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一人、ゲームな魔術学園  作者: 結城 睦月
序章 : 異世界新生活編
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第十話 α組昼食事件

 あれから二時間は学園中を歩き回るツアーで、ほとんどクラス全員疲れ果てていた。


「ノア、昼食はどうする?」

「お腹空いたからな〜。何があるか分からないから、まず食堂に移動しよ?」

「あのっ!……」


 突然二人の会話に鋭い矢のような一言が刺さってきた。振り返ってみると一人の少女が両手を胸の前でギュッと握りしめて立っていた。


 髪は銀色で長さは肩甲骨の辺りまである。

 瞳は夜明け前の空のような綺麗な瑠璃色をしている。チャームポイントは頭の右側に付けている青い花の髪留めだ。


「君は、アリスだったかな?」

「はい!――私も、私も一緒に付いていってもいいですか?」

「勿論、構わねぇよ」

「そうそう!御飯は一人よりみんなで食べた方が美味しいからね」


 その言葉を聞いた瞬間のアリスの表情はパァーっと世界が明るく照らされたかのように満面の笑みになった。どれだけ嬉しいのかは本人にしか分かることではない。


「お前ら今から飯か?俺も付いて行っていいか?」

「構わんよ。一人二人増えようがもう変わることではないしな」

「もうお兄ちゃんったら。照れ隠し?」


 あっという間に楽しいメンバーの出来上がり。その後もα(アルファ)組の中でグループはいくつも出来ていった。入学以前から仲良かった者、今初めて喋って共通点が生まれた者など理由は実に人様々だ。


 先程案内されたツアーの中に当然食堂も含まれていたため部屋の内装や外見は覚えていたけど、はっきりとした場所が思い出せずにいた。一人以外は。

 その一人というのはアリスだ。アリスの家の“ミュルヘン家”は、実に良い家柄で領主貴族として、ここから少し離れた地域ではかなり力がある。家が超豪邸で土地も広いためなのか、部屋が何処にあるかなどは絶対に間違わないという。方向感覚が鋭いのだ。

 ルイたち三人はそんなアリスの後を付いていく。



「私こういう部屋の間取りを覚えるのとかは得意なのですよ。……と言ってる間にもう着きましたよ。そこの角を左に曲がったところにある部屋が食堂室なのです」


 まるでこの学園で既に一年間過ごしてきたかのような完璧なナビゲーションで目的地に着いた。


 ふと、ルイは背後を振り向くとα(アルファ)組の他のメンバーも付いてきていた。合計三十二名もの大群となって食堂に向かっていたのだ。


 食堂に入ってすぐ左を見るととても大きな掲示板が立て掛けられている。内容をざっくりと見ると美味しそうなそうな料理が比較的安いと言える値段で所狭しと書かれている。中には(失敗した)創作料理なども含まれていた。

 一番安い物は三十pointから高い物は一万pointまで実に様々だ。ポイントの稼ぎ方については後に説明するとしよう。


「どれもこれも旨そうだよな!なぁルイ、早食い対決しようぜ?」

「何でだよ、やらねぇ〜よ。そもそもゆっくり食えよ」

「連れないなー」


 ルイとフェデルは既に肩を組むほど仲良くなっていた。というよりもフェデルの一方的な行動なのだが。それを見ていたノアが羨ましそうに二人を見ていた。


「お兄ちゃんたち、もう仲良しなの?」

「まぁ〜な」

「……。」

「仲がいいって素敵なことですよね」

「何のことを言ってるのか分からんが、アリスも俺らの仲間の一人だよ」

「良いこと言うじゃんルイ!」


 フェデルはルイの背中をトンッと一回叩いた。

 僅か十分足らずでルイ、アリス、ノア、フェデルの仲良し四人組の完成である。


 四人はそれぞれの食べたい料理を決め、注文をするためにカウンターに並んだ。他の生徒達もいるのでかなり長蛇の列になっている。



 十五分くらいして漸くルイたち一年生の番がやってきた。ルイはパスタみたいな料理を注文したら、予想していなかった事態が起きた。それは、カウンターに立っていた若い女性従業員の話だ。


「百五十ポイントになります」

「え、何のポイントだ?それ」

「新入生の方ですよね?でしたら今日、担任の先生からこれくらいで水色の結晶端末(タブレット)受け取りませんでしたか?」


 従業員の人は喋りながら、手でスマートフォン並の大きさを表していた。

 ルイはまったく心当たりのないことを聞かれて、少し動揺していたところに、隣にいたノアが口を開いた。


「何も貰ってないですけど、重要なの?」

「重要も何も、それがないと何も買ったり、施設を利用できませんから」


 話を要約するに学園内の設備を使うには結晶端末(タブレット)が必要不可欠ということだ。物を買ったり、図書館で本を借りたり、模擬戦をしたり、風呂に入るのだってそれが必要になるのだ。そんな重要な物を渡しそびれるなんてセルティア先生は後で恨みを買うだろう。主に女子から。


 かくして今日の昼食が無くなったルイたち三十二名は絶望の中にいた。お腹が鳴っても食べる物がない。


 そんな時にまた新たな生徒(きゃく)達が食堂に入ってきた。β(ベータ)組の三十二名だ。その中には当然先程の騒動の元凶とも言える怒りん坊なガルフもいた。

 ただ、今回はα(アルファ)組への仕返しなのか一人で吠えている。


「お前ら、何だよこの辛気臭い雰囲気はよぉ。いや、言わなくていいさ。この結晶端末(タブレット)貰ってないんだってな。ははは、ざまぁみろよ」

「やっぱりうるせぇな」

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