表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オオカミ少年と嘘つきな魔女  作者: 凪
新入生クラス対抗戦(クラス代表選考編)
13/183

第十二話

 

 光の日も4人で親交を深めて、次の火の日。

 午前中の座学を何とか乗り切って、初めての午後の実技の時間。


 俺たちは実技用の戦闘服に着替えて第二修練室に移動してきていた。

 戦闘服は特殊な素材で作られていて魔法や斬撃や衝撃にも強い。

 デザインはシンプルな黒地のTシャツに短パンだ。



「よし、お前らそろってるな!今日の実技は最初ということで担任の私が授業を見る。」


 アリスちゃんが今日の実技の授業の説明をしてくれる。



「例年、最初の実技では午後のコマをまるまる使って、生徒の現状での実力を見る。魔法も武器も使ってお前らの全力を私に示せ。」


 なるほど。一対一でクラスメイトと戦うことで、生徒それぞれのレベルを測るわけか。

 他のクラスも他の修練室に移動していたし、全クラス同時にやるから担当教員がクラス担任の先生になるみたいだ。


「組み合わせはこちらでもう決めてある。敗北条件は降参するか、意識を失うか、私が止めるか、このプレートを割られるか、だ。」


 アリスちゃんが長さは7cm、幅は3cmくらいで紐のついた板を掲げた。


「このプレートは学園の戦闘の決着の方法ではよく使われるから、慣れておくように。」



 学園の授業で死ぬまで戦われても困るしな。妥当な決着じゃないかな。

 多少のケガはあるかもしれないけど、それくらいは保健室で治癒魔法を受ければ治るし。



「それじゃ、名前を呼ばれたやつは前に出てこい。最初は――」


 呼ばれるまで待っている間、自然に俺たち4人は固まる。

 レンとにゃんこはいつも通りだけど、メリーはひどく緊張している。


「クラスメイトとの対戦!ワクワクするね!!」


「わんこ、わたし、ねむい。」


「にゃんこは昼飯食べて昼寝してたせいだろ。メリー、大丈夫?」


「ナギ様、どうしましょう…。私、戦闘は全くです…。」



 今はクラスの男子生徒二人が魔法の撃ちあいを繰り広げている。以前メリーに聞いた通り、中級の魔法を詠唱破棄で使っている。

 戦闘中は普通詠唱するような暇はないので詠唱破棄以外ではほとんど魔法は使えない。


 なので俺やメリーは初級魔法しか使うことができない。俺は初級ですら詠唱が要るけど。



 魔力量の違いか、片方の生徒が魔法で押し切り、相手を吹き飛ばして、プレートが割れた。

 魔法の乱打戦みたいでドタバタした感じだったな。使えない俺が言うのもなんだけど。



「次。シーキンスと(ワン)。こい。」


「あ、呼ばれた。行ってくるね!」



 レンの姓はシーキンスというらしい。レンの前には自己紹介のあと机を囲まれていたイケメン鳥人が。


 あの鳥人、王 飛龍(フェイロン)は、入学式の日はすごい人気者だと思ったけど、次の日には話しかけるやつはいなくなっていた。

 …遠くから眺めてる女子は多いけど。



「お手柔らかにね、飛龍くん!」


 レンはグローブを両手にはめながら笑いかける。


「俺は勝負で手は抜かない。」


 飛龍は鞘に入った直剣を背に背負って答える。


 飛龍は硬派なキャラらしい。クラスの女子はキャーキャー言ってる。

 レンに完膚なきまでにやられて少しは女子人気がなくなってほしい。



「はじめ。」


水弾(アクアバレット)!」


 アリスちゃんの号令と同時にレンは水の初級魔法を放つ。

 それを飛龍は最低限の動きで避ける。


 レンは魔法を放ってすぐに飛龍へ駆け出していた。

 身体強化を使っていて、スピードもなかなか速い。


 身体強化は戦闘において基礎となる魔法で、体内の魔力で身体能力を向上し、身体も頑丈にする。

 これを使ってないと戦闘では一瞬でボロボロの身体になってしまう。


火鳥(ファイアバード)


 向かってくるレンに飛龍は中級魔法を唱える。

 しかしレンは避けることなく突っ込み、グローブで飛んできた火の鳥を殴った。



「え?」


 魔法って殴れるの?

 俺やったことないけど魔法学園に来るようなやつはみんなこんな無茶なことしてんの?


「レンさん、グローブに魔力を流してますね。水属性の魔力の膜で魔法を受け流してるみたいです。」


 メリーが解説してくれた。

 確かに殴られた火の鳥は方向を変えて天井に向かっていた。


 障害を排除したレンは最短距離で飛龍に向かう。

 飛龍の方は魔法は無駄だと悟ったのか、剣を抜いて迎え撃つ構えだ。



水弾幕(アクアスクランブル)!」


 そのまま殴り掛かるのかと思われたレンは、至近距離で中級魔法を放った。

 さっきの初級魔法の水の玉が複数になって飛龍を襲う。


 しかし飛龍は慌てた様子もなくすべての水弾を切り飛ばした。


 そこからはレンは剣をグローブで受け流しながら魔法を放ち、飛龍は魔法を切り飛ばしながらレンに切りかかる近距離高速度の立ち回りだった。



「すごい…速い…。」


 メリーの感嘆に同意する。さっきの対戦とは比べ物にならないハイレベルな戦いだ。



 このままずっと続くんじゃないかという攻防は、飛龍によって断ち切られた。

 飛龍は剣戟を躱したレンを蹴り飛ばし、距離を空けると魔法を唱えた。


火炎放射(フレイムレーザー


「ぐっ!!?」


 放たれた炎の光線は防御しようとしたレンのグローブを弾き飛ばしてプレートを捉えた。


「そこまで」


 アリスちゃんが決着を告げる。

 すごい威力の魔法だった…。もしかして上級?



「くっそー。何が手は抜かないだよっ。なめられてた!!」


 帰ってきたレンは珍しくいらだっていた。曰く、飛龍はレンの得意な戦法に乗ってきた上でそれに対処して止めを刺してきたらしい。



「最初っからあのレーザー撃ってりゃ勝負は一瞬だったのに…嫌味なヤツ!!」


「まあまあ、レンさん。飛龍さんはレンさんを警戒してあのような戦い方をしたのかもしれません。上級魔法はそう何度も撃てないでしょうし。」


 苛立つレンをメリーがなだめる。てかやっぱり最後の魔法は上級だったのか。詠唱破棄だったぞ。

 あの鳥人はなかなか強いみたいだな。




 この試合では結局飛龍の女子人気を上昇させる結果になってしまった。

 レンの役立たずっ!










評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ