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一人、ゲームな魔術学園  作者: 結城 睦月
第一章 : 新年祭編
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第二十七話 初めての対人戦

 手を上に(かざ)し魔法を発動する。


「炎魔法、ファイヤーアロー!!」


 シターナがそう唱え叫ぶと翳した手から赤色の魔法陣が展開される。そして勢いよく炎を帯びた大量の矢が俺に向かって放たれた。その数約二十本。そのそれぞれが一直線に飛んでくるのだ。

俺は咄嗟に防御系の魔法を使用する。


「無属性魔法、シールド!」


 咄嗟とは言ってもシールドが簡単に砕けるはずがない。だが、二十本という数に負けてか僅かに亀裂が入った。

相手もそれに気付いたのか追い討ちをかけてきた。


「まだまだ!ファイヤーアロー!!」


 さっきとは逆の手で同じ魔法を唱えるシターナ。俺のシールドに亀裂が入ったから効果的だと思ったのだろうな。だが、同じ魔法を食らってたまるかよ。


「土魔法、グランドウォール」


 最初に放たれた魔法と新しく放たれた魔法との僅かな間を狙って土の壁を下から突き出すように出した。

 俺の狙い通りに成功し、第二撃は全て防ぐことに成功した。


「同じ魔法が通用するとでも――」

「もう!なんで当たってくれないの!?」

「はっ?」


 何を言ってるんだこの子は。今は模擬戦でも練習試合でもないんだぞ?そんな真剣な状況でふざけたことを言い出すなよ。気が抜けそうになったわ。

 いや、まさかそういう作戦?


「ちょっと!うちの攻撃を意図も簡単に、余裕な表情をして受け止めないでよ!うちが使える攻撃方法なんてこれしかないんだから!!」


 マジで言ってるのか?そういう作戦とかではなく本音?戦闘中に相手に本音を語るバカが何処にいるんだよ。絶対にこれは作戦(わな)だ。


「攻撃方法がそれしかないなんてそんな冗談通じねぇよ。さっさと続きを始めようぜ」

「な、何が冗談よ!それはこっちが言いたいわ!」

「どういうことだ?」


 この広い第一体育館の端と端にいるからはっきりとは見えないが、シターナの声色から泣き出しそうということが伝わってきた。そのくらい声が震えていた。


「だってみんなたくさんの魔法が使えるなんて思わなかったもん。元々使えていたりこの四日間の間に新しい魔法を一、二個覚えてるなんて天才かよっ!けどうちは天才じゃないから勝つために試合が始まった瞬間に魔法を打ったっていうのになんで反応できる訳?意味分かんない」


 もしかして今俺逆ギレされてる?


「お前が何を言いたいのかはなんとなく分かった。けど、お前は四日間の間に何か新しい魔法が使えるよう特訓したのか?当然だが俺はちゃんとやったぞ。それは俺だけじゃないクラスみんなだ。だから今の俺らがあるんだ。天才とかじゃなくてみんな並々ならぬ努力を積んでるんだ。それを何もしてないくせに嫉妬だけするのは卑怯なんじゃないか?」

「そ、そんなことあんたに言われなくたって分かってるわよ」

「いいや、分かってない。そもそもエクシード魔術学園の生徒という自覚が足りないんじゃないのか?」


 あぁ。前世(かこ)の自分を叱っているようで気が進まない。似たようなことを前世に高校の先生に言われたな~。『努力しているのは橋宮だけじゃない。みんななんだ』とか『橋宮は高校生としての自覚が足りたない』とか。結局俺はそれにムカついてだんだん学校に行く頻度が下がっていった。

 まぁー理由はそれだけじゃないんだけど。

 さて、このシターナはどういう反応を示すんだか。


「うちだって、何もしてなかった訳じゃないし!見てなさい!はぁぁぁあ!」


 そう言い捨てると手を前に翳し手の平に魔力を込める。新しく使う魔法だろうか。力み過ぎて片方からつうーっと鼻血が流れ出し一滴また一滴と(したた)り落ちる。

 こんな必死にがんばっているんだ。さっき説教した分、その魔法を食らってやる義務があると思う。俺的に。

 つまり、無属性魔法、シールドを出さないで食らうということである。正直この世界でも火傷を負うくらい危険なことではあるが、前世ほど外傷は目立たない。


「炎魔法、フレアボールッ!!」


 最大限の力が込められた火の玉(それ)は体育館の床をバキバキと壊し、燃やしながら徐々に俺に近づいてくる。

 火の玉が目と鼻の先にまでやってくると流石に熱くなってくる。

 そしてついに、俺に当たり爆発反応を起こす。


「……ふっ、」


 白い煙が立ち込める中、俺はふらついた足に力を入れて立て直した。勿論相手に悟られないようにするための強がりに過ぎない。


「なっ……!」

「シターナだったよな。あともう少しだったな。練度が低いせいで俺を倒すことが出来なかったと思え」

「ちょ、それよりも大丈夫なの?身体」


 最大限の力が込められた魔法を防御魔法無しで直に食らったことに対して観客席は(おろ)か相手すらも心配している。

 まぁーそれが普通の反応だわな。こんなバカなことする奴にかける言葉なんて他にない。


「ちょっと痛い。というかめっちゃ痛い」

「今すぐ保健室に行ってきたら?」

「いや、いい。次の一撃で決めるから。今度はこっちの番だからな」

「番って……そんな――」


 シターナは本気で俺のことを心配しているのか。戦っている敵以前にα(アルファ)組のクラスメイトってことか。


「意外と優しいやつだな」

「なっ、何よ突然!」


 やばい。口に出してしまったようだ。シターナはというと顔を赤くして照れてしまっている。完全に乙女の反応だな。


「ごめん、口が滑った」

「その言い方だと、言っちゃいけないことを、うっかり言っちゃったって聞こえるんだけど」

「そんなつもりじゃなくて。口が過ぎた」

「おい、だから変わんないっての」


 などと少し笑い合い少し仲良くなれた気がした。

 たしかセルティア先生は、この前期階級戦は自分の実力を知るというテストみたいなものなどと言っていたが、たぶん目的はそれだけではないと思う。現にこうしてクラスメイトと仲良くなれたのだから。



「ねぇ、痛くしないでね」

「出来るだけな。土魔法、バレットストーン」


 そう魔法を唱えると拳ほどの大きさの土の塊をシターナに向けて飛ばし、無事俺の第一試合は勝利を収めたのだった。

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