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一人、ゲームな魔術学園  作者: 結城 睦月
序章 : 異世界新生活編
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第十二話 最高のレシピ

凄く…というか厨房でのアリスの描写を追加しました。

「――ということを条件に厨房を貸してもらったんだが、勝手なことをしてすまなかった」

「別にそんなことで謝るなって。逆にオーギュストが交渉してくれたお陰で、スムーズに事を運べている訳だから」

「そう言ってもらえて少しは気が晴れるよ」

「なんか、堅苦しいな。……まぁそれはいいか。アリス、手伝いを任してもいいか?」

「うん!ーー何をすればいいのですか?」


 アリスは味わったこともない料理を食べれるということに内心わくわくが止まらなかった。それも自分で料理を作るのだから。


 ルイはカレーの中でも一番好きな物は“カツカレー”である。料理長がお気に召したら食堂の新メニューに追加されるという可能性があるなら、いっそカツカレーを作ってしまおうと小賢しいことを考えていた。


「カツか……」

「誰に?」

「いやオーギュスト違げぇからな!Victory(ビクトリー)の方じゃなくてカレーのトッピングの問題のこと」

「なるほどな」


 仕事(ツッコミ)を終えると再びルイは、右手を顎に添えて考え出した。内容は先程に続き、


(トンカツかチキンカツか。でもトンカツにしておけば後々とんかつ定食とか色々応用も出来そうだな。いや、チキンカツでも同じことは言えるか……)

「どうしたのですか?そんな厳しい表情(かお)をして」


 すると今度はオーギュストではなく、アリスが声をかけた。しかも(うつむ)くルイの顔を覗き込む形で。ふと、我に返ったルイは目の前にあった天使のような表情をした少女にドキドキしてしまった。


「い、いや大した事じゃないんだけど、俺にとっては重要なことをだな」

「え?」

「よし、決めた。アリス、トンカツを作ってくれる?」

「とん…かつって何の材料を使うのですか?大根……?」

「違う違う!んー、ウォルピッグの腰に位置する背肉の部分の肉を人数分取り出して、包丁で叩いてくれ」

「分かったよ」


 アリスは指示を受けると軽く微笑んで、料理長にウォルピッグのロースがある場所を聞いた。一方のルイも気合いを入れて、カレー作りを開始し出した。


「じゃあ俺も作るとするか」

「俺は何を手伝えばいい?」


 気合いを入れたところで左後ろに立っていたオーギュストが手で呼びかけるように質問した。


「特にないからな〜。お皿とかを出しておいてくれるだけで良いや」

「了解だ」

「さてと、ーーん?」


 ルイはここに来て漸く重要なことに気が付いた。カレーを作る時には最も大切な材料。ーーそれはカレーのルーだ。

 ここは異世界。カレーなんていう料理をさっき初めて知ったばかりの世界だ。当然だがルーが存在するはずがなかった。となると、スパイスを調合してカレーの味を出さなければならなかった。ルイは前世でルーを使った作り方なら中学校の家庭科の授業でやった事があったのだが、スパイスからは作った経験がない。


「ま、まぁ〜、そこは鯖を読んでおこう」

「ん?何か言ったかいルイ」

「いやいやいや、何でもないからな!ホント」


 明らかに動揺し、慌てて誤魔化そうとしているルイの行動に対し、オーギュストは「そうか」と端的に応えて、自分の作業に戻った。

 ルイの方はまずは野菜を切ることから始めた。世界が、違うためそれぞれの名前は違うけれども、人参と玉ねぎに値する物をみじん切りにしておき、準備は出来た。


「次はスパイスだけど、六個くらい使えばいいかな」


 などと、テキトーに軽量スプーンで計り ボールへと入れる。丁度その頃アリスはロースを叩き終えたので、ルイは塩を振りかける指示を追加した。伝言役は皿出しを終えたオーギュストだ。未だ作業を続ける二人の邪魔にならない間に入ってルイの言葉をそのままアリスに伝えている。


「アリスさん、次は小麦粉、卵、小麦粉、卵、パン粉の順番にその肉を付けていくそうです」

「二回もですか?」

「ルイはそう言っているのですが」

「ルイくんにしかこの作り方(レシピ)は分からないですもんね。分かりました」


 ルイはルイの方で、あれだけスパイスを適当に取り出して、炒めたというのに最終的には美味しい物を作り上げた。それは自分の舌で味見をして確かめたことである。今作った即興レシピを忘れないうちにメモ用紙に書き取る。

 ルイはトンカツ側が気になってふとそちらを見てみると、アリスの手は精励(せいれい)に肉に衣をつけているが、その表情はほぼ死にかけていた。特に夜明け前の空のような綺麗な瑠璃色をした瞳に未だその光はなく、口から涎が少し垂れている。

 チャームポイントである頭の右側に付いている青い花の髪留めはさながら(しお)れかけた花のようだった。

 そんな状況になっても手は動くのかとルイは感心したが、問題はそこではない。どれだけお腹が空いている事かということである。

 アリスでさえ目が死んだ魚のようになっているのだ。厨房の外、食堂のみんなは完全に死んでいるのではないだろうかと、心配に思った。


「アリス顔、顔!」

「えっ!あっ」

「その仕事代わろうか?」

「大丈夫だよ。この後はどうするのですか?」

「後は油で揚げれば完成だ」


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 ほかほかなご飯をお皿に装い、ルイ特製のカレーのルーをかけた。そこにアリスが作ったトンカツを盛り付ければ異世界版“カツカレー”の完成である。


「完成だな!」「出来ましたね!」「とても美味そうだ」


 ルイ、アリス、オーギュストの三人で作った昼ご飯(カツカレー)はとても美味しそうな匂いを放っていて、益々食欲を(そそ)る。


 α(アルファ)組のみんなに出すと、美味しいそうバクバク食べ、あっという間に完食してしまった。

 アリスは自分で山盛りについだカレーをぺろりと食べてしまった。その光景に周りに座っていた生徒も目を丸くするばかりである。

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