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一人、ゲームな魔術学園  作者: 結城 睦月
第一章 : 新年祭編
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第二十六話 新年祭、開幕

 ノアたちと合流するために再び食堂の中に入ると先程とは打って変わって言い争っていた二人の態度が鎮まっていた。ノアは少し震えながら大好きなみーたんとお話をしている。フェデルは自分の結晶端末(タブレット)をいじっていた。画面が浮き出るスマホのようなものだが、どういう仕組みか他人からははっきりと見えないのだ。だから、あいつが今何を思って結晶端末(タブレット)を触っているのか分からない。


 ……と、思っていたら俺の結晶端末(タブレット)が反応した。一件の着信が届いていた。その差出人を見ればフェデルであった。まさか俺に向けてメールを打っていたとはな。早速中身を読んでみる。


『アリスちゃん、マジ怖い……。もしかして、ルイが何か吹き込んだのか?まぁ何でもいいから、早く救いの手がほしいんだけど!!』


 以上。たったこれだけである。だが大体のことは伝わってきた。俺がトイレに行く前にアリスにテキトーに言い争いを止めておいてと頼んだのだ。実際彼女がどういう措置を取ったのかは分からないが、二人とも相当堪えたのだろうな。先程とはまるで別人のように大人しい。というか、吹き込むとか人聞きの悪い。頼んだと言え。

 そんな空気の中では逆に戻りにくいのだけど、俺は何事もなかったかのように平然とした顔で合流した。


「お兄ちゃん!アリスちゃんが怖いことを言うの!」


 テーブルに戻ってくるなりすぐにノアが目をうるうるとさせ、言ってきた。それに続いてフェデルも、


「俺たちに『今すぐ争い(けんか)を止めないと私が食べてしまいますよ☆』ってめっちゃキュートな笑顔で告げてくるんだぜ?別の意味で怖いわー。お前もアリスちゃんを怒らせない方がいいぞ。マジで」

「私はそんな野蛮な人間ではありません。本当にフェデルは失礼な人ですね」

「仕方ないさ。フェデルは失礼極まりない奴なんだから」

「なんか俺の扱い酷くない!?ルイもそこは否定しろよ」


 フェデルは立ち上がり机に手を付いたまま前のめりになって泣き言を言う。それに対して笑う俺ら三人。とてもこれから試合をするような雰囲気じゃない集団だな。

 そんな楽しい雰囲気の上から学園内アナウンスが入った。


『第一学年の抽選番号三番の人と四番の人は第一体育館まで来て準備を開始してください』


「ねぇねぇお兄ちゃんって四番だったよね?もうそろそろだよ」


 笑いあっていた中でもアナウンス(それ)をしっかりと聞いていたノアが俺に言ってきた。それを聞き席を立って再び別行動を取る。


「んじゃ、行ってくるわ」

「ノアも着いて行く~!」

「応援してくれるのは有り難いけど、別にここでも観戦出来るだろ」

結晶端末(タブレット)の画面なんて小さ過ぎてお兄ちゃんの表情まで鮮明に見えないから嫌!」

「別に俺の戦闘時の表情なんてどうでもいいだろ。もっと全体的に見たらどうだ」

「全体的に見るんだったら、尚更(なおさら)会場で見なきゃだよ」


 それも一理あるかと納得させられてしまう。別に俺としても会場で応援されたくない訳ではない。どちらかと言うと応援しに来てほしい。主にアリスの方に……。だが、俺が魔法の戦闘に興奮し過ぎて体育館を壊したなんてことがあったら、怪我を負わせてしまうかもしれない。あんな広いようで狭い、天井のある場所での戦闘なのだから。

 俺らのやり取りを聞いていてかフェデルはニヤニヤと笑いながら、


「お前ら兄妹は本当に仲良いな。よしゃ、俺らも会場に行って応援しようぜ。ほら、アリスちゃんも立って立って」

「そうですね。仲間の応援を遠くからするのはあまり良くないことですものね」


 みんながそう思ってくれているとなると、断りづらい。ならその言葉に甘えるか。ノアたちはそんな事故で怪我をしてしまうような一般人ではないわけだしな。第一、試合を行う体育館がそんな(もろ)い筈がない。


「じゃあみんなの時もみんなで応援をするか。俺だけでなくな」

「そうですね!それが得策です」


 そうしてみんな仲良く第一体育館へと向かう。(もっと)も俺だけは待機室待ちだが。畳六(じょう)ほどの室内にたった一人で待たされる。一体この間の時間は何をするのが正解なんだ。イメージトレーニング?作戦を練る?人によってはやることは様々だろう。俺はというと結晶端末(タブレット)をポケットから取り出し弄っている。


 コンコンコン


 暫くすると待機室の扉を叩く音がした。俺が「どうぞ」というと若い一人の女性が部屋へと入ってきた。我らが担任、セルティア先生とは正反対でバシッとスーツに身を包み、背筋を伸ばして立っている。その姿はまるで何処かの社長秘書というイメージが似合う。


「失礼します。抽選番号四番、ルイ=エルフォードくんで合ってますね」

「えぇ、合ってます」

「もう間もなくですので、準備が出来次第入場ゲートまで来てください」

「いや、もう準備なら済んでいるんで一緒に行きます」

「申し訳ございません。私はただの伝言役ですので、案内役とは違います」

「そ、そうですか。ですよねー」


 ノアの呪いなのだろうか。他の女性を引き寄せないという見えない力?なわけないな。俺の可愛い妹にそんな力はない。俺が先走っただけだ。第一好み(タイプ)じゃないんだが。



 入場ゲートまでの途中の廊下で担架で運ばれる男子生徒と擦れ違った。学園生活が始まってまだ数週間しか経っていないから、クラス全員の顔と名前を覚えているはずもなく運ばれている生徒が誰か分からなかったが、同じクラスの人だということだけは分かった。いや、当然か。一学年に二クラスしか無いんだし、剣術学科の生徒なんて二人くらいしか記憶にない。


 それにしても随分と派手にやられたようだ。一体相手は誰なんだろうか。今からやる相手を倒せば手合わせできるから楽しみにしておこうかな。など思いを高ぶらせながらフィールドに出た。

先程の心配事が気になって念のため上を見ると、そこには体育館の天井はなく、澄み渡る青空が広がっていた。最初から知っていれば、ノアたちをあんな風に止めなくて済んだのに……。


「高度制限無し、か。どうやら、観客席部分には透明の結界らしき物が張られているようだし。つまりは思う存分戦える訳か」


 俺の対戦相手が向かいの入り口から競技場へと入ってきた。


「――って、相手女子かよ!?」


 肩まで伸びるウェーブがかった髪を手の甲で後ろへ流しながす相手がそこにいた。審判役の先生が間に入って紹介を始める。


「抽選番号三番、シターナ=ファーニー対抽選番号四番、ルイ=エルフォード。――両者、戦闘始め!!」

「――ちょ、待っ!」

「やぁぁぁあ!」


 シターナというクラスメイトはまだ心の準備の出来ていない俺に対して何の躊躇もなく魔法を発動し出した。

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