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帰還

「あなたは、自分の世界に帰りたいですか」


「それはどういう」


「それは、あなたの世界に帰す事が出来ると言う事ですよ人間」


「今のあなたは異世界から精神体だけが、この世界に来ている状態です。

 その肉体が死ねば自動的に元に戻れます。ですが、死ななくても私達なら

 あなたの精神だけを夢馬で運ぶ事が可能です」


「待ってくれ、それは本当か」


「ええ」


「なら徳己は、帰ったのか」


「ええ、見てみますか」


少女が両手を広げるとそこに学生服の徳己がいた。クラスの皆と何か話して

それはいつもの日常の風景だった。


「音は少し難しいので映像だけですが」


悲痛な顔でアレスは「坂上様」と彼を呼んだ。そんな彼女を坂上は見て


「彼女も連れていけないかな」


その言葉に明らかにアレスの顔が明るくなる。


「そのままでは無理です。あちらの世界には戸籍と言う概念がありますよね」


「ああ」


「どのような形でもよいなら、ペットとしていけますよ人間」


「そういう事か、確かにペットなら戸籍はいらないな」


「それで、かまいません」


「では」


坂上とアレスの胸に魔石が現れると二人の精神が体から離れた。


「さあ、行きますよ」


少女も体から離れて肉体は下に見えているが馬に乗ったもう一人の少女は

手を差し伸べて来た。その手を掴むと馬の上へと吸い込まれいく。


「では、ベルナよしくね」


「わかったわ」


夢馬が駆け出すと、一瞬で元の世界へと移動していく。見慣れた町、見慣れた

人、見慣れた家。わが家へと、そして自分の部屋にたどり着く。

そのベットに横たわる自分を坂上は見つめた。


「振れれば戻るわ」


「あなた犬とか猫とか何がいいの」


「私には判りませんので坂上様が決めてください」


「それじゃ猫で」


すると少女はアレスの零体に手を差し入れて「構築」と唱えて手を引いた。

光に包まれてアレスはネコへと変わる。少し違う所は胸に小さな魔石が付いた

首輪以外は、普通のネコだった。


「忠告しておくけど、彼女の事は他の者に気づかれないように人間」


「さてと帰ろうか、ベルナ。ああ一応、言っておくけど、あっちの世界の体は

 我々が使わせてもらうわ」


「ああ、あの胸の魔石を見た時に気がついてたんだけど、あのメイダァ達は

 俺たちみたいな異世界人を元に帰したって事なんだな」


答えは無く、彼女達の姿もすでにそこにはなかった。坂上は机の上の日付を

確認して、うんうんと一人納得した様に頷いた、


「ミャアー」


彼の足元に絡みつく彼女を見て、部屋の隅まで行くと冷蔵庫を開けて牛乳パック

を取り出して、深皿に注ぐと床に置いた。差し出されたミルクを飲み始める彼女。


「アレス美味しいかい」


(はい。坂上様)


「えっ」


頭の中に、彼女の声が響いてきた。


彼は妖精ベルナの一言を思い出した「彼女の事は他の者に気づかれないように」

その言葉の意味をやっと今、理解した。


「そういう事だったのか。確かに、これは知られたらまずいな」


(いえ、おいしいですよ)


アレスは不思議に首を傾げて見せた。彼の顔は、ほころんでいた。


「いや、そういう意味じゃなくてね・・・」




☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆




「お帰りなさいませ」


パシテアを中心にメイダァ達が並び出迎える中にアレスの姿もあった。


「うん。ただいま」


「色々お疲れ様でした」


アレスの姿で話しかけた者にイツキは話しかける。


「あなた名前は」


「私はクトラと申しますが、アレスの方がよろしいかと」


お辞儀したまま、彼女は答える。


「そうね。クトラ、悪いけどしばらくはアレスの方向で」


少し考えるポーズを取ったイツキが、そう言って彼女さらに横に立つ

男性の姿の者に聞く。


「坂上さんの方は誰」


坂上の体は、頭をあげると


「ペイトと申します」

「ええええー」


イツキの肩の妖精ベルナは声をあげびっくりして、肩から落ちた。


「なに驚いているの」


驚く妖精ベルナにイツキは、床に転がった彼女を拾い上げる。


「ちょっとまってペイトって女性の名よ」


拾われながら妖精ベルナは、坂上の方を向いて言った。


「はい」


「中身、女性なの」

「はい」


「平気?えーといろいろと」

「はい」


「もともと男性に生まれたかったので」

「あっ、そっいうこと・・・まっ・・・いいか」


イツキはまだ父様以外、間近で見たことはないが、一種の弱点らしく

母に攻撃されると悶絶した父を見ているので態々弱点が欲しいとは

と考えたが、確か腕力は母より上なのを思い出し均整が取れるのかと

一人なっとくしていた。

ふと、父の「この痛みは男にしか分からん」の言葉を思い出して

後でペイトに表現してもらおうと密かに思っていた。


「ああ、そうそうベイトは・・・」

「畏まりました」


漆黒のタキシードに身を包みペイトは町へと向かった。

目的は勿論リオの元へ行くためであり、彼女に真相を知らせる為でもある。

ベイトは大まかな内容をクレタから聞かされていた為に、いきなり戦闘になる

可能性が高いと思っていたが、しかし、彼女の第一声は予想と異なった。


「お前は誰だ」

「その反応は予想していませんでした」


「明らかに匂いが違う」

「私は彼の体を借りているベイトと申します。

 この体の元の持ち主は現在、この世に居ません。

 そして骸となった体に私を入れました」


「そう、なら私の願いは1つ叶ったわけね。できれば自分でと思っていたけど」

「私はもしもの場合。あなたに倒される事を是非なしと命を受けております」


「質問していい」


リオは(ベイト)に近づいて手を胸に当てる。


「はい」


「あなたの本当の体は?」

「神官レギナによって奪われました」


「わかったわ」


彼女は、そう言って手を放した。不思議そうな彼に彼女は続ける。


「この手は嘘を見抜くのよ」


おそらく呼吸と心臓の微かな動揺を察知するのであろうとベイトは考えて

この体は、そんな反応を私にとってするのだろうかと疑問に思ったが、その

行動こそ彼女なりの自分自身を納得させるものと気がついた。


「それに、神官レギナは、その体の親玉ですからね。

 確かに彼等への報復権利はあなた達にもあるのでしょう」


彼女の後ろからクレタが現れて


「出来れば、此れで終わりにしませんか」


「そうね。この町にもお世話になったし、人にも好きな分類とそうでない者も

 居る事は理解できた。今更出ていくにはちょっとね」


「了承を得られたと判断します」


クレタは深く彼女にお辞儀をすると、ベイトの方を見て頷く。


「では、これで」

「少し待って、あなた達は何をする気なの」


「王都奪還です」


「手伝います」


即答だった。


「分かりました。ベイト、この町の防衛は任せます」


「お任せを」


町の人達には、微妙な反応をされたがマチには中身が違っている事を

リオの口から知らせておいた。


「へぇー。この人もう別人なんだ」

「はい。ベイトと申します」


マチは中身が違うだけで良い人に見えるから不思議とかいいながら診療所の

隣の部屋で身の回りの世話をすると言い出した。困った顔のベイトが流される

様に引きずられて行く。


「あのこれはどうすれば・・・」

「一任します」

「そ、そんな」


そんなベイトを他所に、クレタは彼女に向き直って話す。


「これから、私達は王都に潜入します」

「質問」

「どうぞ」

「奪還というと正当な者がいると言う事ですよね」

「はい。現在、その一人を私達とは別動隊が保護しています。

 そしてもう一人は私達が此れから奪取する予定です」

「つまり、王都に捕らわれている」

「そういう表現で良いと思います。

 別動隊が王都に向かう前に我々は潜入して待機します」

「内と外からと言う事ですね」

「いえ、彼らが保護対象を盾にする事が無いようにするのが目的です」

「ああ、そっか」

「それに移動できないので、その間は防衛になります」

「そういう事なら自信があるわ」

「期待してます」


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