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一人、ゲームな魔術学園  作者: 結城 睦月
第一章 : 新年祭編
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第二十二話 四日間の特訓

 後日――

 俺は昨日約束したことを忘れ、未だ夢の中にいた。



「ねぇ、お兄ちゃん!いい加減に起きないと授業始まっちゃうんだけど」


 別に俺としても全然悪気があった訳じゃない。昔から朝は嫌いなんだ。この場合 昔というのは前世にまで遡るのだが。

今日も集合時間のギリギリになってノアに起こされ気怠そうに目を覚ました。

 ここは敢えて何も言わない。ノアが普通に俺の部屋に入って来ていることを。昨日の夜、いくら俺が疲れ過ぎていたとしても部屋の鍵を閉め忘れるはずがない。仮にそうだとしても一定時間が経つと自動で鍵が掛かるようになっている。そう。つまり寮の管理人からスペアキーを譲って貰ったのだろう。まぁーそれで助かってるのだから素直に感謝しよう。


「あ……」

「あ?」

「――あと五分」

「ちょダメだよっ!」


 前世と同様に眠たい朝の決まり文句を呟き、顔すらも布団に突っ込み潜った。

 しかし、ぷくっと頬を膨らましたノアに布団を勢い良く剥ぎ取られ起こされた。


 それからというもの集合場所に着くまでの間、「もう、どうして昔からお兄ちゃんは朝弱いの!」などと腕を組んだ妹に朝から叱られました。



 集合場所に着くと既にアリスとフェデルはおり、二人で楽しそうに話していた。“既に”はおかしいな。ただ単に俺が遅刻しただけだから。

 俺は二人の姿を見るなり駆け寄りその勢いのまま華麗にスライディング土下座を決めた。この二人は俺に対してどこまで怒ってるのか分からないが、どうやら俺の身体が土下座をするべきだと判断したようだ。

 特にアリスには謝らなければならない。なにしろ特訓をしようと提案したのは俺なのだから。


「ホント、ごめんなさい!!」

「え、えーっと、まず立ってください。話はそれからですよ」


 そこには女神がいた。アリスは困ったように両手を前に出してあたふたとした。

 じゃなくて優しすぎるだろ。俺が言うのもなんだか変な感じがするけど。今は俺はアリスの優しさに甘えて立ち上がった。


「私はお願いする立場ですので何も言えませんが、ルイ君にその……謝罪の気持ちがあるのならば特訓の方に注いでください!」

「アリスちゃん、良い子過ぎるぅ」

「ちょっとそれは甘いんじゃね?」


 アリスの言葉にノアもフェデルも怒る気力を無くし、軽く微笑んだ。この場合アリスの言ったことは正しい。俺も彼女の言葉に甘えはするが俺も自分から言った以上特訓に手を抜いたりはしない。現に今こうして本人からも頼まれたのだから。


「よっしゃ!始業まであと一時間もないけど、朝の特訓を始めるか」

「はい!」

「その前に、みんな放課後は空いてるか?」

「私は何も無いよ」

「私も何も予定はありません」

「俺もだ」

「じゃあ放課後もやるか」

「さんせ〜い!」

「悪いな。俺が遅れてきたばっかりに」

「いえ、放課後の方がより多くの時間を活用できますし」

「なら、一層の事特訓は放課後にしない?ほら、今日みたいに遅れてきちゃうかもしれないし――」

「お兄ちゃん」


 最後の提案は流石に無理があったようで、ノアがムスッとした顔でこちらを見てきた。ノアは俺にはこんな顔は滅多に見せない。つまり今、相当に怒っていらっしゃるようだ。

 俺は半分 愛しの妹の機嫌を取るかのように提案内容を朝と放課後に変更した。(はた)から見れば自分の首を絞めただけだな。



◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 コンコンコン


 早朝から扉を叩く音がする。今日は特訓最終日の朝。扉の向こうにいるのは絶対にノアだ。毎日のように扉を叩いて俺を起こしに来てくれている。


『今日もまだ寝ているのかな?』

『さぁな』


 扉を一枚挟んでいるせいで声がくぐもっている。しかしいつもと違った点はその声の主が今日はノアだけではない点だ。もう一人の声からしてフェデルだ。一体何のために付いてきたのだろうか。


 ガチャリ


 相変わらずスペアキーを使って部屋の中へと入ってくる。もう定番だな。俺の部屋はルイ&ノアと化している。その一方で俺はノアの部屋に入ったことはまだないのだが。

 ちょっとした通路を抜けリビングルーム的な場所まで来ると、


「お兄ちゃん、起き……えっ!」


 まるでそこにある光景が幻のように目を丸くして驚いている。なぜなら今日は既に起きていて着替え終わっているからだ。ちなみに朝練の集合時間はまだだ。


「よっ!おはよ」

「嘘……。お兄ちゃんがもう起きてる」

「おいおい、いくら朝に弱いからと言ったって、過去にも事例があるだろ」


 そのフェデルの言葉にノアはそちらに振り向き訂正した。


「それが一度も無いの。昔から朝はママに起こしてもらってたし、ママがいない時は私が起こしてたし、起こさなかったら昼まで普通に寝てるんだもん」

「それ弱過ぎな。お前、いつも何時に寝てんの?」

「大体、十一時くらいだな」

「それで朝起きれないのかよ」


 フェデルは頭を抱え、ノアは目を丸くして驚いている。俺が一人で朝を起きてみればこの反応だ。正直とても面白い。この反応見たさに早起きしたと言っても過言じゃない。



「でも今日はどうしたの?」


 まだ太陽が顔を出していない時間帯の寮の通路を俺ら三人は横一列になって歩いている。ノアは未だに信じられないと言わんばかりの顔で聞いてきた。

 俺らが持っている結晶端末(タブレット)は前世のスマホのようでありながらその機能はかなり違う。結晶端末(タブレット)にはタイマーの機能は付いているが、目覚ましの機能はない。


「簡単なことだよ。今日から新年祭が始まるだろ?それに楽しみと緊張で寝れなかっただけ。つまり寝てないから早く起きたように見えただけ」

「子供か!」


 人間本当に楽しみにしてる行事とかの前になると寝れなくなるというのは、案外本当なのかもしれない。前世ではそんなことなかったから信じていなかったけど。


「アリスちゃんと一緒じゃん」

「マジか」

「うん。ここに来る前聞いたもん」

「そういえばアリスの姿がないな」


 俺を起こしに来たのもノアとフェデルだ。どうせならフェデルじゃなくてアリスに起こしに来て欲しかったけど、仕方ない。


「なんかね、『体を動かしてないと落ち着かないー!』って言って一人で特訓してるはずだよ」


 真面目なのか子供っぽいのか。どちらにしろ想像して見るだけで可愛いのが分かる。

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