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オオカミ少年と嘘つきな魔女  作者: 凪
入学
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第六話

 

 クラスメイト何人かが撃墜されたことで静かになった教室でアリスちゃんは自己紹介を始めた。


「アリス=エッグルトだ。担当科目は魔法陣学。こんな見ためだがお前らが生まれる前からこの学園で教鞭を執っている。敬え。」


 え、うそだ、アリスちゃんいったいいくつだよ。

 再び騒がしくなる教室でアリスちゃんがチョークを取り出すとまた静かになる。


「よし、じゃあ次はお前らが自己紹介しろ。名前と得意属性くらいは言っとけ。」


 そういうとアリスちゃんは椅子に座る。けどアリスちゃんは小さいから座ると教卓に完全に姿が隠れるな…

 ってそれどころじゃない、自己紹介って何するんだ?やったことないから何するのか全然わかんないぞ。



「えっと、じゃあ俺から!俺はアキラス=シュテイン。得意属性は雷。スピードには自信ありです。うちは親も兄弟も魔導軍所属なんで、卒業後は魔導軍に配属希望で、実技は気合い入れて頑張りたいと思います!みんな、これからよろしく!!」


 廊下側の一番前のやつからやっていくみたいだ。なるほど、なんか自分についてアピールしていけばいいのかな?んで他の人のを聞いたら拍手するのか。

 なら俺はあんまし苦手な魔法については触れないで体術系のことを話すか…




「メリッサ=コーエンと申します。得意属性は雷、座学は得意です。よろしくお願い致します。」


 自己紹介で何話すか考えてたらもうメリーの番だったみたいだ。てことはもう俺の列、何話すかいいかげん決めないと。

 …それにしても他のやつのときに比べて拍手が少ないな?これって話し終わったらみんな拍手するんじゃないのか?


「おい、あいつコーエンの…」

「うそ?なんで高等部に上がってるわけ?」

「あー、あの落ちこぼれの!」


 拍手の替わりにクラスがざわつく。なんか雰囲気悪いな。

 メリーは居心地悪そうに席に着いた。





「ミクだ。属性は土。よろしくはしなくていい。オレに構うな。」


 俺の前の自己紹介は一際異質だった。それだけ言うとどっかりと席に座る。さっきの赤髪の怖い女か。

 なるほど、必ず自己アピールしなきゃいけないわけじゃないのか。


「あいつは騎士爵家の…」

「マックス卿の娘か。」

「騎士団で英才教育受けたっていう…」


 こいつも有名なやつみたいだ。みんな興味深そうに見ているが本人は不機嫌そうにガン飛ばしている。



 次は俺の番。

 俺は話す内容をまとめながら立ち上がった。



「ナギ=バスカビルです。」


 一気にクラス内が騒然となる。やっぱ父さんの名前は有名だから俺を見る目にも尊敬の念が混じる。




「バスカビルと言っても僕は養子で、もとは孤児です。家を継ぐ予定もありません。ですから家のこととは関係なく接してください。

 魔法はからっきしで、詠唱有りの初級魔法しかまだ使えません。魔法はまだ落ちこぼれですが、これからこの学園で成長していきたいと思いますので、みなさん、よろしくお願いします。」


 深々と礼をして俺は席に着く。

 クラスの中は不気味なほど静かだ。サラブレッドかと思ったら馬のくそ以下だったというときにはもはや反応もできないらしい。


 あ、得意属性言うの忘れた。



 静寂は永遠に続くかのように思えたけど、それを破ったのは、当たり前だけど、俺の次の自己紹介だった。





「ナツメ。氷。」



 自己紹介なのか怪しいほど淡白なものだったけど。

 思わず後ろの席を振り返ると、ショートカットの猫の獣人の赤い目と目が合う。


「なに?わんこ。」


 そして意味不明なことを言ってきた。

 わんこって俺のことか?



 わんこ、わんこ、…。わん…。もしかして犬?

 わんちゃん的なノリで俺のこと呼んできたのか?


 負け犬ってことか?落ちこぼれだし。

 じゃなければ…、でも…、まさか…


 ちょっとありえない想像でゾクッとさせられたけど、バカにされてるっぽいし言い返さないとな!



「にゃんこにわんこって言われたくないよ!」


 やばい、語彙が同レベルだ。すごい幼稚な会話になってしまった。



「にゃんこか……悪くない。」



 後ろのやつはなんか一人で納得しちゃってるし!!

 こいつわけわかんないな、もう関わらないでおこう。




「全員自己紹介したな。じゃあ今日はここまでだ。明日は午前中だけの授業だ、遅れてこないように。」


 意味不明なやり取りをしてるうちに残りの自己紹介も終わってしまったらしい。

 どうしよう、クラスの大半のやつわかんないままだ!!



 それじゃ解散、というアリスちゃんの掛け声でクラスの連中は各々自分の気になったやつのとこへ移動して話し始める。

 なるほど、そういうシステムなのか。自己アピールしていたのも納得だ。


 と言ってもほとんどのやつが中等部からの進級だろうしもとからの知り合いも多いようで。

 一番人が群がってるのは窓際後列の高身長イケメン鳥人君のところか、滅びろ。



 対して自ら落ちこぼれ宣言した俺のところに来る物好きはいない。あ、いや、メリーはこっちに来てくれた。


「ナギ様…どうしてあのようなことを…」


 メリーは自分に合わせてあんなことを言ったのかとまた申し訳なさそうな表情だ。

 実際、クラスの中でのメリーと状況も影響したことは確かだけど、言ったことに嘘はない。


「いや、俺が話したことは全部本当のことだよ。それより、俺がこんなに情けない奴で失望させちゃった?」



「いいえ、魔法なんてその人の良さの中のたった一部分、ナギ様の良いところは他にたくさんございますから。」


 今日会ったばかりでこんなこと言えるのもすごいよな。しかもメリーは本気で言っているからなおさらすごい。



「二人はすんごく仲が良いんだね!付き合ってるの?」




 質問の内容もさることながら、まさか俺たちに話しかけるやつがいるとは驚いた。

 俺たちに話しかけてきたのは隣の席の女の子…


 と思ったけど違う!?男子の制服着てる!!?




 俺たちに話しかけてきたのは隣の席の男の娘(?)だった。




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