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深い霧に霞む大地

砦に、その場に相応しくないタキシードの男がゆっくりと近づいてきた。


「何者だ」

「失礼、バトラーのオセロと申します」


入り口での騒がしさに、リオも戦闘態勢で独鈷を握りしめて駆けつけた。


「あっ、私の知り合いです」

「リオ殿のですか」

「はい」


警戒していた兵士はオセロの侵入を許可する。


「良し、入っていいぞ」

「有難うございます」


そして、彼女に近づくと手を口に当て、彼女の耳にそっと近づいて


「作戦を開始しますが、いらっしゃいますか?

 ここに残られてもかまいませんが、一応確認せよと申し受けましたので

 お知らせに参りました」


「行くわ。ちょっと待つ時間はある?」

「4、5分程度なら」


リオは、急いで一緒に働いている女兵士に挨拶すると駆け戻って来た。


「もう宜しいのですか?」

「いいわ」

「では」


球状の光が二人を包むと、その場から消えていた。

そして、再び現れたのは王都、アルク・ダミュース神殿の側に立っていた。


「我々の使命はアルク教のご神体であるアルク・ダミュースを保護する事で

 御座います。では私は別の任務がありますので後はお願いしますアレス」


「はい。お任せを、リオさん、此方です」

「どうなっているの?」


その横でオセロは再び消えて行った。


「我々メイダァは8名。あなたを混ぜて9名でここの制圧と保護です。

 そして今、8名は既に内部の所定位置に着いています。

 ここへ来るのはマスタの予見では暴徒が4割、リザードマンが3割、そして

 アルクトスが2割ですが、最悪ドラダ王、又はその配下が1割の可能性がある

 との事です。最悪と暴徒の鎮圧を主に行います。そしてリオさんは、結界が

 張れるとの事ですのでアルク魔石本体をお願いします」


リオは祭壇まで来ると人並みの巨大な魔石が祀られているのを見定めた。内部に

実際人らしき女性が目を瞑っているのが分かった。


「これがアルク魔石です」

「人?」

「そうですね。この方が本来、この国の代表者でした」

「この人がアルクダ女王・・・」

「そうです。かつて人と亜人区別なく住むことが出来たころの女王でした」

「眠っているの」

「そうとも言えます」

「バトラーさん達は何しているの」

「王宮の大掃除や片づけものですよ」

「戦争中に?」


アレスはにっこりとほほ笑んで「だからですよ」と答えた。



そうバトラー達は王宮の掃除に向かっていた。


「な、なんだこいつらは」


漆黒のタキシードに身を包み、まるで踊る様に飛び、回転しては攻撃をさけ

確実に王宮内部の兵士たちを片づけていた。


「何者だ私をサウルと知っての狼藉か」

「はい。存じております」

「おっ、お前は坂上か」

「いえ、現在はペイトと申します」

「何をふざけた事を、勇者のくせに反乱に手を貸すか」

「なあ、ペイト。顔を変えた方がいいのではないか。いろいろと」

「そうですね。では私好みのこんな顔で」


ペイトの顔は坂上から、40歳くらいの白髪の顔へと変わる。

バトラーの二人は、会話をしながらも次々と兵士の首を跳ねていく。


「食らえ化け物め」


火球がペイトに向かって飛んで行く。

そんな事は何でもないかのように、左手を上げて火球を受け止めると爆発が

辺りに風を巻き起こす。杖を握りしめていたサウルがニヤリと笑った。


「爆発するとは思いませんでした」


腕を吹き飛ばされても、平然とするペイトに言い知れぬ恐怖を抱き、サウルは

再び杖を向けて攻撃しようとした時、彼の手が復元されて行くのを見た。


「再生能力か」

「いいえ。これは再製です。結果は同じですので認識の違い程度ですが」


そう再生ならば、破れたタキシードまで再生する事はない。そして彼等の

異常さは、もう少し良く見ていたら理解できたろう。その小さく大きな違いに

素手で何人もの兵士を殺しているのに一応に全員付けている白い手袋に一滴の

血も付いていない白いままであることに。


「(食らえ)」


サウルはペイトに向けて言葉を発したつもりだったが声にならなかった。

ふと視線を動かすと地面が目の前に広がっていた。

彼の首は、すでに地面へ転がっていた。いや正確には滑り落ちた。

そして死んでいると生きているとも言えない90秒後、視力も意識も無くした。

杖を握る手が前に動き、無くした首から噴水の様に血吹雪を上げバランスを

崩したのか前のめりに倒れ床を血で染めていく。


ルトはサウルと違い、彼等を見た瞬間に一目散に逃げだした。

この王宮に自由に入り込み、兵士を赤子の様に殺す悪魔に自分が勝つ事は

不可能と判断した彼は恥も外聞もなく走っていた。


「はい。ご苦労様です」


出口へと差し掛かる、その時、声が聞こえて来た。そして彼の首は飛ぶ。

総数82体の首が転がったところでバトラー達以外の動くものは居なくなった。


「しかし、全滅させる必要があったのでしょうか」

「何でも前回、慈悲を掛けた場合。

 神殿に立てこもり最悪な事態を招いたとの事です」

「なるほど、それでは仕方ありませんね」

「それでは、次の作業をしませんと」


王宮から南門の方を見ていたバトラー達は門が開くのを確認して再び動き出した。

南門から2千の兵全てが出撃したのを見計らう様に、街の中からマントに身を包む

集団が、東、西、南の門。一斉に襲撃を受けた。


『門を閉じよ』


マントの集団は各々門を閉じる事を優先して行動を開始する。


「な、なにをしている。なぜ門を閉じるのだ」


門の警備兵は扉が閉じるのを見て取ると、下の方に目を向けた。するとマントの

集団が見えたので、声をかけた。


『お静かに』

「なに・・・」


口を抑えられて、首を掻っ切られて飛び散った血が降る。ぐったりとした体を

抱えて隅に移動して横たえる。


ピーピー


口笛を吹く。門は完全に、全て閉じた。そういう合図であった。

南門から外へ出た兵士には、その音は辛うじて聞こえた為に数人が振り返り

門が閉じている事に気がつく。


「なっ、閉じているぞ」

「如何した」


「何を騒いでおる」


ドラダ王は騒がしい兵士達に声を荒げた。


「敵襲ぅー右舷。後方からです」

「なに」


「リザードマンです」

「馬鹿な早すぎる」


「弓来ます」


空を見上げると3千本の矢が、山なりに向かってくるのが見えた。


ピシュ、ピシュ、ピシュ


矢が雨の如く降る中、馬に刺さり騎馬隊が崩れていく。


「応戦だ、応戦しろ」


直ちに弓、魔法を矢が飛んできた方向へと向けて撃つ。

何もない大地に、矢と魔法が着弾して煙を上げ爆発が土煙をあげた。


「左舷、後方」


空を見上げると3千本の矢が再び別方向から飛んできた。


ピシュ、ピシュ、ピシュ


「ぐわあぁぁぁぁ」


今度は魔法の杖を高く掲げて右舷後方を向いていた部隊に矢が襲い掛かる。

そして反撃するだけの者が残ってはいなかった。


『魔法なぞ無くても戦いは数と速さと言う事を教えてやる』

「将軍。敵遠距離系は沈黙」

「行くぞ」

「「「「おおおおおお」」」」


「こ、こんどは何処だ」

「後方、真後ろです。数おおよそ3千」

「馬鹿な、9千もの数をどうやって、リザードマン如きが」

「や、やつらは総数でも5千に満たない筈だ」


彼等は別に魔法でもなく物理的に移動して矢を放っただけであった。

西門で、なるべく高く山なりになる様に撃った後、全力で移動して東門へ

移動して、低空で2射目を撃った。その為、着弾の差は数秒しか違いが無く

まるで2部隊が居るかのような攻撃だったのだ。

そして、さらに全力で南門へ移動した後、全力で真直ぐに進軍したのである。


「我が名は、竜帝クレスタ。我と思わん者はいないかぁー」


戦場に轟く将軍の声に全軍が停止していた。


「情けないのぉ~。一人もおらんのか」


「何をしている。わざわざ、一人でのこのこやって来てくれたのだ

 全員で一気に仕留めよ。挑発に乗る事はゆるさん」


ドラダの命で一斉に、クレスタに襲い掛かる兵士達。


「むっ」


突如、胸の痛みに視線を後方へと向けるドラダ。


「レギナ。き、さま」

「この時を、どれほど待ちわびた事か」

「ん?誰ださきま」


レギナを掴んだ手に伝わる感触に疑念を懐きフードを取るドラダの目に映った


「おっ、おまえはエーレ」

「レギナという男なら、とうの昔に私があの世に招待したわ。

 あのリモコンを机に置いてやったら、早速。その晩にいやらしい顔で

 リングが壊れているとも知らず、ボタンを押して待っている所にリング付けて

 私が行くと、武器も持たずに全裸になってな」

「ぐふっ、き、きさま」

「まったく、今と同じセリフだったわ」


ギリっと剣を刺したまま刃を回して傷を開かせると血が噴き出した。


「これはマイア姉様の分」


ぐっと力を込めて


「ターユさんの分」


一度引き抜き、脇腹へと突き立てる。


「アルさんの分、まだ死ぬなよ」


まるで切腹の様に横へ刃を動かす。


「ケラさんの分」


ぐっと刃を上げると内臓が切り口から血飛沫と共に流れ出す。


「ステロさんの分」


そして首筋に刃を当て掻き切った途端にドラダは事切れた。


「これは、私からの情けだ」


彼女の足元に魔石が1つ転がった。

そして彼女は左手を開き赤い魔石に向かって「マイア姉様、討ちましたよ」と

一言呟いて、泣き崩れた。


エーレは何時でも、ドラダだけなら倒すチャンスはあった。しかしドラダ軍

全部となると一人では不可能である為に、反乱分子が生まれる様に振る舞った

そして時として、その反乱分子をそれとなく支援もした。

全て今日と言う日を夢見ての事である。


「オルス殿」


リンドはオルス部隊の先に騎馬勢として向かった筈であった。


「リンドなぜ戻った」

「後方のドラダ軍の方でリザードマンの奇襲を受けたとの知らせがあり

 直ちに援軍を回せとの事です」

「なに、急がねば・・・いや、まて」

「リンドなぜ一番離れた筈の貴様が、それを知った」

「それはですね」


リンドはオルスの腰の剣を左手で掴み、右手にもった短剣で彼の喉笛を切った。

ヒューヒューといった音が、何を言ったのかすでに、分からないが彼の動きは

完全に止まった。彼の剣を引き抜き、首を跳ねる。


「誰か・・・衛生兵。衛生兵はおらんかー」


リンドは大声で叫び、衛生兵を呼び寄せるがオルスはもちろん護衛の兵士も

助かる事は無かった。


「私が戻るまで全軍待機せよ」

「はっ」


戦場で返り血を浴びている者を不思議がる者はいない。

リンドは一人馬に乗って戦場を北に向け走った。


しばらく走り突けて1本の木の下で止まると鎧と兜を脱ぎ捨てる。

するりと落ちた髪は肩より長く金色に輝いた。鎧の下からは村人の様な服が

現れてとても武将には見えなくなった。

馬からも軍馬の装飾を外して、再び駆け出した。



アルクトス本陣。


そこには誰一人いない無人だった。ただ規則正しく旗が並べられ、誰もいない

テントがいくつか並んでいるだけだった。


騎馬隊を指揮するアットレは無人のアルクトス本陣へと突き進んだ。


「だ、だれも居ません」

「なんだと」

「どういう事だ」


そこへ、リンドの居ないリンド軍2千はリンドの言い残した指示に従って

馬を降りて弓を構え、本来無人のアルクトス本陣攻撃を開始した。

だが、そこにはアットレが率いる騎馬隊が居た為、アットレは敵襲と判断して

矢が飛んでくる方向へ、弓による応戦を指示した。


此れを西側から見ていたアルクトス軍5千は好機とみてアットレに対して

弓による攻撃を開始。アットレはハリネズミの様に全身を矢で埋め倒れた。

それを勝利と勘違いした元リンド軍は本陣へ進軍した。

そして同様に5千からの矢の餌食になっていくのである。


そして待機中のオルスへ、そのまま進軍して撃滅させていく。


その頃、ホロセム軍は後方からのクレスタ軍からの攻撃に当初隊を乱したものの

立ち直らせて応戦していた。


「なかなか、どうしてホロセムとか言ったな。有能ではないか」

「性格以外は有能らしいですよ」


「惜しいのは魔力に頼りすぎる点かのぉ~」


「我等は馬より早く走ると言う事、理解しているのでしょうか」


高速で大地を駆けめぐるという事は、動体視力を有していると言う事だと

飛んでくる魔法の軌道を読むのではなく見て感じることが出来る。

そして追跡してくる魔法を避けるのではなく盾で叩き落とす。

それでも人族なら行動不能に陥るダメージも直撃でない爆風をものともしない

リザードマンの体を覆う鱗があった。

対人系の魔法を選んだホロセムにリザードマンが、そして彼等用の魔法を装備

した部隊をアルクトスを打ち破ったのは、偶然であったと思い運が無かったと

ぼやくホロセムは知らなかった。部隊編成を指示した人物、レギナその人が

エーレであり竜帝クレスタの行動と進撃方向を正確に予測し、その場合の軍神

アルクトスが打つ手も読み切って、それぞれに対峙する相手がワザと不利に

なる様にしていたと言う事を。

そして戦場を駆けるリンド少将こそ、彼女の腹心である事に気づくものは居な

かった。すべて彼女のシナリオに沿って進んでいた。


「馬鹿な。わ、私が負けるはずが」

「寝言はいい。しかし最後の言葉は、それでいいのだな」


ホロセムの肩口から竜帝クレスタの槍が鎧ごと斜め下に切り裂かれた。

そして魔石となって転がる。


『魔石化するとはな。いつの間に魔物になっておったかホロセム』

『将軍、城内が不思議な事になっているそうです』

『どうした』

『はっ、守備兵を掃討し城内に入った者達から中は血の海だったと』

『生存者は』

『一人も』

『どういう事かな・・・これは』


クレスタは槍を立て王都へと顔を向けた。



その頃アルク・ダミュース神殿内部の祭壇ではイツキがアルク魔石の前で

全体を魔力鏡で確認していた。もちろん彼女の肩にはベルナも一緒に。


「そろそろ出番かな」


イツキは手を伸ばして巨大な魔石に触れる。


「復元」


魔石結晶が粉々に砕けで光となり人の形へと変わっていくと、魔石の中央に

あった零体が体と重なりアルクダ女王が再び蘇生された。


「これは・・・イツキさま」


女王はイツキを視認すると跪き頭を垂れる。


「終わったよ」

「有難うございました」


その言葉だけで女王は涙を流してさらに深く頭をを下げた。


「それでは」


アルクダ女王は両手を交差して祈りを捧げ始めた。

その祈りは王都を中心に広がって光の祝福を与えていく。


杖の魔核石が、独鈷の魔核石が、地面に転がる魔核石が、ありとあらゆる

魔核石が人や獣、魔物であったり元の姿へと砕け再び集まった。




町外れの屋敷


「主様」

「どうした」

「魔核石の保管庫より、子供の産声が・・・」


一斉に1000体以上の子供の産声が騒音となって響き渡った。


「これは」

「主様、食費が大変そうですね」


ふとメイダァ達の方を見て「お前たちは、戻らないのか」と聞いた主に笑い

かけてくるメイダァ達は頭を下げつつ言った。


「光に包まれた時、声がしました」

「このままか、戻るか」

「私は、このままでと」


メイダァ達は全員、メイダァである事を選んだ。


「それに、この子達の面倒を主様一人に任せられません」



町の診療所脇


いつもの様にクレタが掃除をしてマチに声をかける。


「マチさん、御世話になりました」

「いっちゃうの。寂しくなるわ」

「突然、いま屋敷ではベビーブームでして」

「逆に手伝いに行こうかな」

「それは是非お願い致します」

「うん。わかった行くよ」



砦(湯の沼)


「只今」

「お帰りぃ、リオねぇちゃん」


走り寄って来る子供達に囲まれて、うれしそうに笑うリオを送って来た

クトラは、そっとお辞儀をしてから消えていく・・・。


「あっ、アレスさん・・・」


既に誰も居なくなった、クトラが立っていた位置に向かって


「ありがとう」


そしてリオは自分の名を思い出した「メリッサ」それが自分の名だった。

それから暫らくして、その名を付けた食堂を彼女は経営し砦は辺境の国との

交易拠点として宿場町へと発展していくが、決して砦の外を開拓する事は無く

自然の大切さと、小さな畑の恵みを感謝する魔族の町になった。

その最初の町長は女性でリオが育て、アルクトスが助けた少女が大人になった

時だったという。




霧の湖


オルセスとミュース隊メロが初めて会ったのは、彼女が追手によって

深手を負って身動きできずに、木根の元にもたれているところだった。


「おい、おんな」

「ん」


腹部に深い傷があり、オルセスは薬草を腹部に当て、抱えるマントを見て


「子供」


オルセス二人毎抱え、連れ帰った。何度も払い除けても、追手はやってきた。

そしてとうとう少女が3歳になった時、勇者が現れた。

メロとオルセスは3人で追撃を避けて森へ進む。そこに追手の矢が飛来して、

オルセスの肩に刺さり少女毎、崖下へと落ちた。


「オルセス」


メロは咄嗟に顔を出すと、オルセスは生きていた。それを確認したメロは自分の

ミュースとしての最後の力を唱えた。


辺りは突如、深い霧に包まれいく。彼と王女が逃げのびる事が出来る様にと

彼女の体は霧そのものへ変わっていく。


「オルセス。その子をお願い・・・」


深い深い霧に包まれた湖に漂うオルセスを救い上げる様に底から土砂が溢れだし

瞬く間に固まって中島になった。

意識を失っていたオルセスが目を覚ますと、小さな島に流れ着いていたと思った。

すると1本の道の様に、濃霧がある方向だけ薄くなって道を示した。


「メロ迎えに来る」


そう言ってオルセスは、その方向へ去っていった。

逆に濃霧は、追手の足を緩め、底なし沼へと誘い込み勇者は追撃を諦めたが

オルセスはその後、別の勇者との戦いで帰らぬ人となる。


今も濃霧に包まれる、その場所は小さなリュックを背負って歩くと

少女を抱えたオルセスが迎えに来てくれたと、しばらく霧が晴れるが彼ではない

事がわかると、また濃霧に包まれてしまうと言う。


そして濃霧に包まれて道に迷ったときは「オルセス」と唱えると霧の道が出口を

知らせてくれると言われている。また女の子は涙型のペンダントをしていると

どんなに濃い霧であっても道に迷う事無く目的地に着けるらしい。


王女アイリは、霧の湖にオルセスの遺品を持って訪ねた。


「随分と待たせてしまったけど、メロ母さん。オルセス父さんと仲良くね」


それは、オルセスが付けていたお守りだった。

そして王女の胸には鎖は変えてあるが涙の石が光っていた。


「アイリ」

「うん」


王女は銀色に光る毛並みに覆われた狼に跨ると風の様に走り去った。

もしも、この時上空より見る者が居たら、霧の中に一本の晴れた場所があり

まるで王都への道が伸びている様に見えた事だろう。


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