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一人、ゲームな魔術学園  作者: 結城 睦月
第一章 : 新年祭編
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第二十四話 先生の話゠経験論×教訓

「みんな、おっはよ〜!毎日会ってるけど 先生なんだか久しぶりな感じがするわ」


 この先生は相変わらずテンションが高い。当然昨日もその前の日もクラスのみんなと会っているし、授業もしていた。なのに変わった朝の挨拶をしてきたのだ。“久しぶり”と何故言ったのか、クラス中の全員唖然とした表情をしていた。しかし、セルティア先生はというとそんなことはお構い無しにその感情の原因を話し始めた。


「みんな聞いてよ。先生昨日ね、夕食を食べるために学園の外に出て、高い料理を食べてる最中に突然強盗か何かが押し入ってきてね、私は立ち上がって戦闘になりかけたの」


 それでどうなったのかと話の途中から俺を含めて全員が興味津々だった。眠そうにしていた数名も顔を上げ視線はセルティア先生に集まっている。


「先生は風魔法で相手を店の外に出そうとしたんだけど、相手は氷魔法を使ってきたの。さぁ、どちらが強いでしょうか。じゃあフェデル君」


 この話は昨日の出来事を聞かせるんじゃなくて問題だったのか?と思った。そしていつの間にかフェデルが当てられていた。先生に急に当てられた当の本人は慌てて立ち上がる。話の内容はしっかりと聞いていたっぽいのだが、肝心の答えが分からない様子を見せている。――俺だけに

 考えるふりをしながら俺に向かってウィンクを出している。話の中で一部の質問だが内容は常識レベルだ。一体フェデルは質問を聞いていなくて分からないのか、聞いていて答えが分からないのか。

 何にしろこのままでは一向に話が進まないのでフェデルに口パクで答えを教える。それは上手く伝わったようで答えた。これがクイズ番組かテストだったらお前は失格だぞ。


「なるほどね、簡単じゃないですか先生。そんなの氷魔法に決まってるじゃないですか〜。いくらなんでも基礎の基礎過ぎますって」


 と笑い誤魔化すフェデル。


「その通り、こんなの基礎の基礎よ。そう思うんだったらルイ君に聞くのを止めようね」

「ギクッ」


 バレてました。セルティア先生とフェデルとのやり取りでクラスのみんなが笑う。それにしても流石は先生だ。どんな細かい生徒のことでも見ているようだ。正直素直に驚いてしまう。


「フェデル君の言った通り氷魔法が強いんです。ですが、その場では先生が押し勝ちました。その強盗の運の悪いところは相手がエクシード魔術学園(エリート校)の教師だったところですね。いくら属性的に有利だとしても魔力量は雑魚じゃ話にもならないんですよ。つまり、 相手より属性が有利だったとしても油断してはいけないということです。一瞬でも油断をしてしまったら負けを意味するということを、よ〜く覚えておいてくださいね」


 なるほど。自分の昨日の体験談を用いて生徒に教訓を教える。興味の出る話題から一気に勉強へ持ち込んでいく。これならどんなやつでも大体は聞く耳を持ってくれるだろう。そして直前に生徒の誰かに当てることでみんなに緊張感を与える。完璧な教育だな、と思う。流石は伊達にエリート校の先生をしている訳じゃない。


「ということで、今日から前期階級戦 通称《新年祭》が始まりますよ。まだ授業は少ししかやってないけど、これは自分の実力を知るというテスト、みたいなものです。頑張ってくださいね」


 それで先生の話は終わった。

 その後はそれぞれの学年は第四体育館へと集まる。このエクシード魔術学園の中で第四体育館が一番大きいらしい。四年生ともなると実力は大人と肩を並べるからだろうか。一学年六十四人、全校生徒と言っても二百五十六人しかいない。それは前世、俺が自主休校していた高校の一学年とさほど変わらない。

 今は開会式の真っ最中。あの若き学園長 アルフレッド先生が前に登壇し俺ら生徒達に向けて()()をしてくれていた。


「――えー、ですから皆さん今日は精一杯自分の実力を発揮してください。私は君たち、学生諸君の全員を応援しているよ」


 約十五分にも及ぶ長い話を立ったままで聞かされてもう足が限界だ。こんな状況で戦えって言うのかよ。鬼か。せめて座らせろよ。これじゃあ寝ることすら出来なったじゃないか。と小言を吐いた。

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