第三十五話 反省会
久し振りの更新です。
お待たせしました。
しかし、受験生の身でしてまた再び更新が止まってしまいそうです。
続きを楽しみにしておられる方、すみませんm(_ _)m
【ルイside】に戻ります。
フェデルの名誉が守られた?一体誰が誰に向けて言った言葉なのだか。フェデルは負けたんだから、名誉もクソもありはしない。
それなのにフェデルは頭を掻きヘラヘラと笑いながら、俺たち三人と合流した。
今ここは試合が終わった後のいつもの溜まり場、食堂へと移動しそれぞれ座席に座ったところだった。
「負けちった!」
座席に座るなり能天気に言うフェデルに対して、俺と俺の妹のノアはやや厳しめの口調で怒鳴る。
「何してんだ、お前。試合前の意気込みはどうしたんだよ」
「最初に私とお兄ちゃんをかけてあんなにいがみ合ってたのに、一回戦で負けるなんて有り得ないよ」
左右から挟まれるように不満を言われるとフェデルは掻いている手を止めて、真剣な表情をする。言うべき相手は左右に座っているため、どっちを向いていいのか分からず、止むを得ず正面に座っていたアリスに話しかけ始めた。
「いやな、俺だって真剣にやったんだぜ。でも結果は結果だ。その結果を受け入れて、次に繋げようぜ」
「何開き直ってるの。反省の色が見えないよ」
「けどよ、一つ分かったことがあるんだ」
俺は溜め息を一つこぼして、頬杖をついた。その仕草のせいで話を止めてしまったようだ。
俺は「どうぞ」とフェデルに発言の許可を出す。
「あのエレミーって子は、エギルの仲間じゃなかったぜ」
そんなことか。分かりきったことを言ってくるフェデルに俺は間髪入れずに「知ってる」と返答する。
拍子抜けしたのは当然彼一人だけだった。出来る妹と可憐な少女も俺と同じく呆れたと言わんばかりの顔をする。
「ど、どうしてそれを知ってるんだ?もしかして、本人から直接聞いたのか」
「本人から聞いてないといえば嘘になるな。でも直接ではなくて間接で、だが」
ヒントを教えるかのように曖昧なことな表現では、とてもこの頭の回転が遅くて悪いフェデルには伝わらない。
「どういうことなのか、もっと分かりやすく教えろよ」
「単純な話だ。エレミーが試合中に言ってたセリフの中に『別に負けても良いから相手を勝たせようとチャンスを作ってあげたのに』って言ってただろ。エギルの仲間なら俺達が悪役に仕立て挙げられて勝つためにどんな手でも使ってくる。そう思わないか?」
「なるほどな、クラス全員と仲良くなりたいって言ってたしな」
「ん?」
俺が疑問に思いフェデルに聞こうとしたが彼は既に一人で納得し、収束していた。俺の記憶ではそれは、嘘の内容ではなかったか?
何はともあれ納得したなら問題ない。エレミーはエギルの派閥ではなくフリー。むしろ、この対立に気付いていないかもしれない程だ。中立の立場に立っている以上仲間にするのは、流石に気が引ける。
これが前世ならこの対立はクラス中にまで発展し、いじめが起きるかもしれない。だが、一度世界が変わってしまえば見える世界もまた変わってくる。強いものが勝つ。すなわち弱肉強食が通じるのだ。
たしか、先日行われた体力テストの結果はエギルよりも俺の方が上だった筈だ。眼中に無い人間だからノーマークだったが。
下の者が上の者にちょっかいを出して上下の立ち位置が変わることなどそうそう無い。
「ともかくあの子が敵じゃなくて良かった〜。ノア的にはあの子とはもっと仲良くなってみたいもん」
ノアが満面の笑みで言う。席から立ち上がって食堂の扉の方へ身体を向ける。その時点でノアがこれから何をするのか直感的に分かった。
これは確実に今からエレミーに会うつもりだ。
「ちょっと待て、それをするならこの話し合いが終わった後でも良いだろ」
「もしかしてノアちゃん、今から行くつもりだったのですか?」
今までずっと黙っていたアリスが漸く口を開いた。それ程までに驚くことだろうか。
ノアの性格上思い付いたことはすぐに行動するタイプなんだが。とは言っても出会ってそんなに日が経ってないから、まだ分からないことがあっても不思議ではない。
制止と疑問を同時に言われたノアは、僅かに混乱する。
「えっと、後にするべき?」
「今行くとエレミーちゃんも休憩中だと思いますし」
「そっか。じゃあお兄ちゃん、後でエレミーっちのところに行くことを覚えててよ」
「なんで俺が」
「う〜ん、忘れそうだから?」
記憶力の弱さが問題なのか。そういうことなら仕方ないのかもしれないな。
ともあれこれで一日目のブロックが全て終了した。明日は一日休みだ。その代わり剣術学科の試合がある。それを見てもいいのだが、俺的には剣術は興味が湧かない。
話し合いの結果明日は四人とも休養ということで話が纏まり、解散した。
ノア以外は部屋に戻った。ノアはというとちゃんと忘れることなくエレミーのところへ向かったようだ。