表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一人、ゲームな魔術学園  作者: 結城 睦月
第一章 : 新年祭編
21/40

第二十一話 少年少女の決意

新章入りました。なので、一人称視点に変わります。ご理解を…

 だいぶ日は傾き、夕暮れ時の光が寮の廊下を照らしている。ほとんどの人は職員室の前に掲示されたテストの順位を見に行っており、擦れ違う人は滅多にいなかった。

 そんな中、俺は元気の無いアリスと擦れ違った。その隣には背中を(さす)り一生懸命に励ましているノアの姿があった。アリスたちで被ってしまって顔しか見えないがその後ろにはフェデルの姿もあった。


「勢揃いだな。ってアリスどうかしたのか?もしかしてフェデル、お前が何かしたのか」


 バカっぽいフェデルならするかもしれないと思って睨んでみた。だが、フェデルは俺からの視線を感じてか慌てて口を開いた。


「どいつもこいつも俺のせいにするな!まったく兄妹そろって失礼なやつだな」

「ということは……」


 その言葉を聞いてノアに目をやればパチリと一回ウィンクをし、舌をぺろりと出していた。流石、俺の妹ってところか。


「じゃあどうしてアリスはそんなにも落ち込んでるんだ?」

「お兄ちゃん、職員室の前に掲示されてる結果見た?」

「いいや。結果なんて一枚の紙になって直接俺の元に届いたけど」


 と制服のポケットに入れていた綺麗に折られた紙を広げて見せた。順位だけでなく一つ一つの種目にまで細かい指導が書かれていた。これを読んで更に上へ向上しろって訳だろうか。期待されるのは苦手なんだけどな。


「は!?俺らには無いのにか?」

「声でけぇな。フェデルたちには届いてないのか?さっきオーギュストから聞いた話によるとあいつの手元にも届いたらしいけど」

「ということは上位三名には届くシステム、ってことなんだね」

「結果見たぜ?お前二位だってな。羨ましいぜ〜」


 フェデルは興奮気味に喋っている。まるでそれが自分のことかのように。


「そういうお前は何位なんだよ」

「俺か?俺は――」

「二十二位、でしょ?」


 今まで黙っていたアリスがゆっくりと顔を上げて呟くように言った。唇を少し噛み、瞳に涙を浮かばせている。その表情からはとても悔しさが滲み出していた。


「ノアちゃんは九位。ルイ君なんて二位ですし。私なんて、私なんて……」

「でも俺より良かったんだろ?たしか十二――ぐほっ!」


 フェデルが何かを言いかけたが俺は咄嗟に重力魔法で廊下の遥か先にぶっ飛ばした。本当にこいつはデリカシーが無いのだろうか。絶対それが原因で落ち込んでいるんだろう。

 でも、把握した。アリスは十二位だったのか。三十二人中の十二位。つまりは中の上だ。あの廊下の奥で伸びているフェデルよりかはいいにしても、アリスのプライドからすれば許せないのだろう。

 そういえば“ミュルヘン家”は、領主貴族としてここから少し離れた地域ではかなり力がある家だったな。それがプライドを土台を作っているのか?


「ほ、ほら大丈夫だよ アリスちゃん。先生が言ってた前期階級戦は来週なんだから、そこで良い成績を取れば全部丸く収まるよ」

「でもみんなも今から特訓をするはずです。私はどうやってみんなに追いついていけばいいのか分かりません」


 アリスは今まで特訓はしたことが無いのだろうか。

 特訓……短期間に普通の量や内容を超えて行う特別の訓練。まぁー毎日練習していれば必要無かったのかもな。


「なぁアリス。学園に入学する前は一日何時間魔術なんかの練習をしてた?」

「えーっと、二時間?」

「二時間か……」

「どうするの?お兄ちゃん」


 前期階級戦。つまりは新年祭まであと三日足らずか。十二位ならまだ上を目指す見込みがあるな。ついでにフェデルも。


「三日間か……」

「ん?」

「三日あれば十分だな。今日はもう夜になるから、明日から特訓を始めようか」

「本当ですか?」

「あぁ」

「私もやる!」

「いいぞ」


 遠くやっと気を取り戻したフェデルにも「お〜い」と声を掛け、明日からの特訓に誘った。こういうのは教える側も教えられる側と同様に学べるから良いよな。一度はやってみたかったやつだ。テスト前にみんなで集まって勉強するやつが前世の夢だったんだと思い出した。


「それに新年祭で勝って、高ランクを取れば好きな部屋を選べるもんね。絶対お兄ちゃんと隣の部屋にするもん」


 ノアは胸の前で拳を握りしめ強く意気込んでいる。口で言うのは簡単かもしれないけど、果たして明日からの俺の特訓に付いてこれるかな?かなりハードな練習内容にしてやろうか。


「いてて……」


 ()()に吹っ飛ばされたフェデルが漸く戻ってきた。いきなり飛ばされたことへ不満を言うかと思ったら、意外にも明日からの特訓に闘志を燃やし始めた。フェデルが当たった壁は少し亀裂が入っているのだが何も怒りもしないとは流石、異世界だな。怒ったとしても原因はフェデルにあるのだが。


「じゃあ明日の朝から始めるから、みんな遅れんなよ!」

「もちろん」「当然だろ」「分かりました!」


 ()くして集合場所を第一体育館前に設定しそれぞれの部屋に別れた。明日の朝は早い。今日はもう寝るか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ