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一人、ゲームな魔術学園  作者: 結城 睦月
序章 : 異世界新生活編
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第十五話 今日の事は今日中に

だいぶ間があいてしまってすみませんでした。

【ルイside】に戻ります。



 料理長にカレーとトンカツのレシピを教え終えた頃にはもう結晶端末(タブレット)の説明会は終わっていた。ルイはそのことをだいたい予想していたから、教室には戻らず食堂で妹のノアを待つことにした。



 それから約五分後――


 ルイが予想していた通り案の定ノアが食堂手前の階段を走って駆け下りて来た。片手にはルイの分の結晶端末(タブレット)、もう片方には自分の宝物のみーたんを大事に持っていた。よく見れば額には少し汗を(にじ)ませていた。それだけ走ってきたのだということだろう。ルイは心の中で手を合わせて一礼をした。


「お疲れ様」

「お兄ちゃんこそお疲れ様〜。はいこれ!お兄ちゃんの」


 と手渡された結晶端末(タブレット)は既にノアが初期設定をやってくれたものである。


「詳しい操作方法とかは寮の部屋に戻ってからする、でいい?」

「あぁ。さてと、アリスとオーギュストは?」


 早速先程の報酬のポイントを山分けしようと思ったのだが、二人の姿はここにはない。


「今アリスちゃんはフェデルと一緒に教室の前にいるよ。オーギュスト君は……分かんない」

「そっか」


 と返事をするルイはノアの操作方法の説明も無しにやすやすと使っている。見ていたのはクラスの人とのコミュニティーのページだ。


「って、お兄ちゃん何してるの?」


 結晶端末(タブレット)の画面は浮き上がっているものの、正面から以外はそれを見ることが出来ない。そのためノアはルイにくっつく形で質問をした。


「これだとクラス全員に送られるけど、それはそれでいいか」

「ねぇねぇ、何のこと?」


 まったく理解出来ていないノアは先程から首を傾げるばっかりだ。終いにはルイの顔を下から覗き込み反応を伺っている。その仕草にルイもちょっと顔を赤らめて質問の答えを言った。


「が、頑張った人にはそれだけの対価が与えられるんだよ」

「ん?……どういうこと?」


 ノアはお兄ちゃんが急に変なことを言ったと勘違いした。言っていることは至極真っ当なのだが、ノアの頭では質問したことに対しての答えだということにまだ話が繋がらない。


「まぁもっと簡単に言うと、さっきの料理を手伝ってくれた二人に感謝するから呼び出しをしたんだよ」

「あっ、そういうことか!私もお手伝いしてたら今頃お兄ちゃんに褒められてたのかな?」


 と夢を見るかのようなうっとりとした表情で言っている。それに対してルイは腕を組んで少し意地悪を言うようにして答えた。


「いやいや、まだノアにお願いするのは難しいなー。今ノアにお手伝いを頼んだら皿が何枚割れてなくなることか……」

「私そんなに不器用じゃないもん!!」


 手厳しい感想を言われたノアは口をいっぱいにしたハムスターのようにぷくっと頬を膨らませ、そっぽを向いた。


「そんな顔するなよ」


 と膨れた頬をつんつんと突っついた。ノアは「ひゃっ!!」と声を上げ顔を赤らめて、びっくりした反応をする。


「ずるいよ……」


 そんな恋人みたいな展開を学園内でも繰り広げていたその頃、クラスのコミュニティーページの新着を見たアリスとオーギュストが食堂へとやってきた。あと追加でお呼びではないフェデルまでもやってきた。


「なんでお前まで来たんだよ」

「いいだろ〜?楽しそうだったから」

「別に楽しいことなんてしないよ」

「で、ルイくん。俺らを呼び出した理由は何だい?」

「単刀直入過ぎんだろ。これ、内容が()()だから、がめついと思われるぞ……」

「ん?」


 このルイの説明ではまったく伝わらず、フェデル含め三人ともきょとんとしている。しかし先程ルイから説明を受けたノアは自慢げな顔をして胸を張っている。ただ一人ルイの話を理解しているとお兄ちゃん以外からも良き妹のように思われようとしているのか、どうなのか謎である。あまりにも誇らしげな顔をするものだから周りのみんなは『さすがは妹だな』と思い始めていた。


「もしかしてノアっちは何のことか分かったん?」

「まぁーねー」

「凄いです!」

「流石はルイくんの妹と言うべきか」

「えへへへへ」


 (みんな騙されてるぞ)なんて実際口に出して言える訳もなく、ルイはもう面白半分にその場を眺めていたら、優しいノアがルイに代わって説明を始めた。


「お兄ちゃんが言いたいのは、フェデル以外はさっきの料理の時に手伝ってくれたでしょ?」

「うん、そうだね」

「そのお礼という形でお兄ちゃんが“対価”をあげるらしいの」

「本当ですか?もしそうだとしらた、ありがとうございます」

「マジか!?俺にもくれんの?」

「本当の事だが一つだけ言わせてもらうと俺からではなく料理長からだ。だから感謝するなら料理長にするってものよ。あとフェデル、お前の分はないからな」

「えーなんだよ、無いのかよ。詰まんねぇな」

「だから楽しくないって言っただろ」


 フェデルはがっかりとした表情を見せる。しかし、先程ルイが言った通り『頑張った人にはそれだけの対価が与えられる』ということは『働かざるもの食うべからず』と同じ意味を持っている。


 (滅非労働者(ニート)。といっても俺も同じ事が前世で言えただろうか)


「後でお礼を言わないといけませんね」

「じゃあ今からポイントを貰うから、次いでに言うといいよ」

「まだ貰っていなかったのかい?」

「そりゃー俺まだ結晶端末(タブレット)貰ってなかったからな」

「私とフェデルはお邪魔になるかな?食堂の外で待ってるね」

「りょーかい」


 ここで五人は二手に別れた。

 厨房のスウィングドアまで移動すると丁度のタイミングで料理長が扉を開けて出てきた。


「おう。明日来ると思ったけど早かったな」

「『今日の事は今日中に』をモットーに生きてるもんでね」

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