めた鍵を鞄の中にしまいながらみんなの元にやってきている。


「さて、そろそろ出発しましょうか?」


 アリアの声でみんな馬車に乗り込んだ。目的地は街の東側にある教会まで、ゆっくり揺られることになる。

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