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一人、ゲームな魔術学園  作者: 結城 睦月
序章 : 異世界新生活編
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第二話 新しい世界との契約

 神様に聞かれるまでもなく、世界は酷く残酷だ。

周りの大人達は、みんな口を揃えて、『夢を見るより、現実を見ろ』などと言っていた。それは普通の事かもしれない。だが瑠偉はその考え方が大嫌いだった。


「そう感じるよ。例えば、もし魔法という概念が存在しないのなら、そんな言葉自体生まれないはずだろ。……と俺は思います」

「うんうん。……君、なかなか良いところに目がつくじゃないの。そう、あの世界にも魔法はあるんだよ。けど、それは遠い遠い過去の話。あの世界の魔力は元々有限で、もう底を突いてしまったの。いつ無くなったかは知らないけどね」


 その言葉を聞いて瑠偉は「昔はあったのか!?」と驚いた。思い返してみれば、ヨーロッパの歴史の中に“魔女狩り”があるのはそのためか、と一人で勝手に納得する。


「でも、それとは逆に無限の魔力で満ち溢れている世界があるの。そんな素晴らしい世界に行ってみたいと思わない?」

「……願わくばそう思う」

「だよねっ!じゃあ、君を()()に異世界転生させてあげるっ!……これは内緒だからね」


 神様は瑠偉が行きたいと言うのを待っていたかのようにすぐに反応し、それに伴ってテンションが急上昇した。特別という言葉に人は弱い。しかし、神様の言うように異世界へ行くことが出来るのは滅多にあることじゃない。

 瑠偉は右手を額に当てて考える。最後の『内緒』とは誰に対してなのか。


「神様、その世界には魔王がいて、最終的には俺に倒してきてほしいという定番のイベントがありますか?」


 やはりここは定番の魔王へ挑むイベントミッション付きなのか、というところが気になった。しかし、その考えというか心配は大きく外れた。


「残念ですが、そんな期待の眼差しを向けられても、魔王はいませんよ。だって去年勇者が倒しましたから」

「……何やってんだよ、魔王は」

「けど、魔族がまだ残っています。困ったことにあいつらは、世界に魔力がある限り何度でも無限に湧いてきますよ。ね!楽しみは減らないでしょ?」


 それは楽しみなのか疑問に思う。その世界に住んでいる人からすると、脅威でしかない。いつ魔物に襲われても可笑しくないなんて。剣士や魔術師がいたとしても危険は付き纏うだろう。けど、今の瑠偉にとってそれは天国以上の夢のような話だった。


「そうだな。今から期待が高まるな」

「転生するんだね?じゃあ契約成立だね。最後に、ここにサインしてくれる?」


 そう言うと神様は何も書かれていない真っ白な紙を渡してきた。瑠偉はそれを受け取ると白紙を見て疑問に思った。すると次の瞬間、黒い文章が次々と浮かび上がってくるかのように現れた。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

◆◆◆異世界転生契約書◆◆◆


第一条 本契約は君が異世界へ転生し世界を楽しんでもらうことを目的とします。


第二条 楽しんでもらうために、君には転生先の世界で言う【先天()()能力()】を与えます。


第三条 ただ死んでしまったら元も子もないので、そこは気を付けてね。


以上、君は異世界に転生しますか?するならここにサインを!!______印←印は指紋でいいよ☆


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 彼の目にはこう見えた。いや、実際に紙にはそう書いてあった。サインだけを求めるような契約書は詐欺っぽいが、まさか神様がするなんてな。変に身構えていたがそれも緩めた。瑠偉は【橋宮 瑠偉】と自分の名前を丁寧な字で書き、インクの付いていない指を押し当てた。指を離せば指紋がしっかりと写されていたのを確認し、神様に渡した。


「うん、受け取ったよ。じゃあそこに立って」


 と今度は椅子の前で立つように指示をした。瑠偉は言われるがまま席から立ち上がる。すると、彼の足元に青い魔法陣が現れ、徐々に身体が浮いていく。


 それと同時に今度は右側に黄色く光り輝く魔法陣が現れ、そこからまた別の少女が顕現した。目の前の神様が目を逸らしているところから見て、恐らく新しく現れた子も神様なのだろう。

 顔立ちが二人ともよく似ていて、違うところと言えば、薄い水色の混ざった銀髪というところだろう。見ていて何とも涼しくなる。


「ちょっと、何してるのよぉ!」

「何って見ての通り、スカウトですよ」

「貴女は異世界の神様でしょ!この人は地球の人なんだから」

「いいじゃないですか。もう契約しちゃったんだし。そもそもこの人は、地球はつまらないって言ってるんですから」

「えっ、つま……らない?」


 新しく現れた神様は話から察するに地球の神様だ。その神様は自分の世界がつまらないと言われると、その場に酷く落ち込んでしまった。


「じゃあ、行ってらっしゃい♪」

「行ってきます、神様」

「行っちゃダ〜メ!」


 地球の神様は四つん這いの状態で、(すが)るように手を伸ばすが誰もそちらを見ていなかった。そしてそのことにもショックを受けて、また落ち込んだ。とても忙しい方だ。


「契約書に書いてあった、ギフトは君が喜びそうなモノを選んでおくから、心配しないでね」

「りょーかい」


 瑠偉はその言葉を最後に、完全に(そら)に吸い込まれるように消えていった。


 瑠偉がいなくなった後、二人の神様は顔を合わせないままで、会話を続ける。


「ちょっと」

「なんですか?」

「勝手に私の世界の住人をスカウトしないでよ」

「いいじゃないですか。需要と供給ですよ」

「盗みじゃない」

「――私はあの人を()の世界に戻してあげただけですから」

「……?」

「さてと、どんな能力を与えようかな〜?」

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