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一人、ゲームな魔術学園  作者: 結城 睦月
第一章 : 新年祭編
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第三十話 氷の挑戦者

「やっぱ、観客席ってこんなんだよな」


 俺は溜め息混じりに小言を漏らした。映画館や新幹線のゆったりした座席ではなく野球場などで見られるあの固く横に長い椅子だ。


「何か不満なのか?ルイ」

「いや何。固い椅子って何処行っても観客席って名前が相応しいなって思っただけだ」

「何言ってるかさっぱり分かんねぇけど、まぁ座ろうぜ」


 俺ら三人は空いている席に適当に座った。


「アリスは待合室か?」

「たぶんね。さっき目が逝った変な先生に呼ばれてたし」

「絶対ヤバいやつだろ、それ!変態じゃねぇの」

「本当にこの学園の先生なのかそいつ」

「先生じゃなかったら流石にヤバいから」


 たぶん危険はないだろう。そう思うしかなかった。

ここは第一体育館。今まさに抽選番号七番と八番の生徒が真剣勝負を繰り広げていた。


「氷魔法、アイスニードル!」

「無属性魔法、シールド(アンド)スピアー」


 飛んできた細い氷の針状の物を魔法で防ぎ、もう片方の手で槍を作り出しそれを相手に向けて放った。


「く……っ!」


 男子生徒が飛ばした(スピアー)が綺麗に決まった。そしてそこで試合終了の号令が掛けられた。俺の時は最後まで戦ったのに何故この試合は途中で止められたんだ?


「魔力切れだってよ」「なんだよ。自分の魔力くらいちゃんと管理しとけよ」


 と隣の席の生徒がつまらなさそうに話し合っていた。盗み聞くつもりはこれっぽっちも無かったが、隣の二人の声が大きかったから聞こえてしまったのだ。


「見に来たらすぐに終わっちまったな」

「そうだね、お兄ちゃん。次はアリスちゃんの試合だよ。一生懸命応援しないと」

「そうだな。けどここだけの話、フィールドに立ってみると観客席の声援なんてあまり聞こえないかったぞ」

「な、何だと!?」


 ノアに話をした筈なのに一番に食い付いたのは俺の隣に座っていたフェデルだった。


「声でけ――」

「俺、お前の試合の時めっちゃ応援してたんだぞ?なぁ、ノアっち?」

「う、うん。もううるさいくらいに一人だけ大声を上げてたね」


 急に話をふられてたじろいだ妹であったがちゃんと最後まで話せれた。

 というかフェデルが恥ずかしくなかったとしても、俺自身が恥ずかしいんだが。良かった~。その時は何も聞こえなくて。もし、聞こえてたら試合に集中できてなかったし、あんな勝ち方を選ばなかったかもな。


「なんだよ。聞こえてなかったなら意味ねぇじゃんかよ」

「そう落ち込むなってフェデル。お前の熱意は結界越しからでもちゃんと俺の心に伝わってたからさ」


 まぁー、そんなわけないが。そんな励ますためだけについた嘘を聞いて照れながら嬉しがっている。何度も何度もこう言いたくはないが、言わざるを得えないのかもしれない。――馬鹿確定だよ、お前は。



 そんなくだらないやり取りをしている最中でもフィールドの状況は展開していく。次の対戦者が、フィールドに出ていて番号と名前が発表をされていたのだ。


「抽選番号九番、アリス=ミュルヘン対抽選番号十番、リューム=ウォールッシュ――両者、戦闘始め!!」


「がんばれ~!アリスちゃ~ん!!」


 俺の横にはさっきの話の内容をすっかり忘れてしまった馬鹿みたいな男が一人、全力でアリスを応援していた。


「静かになれって、どれだけ叫んだってどうせ聞こえてないんだから」

「聞こえてなくても気持ちは伝わってるんだろ?だったら一生懸命に気持ちを届けるまでだ」


 熱苦しい。だけど、それも一理あるなと思ってしまう。

 もうフェデルのことは放っておいて試合観戦に集中することにした。戦闘開始の合図が成されたと言うのに二人とも動かずに何かを話しているようだった。だが、両者普通のトーンで話しているため、観客席(ここ)まで声が届かない。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

【アリスside】


「なんだ~、僕の対戦相手は女の子だと言うのかい?なら決着はすぐに着きそうだね」

「そうは行かせません。私だって四日間特訓したので少しは強くなってますから」

「うん。だから結果は既に分かってるって言ってるんだよ。まぁーいいさ。なら、試合を始めようか」


 リュームが姿勢を低くして戦闘体勢を取った。それに伴ってアリスも魔法を発動する準備をした。


「いくよ!土魔法、石の弾丸(バレットストーン)

「えいっ」


 リュームが放った泥の弾がアリス目掛けて勢い良く飛んできたが、それを身を(ひるがえ)して(かわ)した。しかし続けざまに放たれた二発目には対処しきれず僅かに服を掠めてしまった。それだけでなく、掠められた部分が刃物で切られたかのように切り裂かれてしまいアリスの薄い水色の下着(ブラジャー)(あらわ)になってしまった。


「おっと、ごめん。僕はそんなつもりは無かったんだ」

「いえ、結構です。恥ずかしいですが、戦いの最中なので流しておきます」

「君が温厚な女性で良かった。並みの女性なら即刻殺しに掛かるだろうからね」

「あの……、もうそこには触れないでください。恥ずかしさが込み上げてきますので」

「あ~ぁ!本当に申し訳ない!後で何か奢らせてもらうよ」

「むぅ。……氷魔法、氷柱(つらら)投擲」


 露にされた胸を片手で抑え隠しながら、もう片方の手を前に(かざ)した。すると、水色の魔法陣が現れ、十五センチはあるだろう氷柱(つらら)の塊を三個も作り出した。それを連続で相手に向けて放った。


「やぁ!」


 放たれた氷柱の塊は矢で放たれたかのように猛スピードで進んでいき、その三つともリュームに当たると破裂し砕け散った。

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