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一人、ゲームな魔術学園  作者: 結城 睦月
第一章 : 新年祭編
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第三十七話 早とちりの原因

 ノアが外で待っている人というのは、予想だにしていなかった人物だった。


 俺は寝巻きから制服に着替え、跳び跳ねた寝癖も整え、扉の外で談笑するノアと合流した。

 部屋の扉を開けるまでそこにいるのはてっきりアリスだと思っていた。

 フェデルではないとだけは確信していた。あいつならノアと一緒に部屋に入ってきて、寝ている俺を起こすだろうから。実際そうだった。

 その点アリスはまだ俺たちと完全に慣れていないのか、律儀に部屋の外で待つだろう。


「あ、おっはよーございまーす!」

「お、おはよう」


 この朝からハイテンションで元気に有り余る少女は、昨日馬鹿なフェデルに見事勝利したエレミーである。

 俺は困惑した表情でノアを見つめ、そして手招きする。

 近くに来た妹の肩を掴み、小声で話す。


「聞いてないぞノア。一緒に観戦する友達がいるなら俺は本当に観に行かなくて良いじゃねぇかよ」

「そんなこと言ったら、いつまでも寝るでしょ?それはダメだよ」

「そうですよ()()()()()

「お兄ちゃん!?」


 俺とノアとの会話に割り込むようにして、加わるエレミー。

 今君について話してるんだから、勝手に入ってくるなよ。


「ノアノアがそう読んでるから、私も真似てみました。良いですよね兄妹。私も兄がいたらなー」

「ノアノアって……」


 (ノア)とこのエレミーは昨日仲良くなった筈。いつの間にそんなニックネームを付けるような関係になったのか。

 妹ながらその友達作りの早さには、驚かされる。一方でエレミーもまた友達作りが上手なのだろう。

 ……眩しいわ。


「仲良くなるにはまずあだ名から、ということでノアちゃんにはノアノアの呼び名を与えました。もちろん本人同意の元です」

「同意を取ったのか」


 一つ分かった。

 エレミーみたいな明るすぎるやつは、眩しすぎて苦手だ。だって人生楽しそうで、とても羨ましい。

 見習いたい。


「話は戻すけど、今日は俺にも予定があるんだぞ?」

「三時まで寝る以外の?」

「あ……」


 言おうとしていたことを先取りされてしまった。流石は俺の妹。分かってやがる。

 お察しの通り実際のところは何も予定が入っていない。()()()入れていないのだ。身体を休めるためにな。


「ごめん、何にも予定ないわ」

「だよね」


 ノアは安心したように胸を撫で下ろす。その様子を見ていつか見返してやると心に誓う。

 今に見てろよ。俺にも友達がいっぱいできて、ノアにも構っていられないほど忙しい日常を手にしてやる。

 この決意表明はリアルを充実したものにしてみせると決意すると同時に、友達の多い――作るのが早い――妹への嫉妬。そして心に誓わないと行動を起こせないという自分に対する惨めさを思い知った。

 何しろ決意はした。前世と同じ過ちを繰り返さないと。


「――ということでお兄ちゃん。剣術学科の試合開始まで時間があるから朝ご飯でも食べてきたら?」

「あぁ。そうだな。じゃあまた後で」


 俺は二人に背を向けて手を振る。



 食堂にやってきた俺は入口の扉を開けると、部屋の中を一望した。知っている顔を探すために。

 しかし時間も時間なのか食事をしている人なんていなかった。

 既に食べ終わって談笑している人ならちらほらといるが。

 そんな中、姿勢良く一人でぽつんと食事をしている生徒がいた。しかも俺が考案――前世から持ち込んだ――カツカレーを食べている。

 その見た目は何度も見たことがあり、何度か喋った記憶もある。オーギュストだ。


 ――あいつなら何度か喋ったこともあるし、友達百人計画をするならまずそう言った話したことあるやつから当たってみよう。


 俺は食堂で朝ご飯のパンを購入し、それを持ってオーギュストの向かいに座る。


「よ、奇遇だな」

「おはよう、ルイ。と言ってももう遅いかな」


 起きた時には既に九時を回っいたが、今はそれから三〇分も進んでいた。


「いや、俺はさっき起きたからそれでいいや」

「流石に寝過ぎだと思うよ。夜は早く寝ないと。一応消灯時間もあるんだから」

「消灯時間より早く寝てもこれだからな。仕方ないんだよ」

「僕は早寝早起きを心掛けているから、朝遅くまで寝れるのはどうしてか分かり兼ねるかな」


 早寝早起きを心掛けているという割には、どうしてこんな時間にご飯を食べているのだろうか。

 昼ご飯だとしたらそれはそれで早過ぎる。

 きっとオーギュストなりの事情があるんだろうが、俺は全く興味が無い。


「それにしては朝ご飯は随分と遅いんだな。まさか今日は予定がないからって遅くまで寝ていたのか?」


 勝手に朝ご飯と決めつけて、話を進める。興味はなくとも仲良くなるには会話を続けることが大切なのだろう。

 だからノアはあんなにお喋りなのだな。


「ルイじゃないんだからそんなことはないさ。呼び出されたんだよ」

「先生に?()()()のお前が呼び出されるとか、何したんだ?」


 俺は訪ねるとオーギュストはスプーンを口に咥えたまま少しの間停止する。


「ルイに優等生と言われるのは可笑しい話だな。君の方が成績も良いのに」


 こいつは何も知らないのだろう。俺なんかよりオーギュストの方が優秀だと。真面目なやつは人を褒めるのが上手だと皮肉にもそう思った。


「世辞なんかいらねぇよ」

「けど、呼び出しをかけたのは先生じゃない。エギルだったよ」

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