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一人、ゲームな魔術学園  作者: 結城 睦月
第一章 : 新年祭編
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第三十一話 挑戦者の覚醒

【アリスside】


 アリスによって放たれた三つの氷柱(つらら)の塊は矢で放たれたかのように猛スピードで進んでいき、すべてリュームに当たると破裂し砕け散った。


「うわぁぁあ!!魔法でも当たるとめっちゃ痛いんだね、これ」

「どうして避けたり、魔術で防がなかったのですか。私の友達のルイくんみたいに出来ると思ったのですか?」

「そう厳しいことを言うなよ、ミュルヘンさん。それにあのエルフォードってやつだって怪我をしてたじゃないか」


 たしかにルイだって対戦者であるシターナの全力の炎魔法を防がずに食らっていた。だが、それは今のリュームとはまた別の理由があっての話だ。相手の全力が込められた魔術をそのまま受け止め、相手の戦意を諦めさせる。

 それに比べてリュームのはただ格好つけているようにしかアリスの目には写らなかった。


「私だって友達を侮辱されたら怒ります」

「そうかい。じゃあここは一つ怒らせてみるというのも有りかな?」

「ふざけないでください」

「僕はいたって真面目さ。ふざけてるつもりはさらさらないさ。……さてと、長話をしていても観客席のみんなが飽きてしまうだけだしね。そろそろもう片方の手も使えなくしてあげようかな」


 リュームはアリスが片手で胸の部分を隠しているところをじろじろと見始めた。試合開始の直後の性格と比べても明らかに、性格が悪くなっている。これがリュームの本心なのかとアリスも流石に疑ってしまう。それは観客席にいたルイでも察することが出来たほどだ。


「これが戦いである以上すんなりと負けるわけにはいかないことくらい分かりますよね?」

「実力の差というものを見せてあげるよ。土魔法、土竜」


 リュームがそう唱えるとモグラではなく、土を固めて作ったドラゴンが彼の背後から現れた。それはどんどんと伸びていき体育館の天井くらいと同じ高さにまで到達した。


「土竜、突進して()ね飛ばせ!」

「風魔法、カマイタチ!」


 アリスは手の空いている方の手を前に(かざ)し緑色の魔法陣を展開する。魔法陣から刃物ののような切れ味を持った風が幾つもの相手に向かって飛んだ。

 だが、実際はリュームが出した土竜によって防がれたがそれでも相殺することには成功した。


「攻撃系の魔法で攻撃系の魔法を相殺するなんて考えたね。あれかい?『攻撃こそ最大の防御』ってやつ」

「数で押すつもりでしたがそう簡単には行きませんね」

「まぁー、片手と両手とじゃあ威力にも関係してくるからね」

「私のこの状態はやはりリュームが仕組んだ作戦のうちですか」

「あ……いや、それは本当に偶然だっただが。だが、その偶然をも自分の有利に使う。これもまた戦いにおいて重要なことだと思うぜ?」


 リュームの言葉を聞いてアリスは黙りこくってしまった。言っていることはもっともなことであると納得してしまったからだ。実際にガイストと戦うことになったら相手の卑劣さにいちいち文句を言っていたらきりがなくなってしまう。そんなことはやはり水に流してしまった方がいいのかもしれないと(うつむ)いて考えた。

 そして、何かを決心したかのように破れた制服を隠していた手をすっと下ろした。


「ん、どうしたんだい?戦意喪失しちゃったのか――」


 ゆっくりと顔を上げ相手の目を見た。その目には殺気の色すら見えるほど鋭いものだった。優しい表情をしていたアリスとは打って変わって突然のアリスの覚醒にリュームはたじろぐ。


「なな、何だ!さっきまでの君の温厚さは何処へ行ったんだ!?」

「もう下着一枚で相手の手の中にいる感じが馬鹿馬鹿しくなったので、少々本気を出そうかと」

「下着一枚?その破れた制服のことは水に流しておいてくれたんじゃ……?」

「それは自分で言うから良いけど、他者から言われると(しゃく)(さわ)ります」

「つつつ、土魔法、石の弾丸バレットストーン!!」


 何歩か後退しつつも魔法を唱え反撃のチャンスを伺っているのか。茶色の魔法陣から小石を無数に作り出しそのすべてを対戦者であるアリスに向けて放たれた。そのスピードは分厚い鉄板にも穴を開けれそうな速さだ。その軌跡を目で追えたとしても避けることが出来ない、まるで銃の弾丸と同じだ。


「ガブッ!」

「……は?魔法を――」


 アリスの魔法の防ぎ方にリュームだけでなく観客席で驚愕した。その中には当然アリスと仲良し組のルイたち三人も含まれていた。

「魔法を食っただと!?」

「アリスちゃんの先天()()能力()って……」

「何も聞いてないから詳しくは分からないけど、たぶん――」


「私の先天()()能力()はすべてを食らう。魔法でさえもです」

「ギフト持ちだと?そ、そんなの聞いてないぞ、エギルめ……」

「氷魔法、氷柱(つらら)凍結」


 両手を前に出し魔法を唱える。片手と比べるとかなり大量の魔力を使える分、アリスもこれで決着をつけるつもりなのだろう。

リュームの足元から身体全体を覆うような大きな氷柱(つらら)を作り動きを封じた。とそこへ中央から審判役の先生がやって来て、


「試合終了!勝者、抽選番号九番、アリス=ミュルヘン!!」


 と号令をかけられた。観客席に座っていたルイたち三人もそれ以外の生徒も席を立ち上がり歓喜を上げた。


「アリスちゃんすげ~!」

「凄い先天()()能力()だったな」

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