表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/15

そこに住まうもの達 3 ≪ドラド王国≫

始まりの泉より南西に位置するドラド王国は錬金術師クリュソスによる

発明の数々で魔法文明を築き上げた。

魔核石の製造である。魔物を倒し、その素材を使う事はすでに行われていたが

そもそも魔物の持つ特殊能力を魔力として使用する試みは不可能と思われた。

しかし、魔物の死骸では不可能だったが、生きたまま石化の魔物の爪を使い

それを圧縮することで魔石化することで魔石の核に魔物の零体を封じ込む

事に成功した。

そしてその成功は魔物ではなく妖精と呼ばれる精霊族に対しても行われた

更にクリュソスは色々な魔物を魔核石させて実験を繰り返し遂に精霊族の

魔石化アルク・ダミュースを完成させる。

通称アルクの誕生は、最初人々の暮らしを良くしていくと思われていた。

魔物から作られた魔核石と違い、精霊魔核石は魔核石後も能力を成長させる

事が出来る事がわかった。

例えば、炎の魔核石を使い魔物を倒すとある一定の量で炎の火力が上がる。

そして更に使い続ける事で上位の魔法を使用可能になる。

低級魔核石から上級魔核石へ変化するのである。

やがて、この魔核石のレベルを上げる事を生業とした者達が生まれる。

それが魔物ハンターである。魔物ハンター達は時代と共に名を変え

冒険者と呼ばれるようになった頃、狩られる側の魔物にも対抗しようと

する者達が現れ、アルク教徒らから魔族と呼ばれた。

第一期の魔族は、蝙蝠族フルツ、蜥蜴族ドラゴラ、人狼族アルギュロスの

三強で、フルツ、ドラゴラを倒した人族はアルギュロスとの死闘の果てに

勝利を収めたが、アルギュロスを倒すことは出来ずに逃げられた。

アルギュロスは深手を負い、その怪我がもとで後に死亡する事になるが、

部下達にその死を隠し、再び復活すると言って自ら魔石になった。


そしてアルク教、神官レギナはアルギュロスの復活を予言する。


その報を受けたドラダ王は異世界よりの勇者を召喚させた。

それが、石塚徳己、天井哲也、坂上信の三名だった。


突如、召喚魔法陣の中央に三人が現れた。


「勇者よ、我らの呼びかけによくぞ応えてくれた。


ドラダ王の言葉に神官レギナが付け足す。


「魔王アルギュロスの復活は近い。我が世界をお救い下さい」


「まじ、ちょーやばいんですけど、まじやばくね」


徳己が何か言い出して、周囲にいる巫女達の側に近づく。


「スケスケじゃん。やばすぎだろ」


困惑した巫女に神官レギナが少し溜息を洩らした。


「此方に用意しました伝承武具で御座います」


布を引き現れたものは、盾剣と両手剣、それに2本の短剣だった。


「それぞれ、お好きなものを手に取って下さい」


3人は、顔を見合わせて、どうぞという素振りを見せた。


「じゃ俺が先で」


徳己は2本の短剣を掴む、次に哲也が進み両手剣を取った。

残りの盾剣に信が手を伸ばし持つとそれぞれが輝きだして

消え去った。

驚きつつも良く見ると、太めの腕輪が付いていた。


「なんだこれは」


徳己がそう言って両手を眺めると再び短剣に戻ったり腕輪になったりを

繰り返し始めた。


「意思でコントロールできるのか」


「なるほど、そういうことか」


哲也が手を前面に構えると両手剣が現れた。

どうやら信は、試す気はないらしい。黙って二人を見ていた。


「その伝承武具は異世界の勇者様にしか使えません。

 また、その武器にはレベルがあり、今はレベル1で御座います。

 魔物を倒すと一定の量でレベルが上がります。

 レベルが上がると名の通り、武器としてだけではなく

 防具としての役割もあります」


「なるほどね。俺たちを呼んだのは、この武器が使える者がいないからか」


「左様で御座います。かつては我らでも使えたのですが

 アルク神の加護が受けられるようになって、我らも魔法が使えます。

 その武器は魔法が使える者には扱えません」


「これレベルとか経験値は分かるのか」


「はい、腕輪の状態で、その魔石に触れますと表示されます」


信は腕輪のルビーの様に赤く透き通った石に人差し指で軽く触れてみると


 盾剣 レベル 1  効果 防+500

 攻技 未 防技 未 攻魔 未 防魔 未



と腕輪から空中に投射されるように半透明の板が現れて文字が浮かんで、

しばらく放置すると、それは自然と消えた。


「なるほど」


哲也も同じように操作しているようだが、どうやら魔法的なものらしく

本人以外は見る事は出来ないようだった。


「まずはレベルあげっすかねぇ。使えるものが何もねぇし」


徳己は、そう言って現在、効果が防+200、攻+200しかないと告げた。


「哲、お前はどうなん」


「俺は防+100に攻+300だな」


「坂っちは?」


「こっちは防+500だった」


「防御特化ぽいな」


「皆さん、部屋の用意が出来ました」


執事の格好をした老年の男性が現れ、杖を持ち白髪を軽く手串で書き上げて

右手を前にして深々と腰を折り顔を上げた。


「では、此方に」


執事に連れられて各部屋に着くと中に入っていく。





☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆





坂上は部屋に入ると、赤金色に鈍く輝く胸当てを付けたアルムと燻し銀色の

胸当てを付け素足を出した感じの全面は無く後ろには布があるタイプの

スカートでプレートと合わせた色の鎖が数本かかっている女性が出迎えた。

2人ともやはり、同じ色合いの独鈷の両端に刃が付いた様なものを持っていて

それを両手で握りお辞儀をしながら挨拶して来た。


「坂上様、私共がお世話の担当になりました。

 ルブス・アウルムと申します。

 以後、アルムと御呼び下さい」


「坂上様、ルブス・アウレウスと申します。

 以後、アレスと御呼び下さい」


「君たちは?」


「私達は盾剣の勇者である坂上様の攻撃力を補佐する役目の者です」


「ああ、防御以外は人並みな武器だからか」


独鈷の様なものを見て口を開く。


「それは武器なのかい」


「魔法具で御座います。

 これで私は炎と水を飛ばす事ができます。

 妹のアレスは炎と風を操ることが出来ます」


「じゅあ行くか」


「どちらにでしょうか」


「軽く経験したいから、優しそうな所に案内頼めるかな」


「はい。お任せください」


二人も誘うかと思ったが、忙しそうだったので遠慮しておいた。二人の部屋の

前でノックしそうになって、中の気配に気がついて、手を止めた。

そして何事もなかったかのように歩き出す。


「坂上様も、お、お望みなら・・・」


「ん?気にするな。それより手頃な相手の情報を聞こうか」


「この辺に存在する魔物としてはプーラが手頃かと、

 小型のハバリ種に近い形状ですが植物系の魔物で

 林などに生息します」


「ハバリと言うのは?」


「野生の豚で獣種です」


「プーラは植物系?」


「プーラはウリ科の植物の魔物です。

 それに、現在の装備だけでプーラは余裕と思われます」


「わかった」


「プーラは跳ねまわって体当たりしてくるので盾で抑えながら

 私達が止めを刺しますので、余裕が在れば坂上様も攻撃してみてください」


「ああ」


まあ、この世界の初期モンス、いわゆるスライム系なのだろうと坂上は思い

ながら、お気楽な仲間達は、ほっといてさっさとレベル上げに向かった。

どの道、盾職は先にレベル上げといて正解だろうと考え手の事だった。


森に入ると、確かに手毬のようなにスイカ程度の大きさの奴が跳ねていた。

勢い良く、打つかって来るスイカの様なものを盾て受け止めるとずっしりと

した感触が伝わって来た。


「盾が無いと、けっこう痛そうだな」


受け止めた魔物に炎玉が飛んで黒焦げにしていく。


「普通、痛いでは済みません」


「そうなのか」


「真面に食らえば、骨折すると思います」


自分の後ろに隠れて、独鈷で九字の印を結ぶ様に攻撃を続けながらアルムは

応えるが、相変わらずアレスは黙々と炎玉を放っていた。


アルク神の有効範囲は都市を中心に半径2キロ程度とさほど広くはないが

この範囲にいる場合は、倒したそばから魔石になる。

故に魔石の森と呼ばれ、経験の浅い冒険者等の恰好の狩場となっていた。


「15か、今日はこの辺にしとくか」


「了解致しました」


「では帰還魔法で部屋に戻ります」


珍しくアレスが口を開いた。


「おお、そんな便利な魔法があるのか」


アレスが独鈷を高く持ち上げると、球体の光に3人は包まれて気か付くと

部屋に戻っていた。坂上は疲れでそのままベットに倒れ込む様に眠った。


その頃、森の中。2匹の猪に似たハバリと言う魔物が傷と火傷で重い体を

引きずるように進んでいた。


「メリッサ、すまぬ。子供達を守ってあげられなかった」

「あなた」

「あの子達の悲鳴が聞こえて・・・」


雄のハバリは目を閉じると体が光り出し魔石へと変化する。


「あなた」


牝のハバリの目に涙があふれた。あの化け物を許さない。

雄1匹と雌が2匹、突然現れて子供達を襲いだした。その光景が目に

焼きついて、こうして瞼を閉じれば思い起こせた。


「ムル下がってろ」

「タル兄ちゃん」


兄は勇敢だった。襲い来る火炎も物ともせずに怪物の雄に向かって行った。

『ドシン』と音を立てて体当たりを食らわして怯ませると、妹の前に立ち

はだかって威嚇する。そこに牝の2匹が放つ爆炎が兄妹諸共焼き伏せる。


「兄ちゃん」

「ムル・・・」


それでも必死に兄は全身を使って妹へ向かう火を受け止めようとする。

しかし、そんな兄に妹は抱き着いた。少しでも火を消そうとして・・・

そして魔石が2つ、そこに残った。


子供達の悲痛の声に親達が気づき飛び出すと、あるものは焼かれ、そして

あるものは剣で背中から突き刺され絶命していった。

親達は、必死に戦った。少しでも子供達を逃がす為に、しかし逃げたした

子供達を無慈悲に魔法が飛んで行き30匹程度の集団は、瞬く間に全滅し

生き残ったのは、今。メリッサと呼ばれた牝のハバリだけであった。

全身傷だらけの彼女は亡き夫の魔石を口に咥え、子供達の名を心で叫び

歯を食いしばって進んだ。

生きのびる。必ず生き残って仇を打つまでは死ねない。そう強く思う口元の

魔石が砕けた。彼女の歯で砕けたのか、魔石となった意思なのか分からない。


砕けた魔石は彼女の体を包み傷を癒し火傷の後すら消し去った。

そして、メリッサは化け物を倒すために化け物になった。

猪の様な顔が、人の女へと変わり前足が伸びて手となり、後ろ足が太く長く

変わり人型へと変貌していく。力が欲しい。たとえ化け物の姿になっても

彼女が望む盾や剣を自分も使える様に、だが彼女は馬鹿ではなかった。

まだ、今の自分では戦う事すらできない事を理解していた。


「あいつらが、持っていた武器に勝る力が欲しい」


そう呟くと、彼女は都市から離れる様に森の奥へと消えて行ったメリッサの

瞳は赤く、燃えるように赤く闇の中で輝いていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ